第三章 はじめてのがっこう

第13話 はじめてのおつかいてきなやーつ 


 入学してから早一週間。

 全てのレポートは書き終えた。

 さて、課題はこれからだ。宗像先生の言っていた『継続』……。

 わかってはいるつもりだ。継続に関しては今のところ……大丈夫だ、問題ない!


 一ツ橋高校、第1回目のスクーリングがやってきた。

 もちろんこの天才はいつものように、早朝、新聞配達を終えているので眠気はMAXだ。

 いつもなら仮眠を取っている時間だからな。


 朝の電車ってのは気にくわない。

 日曜日とはいえ、部活に通う『制服組』がいるし。

 まあ好みのJKがいたら目に焼きつけるけどな!

 


 過疎化しつつある赤井あかい駅を一人歩く。

 そこでもやはり制服組と一緒に歩く事となり、実質は「一緒にいこう!」的な萌えイベントにも脳内変換できなくもない。

 というか、JKが周りにいるだけで、嬉しいよね!


 通称『心臓破りの地獄ロード』を登り終えると、校舎の裏口(玄関のことね)に入る。

 玄関前にはアラサー痴女、宗像むなかた先生の姿があった。


 え~、本日のファッションですが、これまた酷いですね~

 網目の荒い網タイツ、マイクロミニのタイトスカート、それにレザーぽい黒のノースリーブ。しかもへそ出し。

 どこの映画に出てくるビッチですかね~


「おう! 新宮、おはよう!」

 大声で俺を指名するな! 全力でチェンジを要求する!

「お、おはようございます……」

「なんだ? 元気のないやつだな……さては、“自家発電”のしすぎだな!」

 と吐き捨てて、俺の可愛い小尻をブッ叩く。


「いって! セクハラですよ、宗像先生!」

「うむ、元気がでたな! それでこそ学生だ! そしてセクハラではない、スキンシップだ」

 それってセクハラの言い訳の代名詞ですよね……。


「それに減るもんでもあるまい? お前は男だしな」

「男でもメンタルはすり減りますけど……」

「ハッハハハ! 元気があってよろしい! さあ今日のスケジュール表をとって、自分の教室に上がれ!」

「スケジュール表? なんです、それ?」

「ん? ああ、入学式でも言ったように、本校は校舎がない……ので三ツ橋高校の生徒たちが教室を利用する場合があるわけだ。毎回スクーリングでは授業ごとのスケジュールを組み見立ている。ほれ、あのプリントだ」

 そう言って、宗像先生は背後のカラーボックスを指す。

 箱の上には小さなコピー用紙があった。

 確かに授業ごとに教室がコロコロと変わっている。

 面倒くさい学校だ。



 俺がため息をついていると、宗像先生が。

「おう! 花鶴はなづる千鳥ちどりじゃないか!」

 と声をかける。


「う……」

 嫌な予感。


 続いて。

古賀こがも、おはよう!」

 と叫ぶ。

 その名前に俺は酷く悪寒を覚えた。


 逃げるように靴箱に向かうと、スリッパに履き替える。

 そして、階段を上ろうとしたその時だった。


「あ! オタッキーじゃん!」

「お、タクオ」


 クソ! 地雷を踏んでしまったか!

 赤髪ギャルの花鶴はなづる ここあ。それにハゲで老け顔の千鳥 力ちどり りき


「おはにょ~♪」

 なにがにょ~♪ だ。俺は売り出し中のルックス重視の女子アナではない!

「おう……」

「なんだよ、タクオ。元気ねーじゃん」

 そう言って、千鳥が俺の頭をグシャグシャと掻き回す。

 やけに俺の身体を触ってくるやつだ。

 正直、コイツはゲイなのか? と疑ってしまう。


「別に……元気がないわけじゃないよ」

「ならどうした? 自家発電のしすぎか?」

 お前もか……どうしてこう十代男子の一日を自家発電のみと短絡的な考えにたどり着くのか。


「違うよ……まあ千鳥には関係ない」

「連れないこと言うなよ……ダチだろ?」

「おい、いつ俺とお前たちは交友関係に至ったんだ。この前、会ったばかりだろが」

「は? 自己紹介しただろ?」

「そうじゃん、あーしのことも覚えてっしょ? ならダチじゃん」

 ダチじゃんじゃねー。その前に花鶴よ、お前は女子としてちったぁ恥じらいを持て。

 胸元ザックリ丸なトップスを好み、今日もまたパンモロに近いミニスカか……。

 悪いが範囲外だ、貴様は。

 男ウケするファッションというものをまるでわかってない!

 ちょっと、『い●ご100%』でも読んできなさい!


「意味がわからん。俗にいう友達とはだな……」


「「ハハハハッハ!」」


 花鶴、千鳥の両者が腹を抱えて笑う。

「ダチなんてノリだっつーの!」

「そうだよ? フィーリングっての?」

 なんかそのフィーリングってワード。エロい。

「まあ。お前らがそう思うならそれでいい」

「そうそう、それでいんだよ。タクオ……なあミハイル。お前もそう思うだろ?」


「……」

 相も変わらず、無言か。古賀 ミハイル。

 そして、なぜまた顔を真っ赤にさせて床と会話を楽しんでいるのだ?


「ミハイル?」

「どしたん? ミーシャ」

「……」

 ここは退散しよう。


「じゃあ、俺は先に教室へ向かうぞ」

「おう! あとでな!」

「まったね~ オタッキー」

 本当にコミュ力の塊だな、こいつらは……。

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