第2話:転入生

「いいですか、貴女達、光の聖女を虐めてはいけませんよ。

 私には、王家の藩屛たるダンセル公爵家の令嬢として、この国を護らなければいけない責任があるのです。

 神の怒りを買うような卑劣な真似は、断じて許しません。

 もしそのような現場を見かけたら、その場で処罰します。

 たとえ家同士の争いになろうと、断じて引きません、分かりましたね」


「「「「「はい、レイラ様」」」」」


 本当に理解しているのか、とても不安です。

 いえ、彼女達には責任がなく、何者かにヒロイン虐めをやらされるのが、転生乙女ゲーム小説の定番ですから、戦いを覚悟しなければいけません。

 その為に、今日まで知る限りの方法で魔力と戦闘力を高めてきたのです。

 小説やアニメにある、全ての強化法を試し、成功しました。

 多分私はこの世界最強の存在になっていますから、大丈夫でしょう。

 問題なのは、どうやって王太子との婚約を解消するかです。


 ガラガラガラガラ


「起立、礼、着席」


 担任が入ってきましたが、動きが鈍いです。

 高齢の下位貴族の隠居ですから、それもしかたがありません。

 本来なら、貴族の通う学園の教師は、高位貴族が務めるべきなのです。

 そうでなければ、傲慢な高位貴族の令息や令嬢が言う事を聞くわけがないのです。

 でも、そんな奇特な高位貴族などいませんから、金銭的に困窮している下位貴族か、同じように困窮している士族になってしまいます。

 このクラスは貴族家の後継者か令嬢しかいないので、子爵家の隠居が担任です。


「ああ、みんな静粛に、今日は大事な話がある。

 みんなも、もう噂は聞いているだろうが、この国に光の聖女が現れた。

 残念ながら平民の家に生まれてしまったので、社交界の常識が備わっていない。

 それでは今後王国のために働いてもらうのに困るから、学園に転入して学んでもらうことになったのだ」


 反吐が出るいい方ですね!

 聖女だともてはやしていても、ようは王国の道具として利用するのです。

 王家が囲い込んで治療に使い、貴族達を統制する道具にするのです。

 病で苦しむ他国の王侯貴族を治療させて、外交交渉を有利にしようというのです。

 そんな姑息な考え方には怒りを感じてしまいますが、自分が身代わりを務める気にはならないので、あまり大きなことは言えませんね。

 今の私なら、光の聖女以上の治癒魔法が使えるのですから。


「聖女ミア、入り給え」


 本当に小さな女の子が入ってきました。

 とても同じ十六歳とは思えません。

 こんな子を、王家の欲望の犠牲にはできません!

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