第42話 互いに想う
それから、俺たちは一日かけて遊び倒した。
◆ ◆ ◆
ボウリングでジュースを賭けた勝負は、玲奈が優勝。
自信ありげだっただけに、優香はかなり悔しそうだった。
というか、優香もかなり良いスコアだったんだけどな……玲奈が万能すぎる。
俺? 俺は凡スコアで最下位です。
◆ ◆ ◆
カラオケで熱唱。
優香は予想通りに流行の歌がメインだったけど、玲奈の選曲が八〇年代メインというのは意外というかある意味ではイメージ通りというか……。
優香は元気に、玲奈はしっとりと。
それぞれタイプは違うものの、二人共見事な美声だった。
俺はまぁ、最近の曲を適当に。
◆ ◆ ◆
アウトレットモールで、ウインドウショッピングを楽しんだりもした。
わかっちゃいたけど、二人の服の好みが正反対に近くて面白い。
優香はちょっと露出多めで動きやすいものを、玲奈は逆に露出の少ない大人しい服装を好んで見ていた。
だけど、アクセサリの趣味なんかは実は似通ってるみたいだ。
同時に伸ばした手がぶつかって二人なんとも言えない顔を見合わせる様に、ちょっと笑ってしまった。
◆ ◆ ◆
そうこうしている間に、もうすっかり日も暮れていた。
最後に俺たちが向かったのは、何の変哲もない河原。
俺たちの他に、ほとんど周囲に人影はない。
「ねー孝平、こんなところに来てどうするの?」
「川遊びでもするつもり……?」
二人が疑問に思うのも当然だろう。
「あぁ、ここは……」
俺が説明するよりも前に。
──パァン! パパァン!
答えは、夜空に咲いた。
「今日、近くでちょっと気の早い夏祭りが開催されてるって知ってさ。ここなら、花火を見るのにちょうどいいだろ? もっと人がいるかと思ったけど……穴場みたいだな」
「へぇ、そうなんだー」
「なるほどね」
二人共、納得の表情となる。
ただ、ここを今日最後の場所として選んだのに深い意味はなかった。
今のうちに、二人と色んな思い出を作っておきたいっていう……俺の、エゴだ。
今後、俺たちが一緒に花火を見るなんて未来はもう訪れないんだから。
◆ ◆ ◆
【紅林優香】
空に打ち上がる花火を見ながら、考える。
孝平が、ここに連れてきてくれた意味を。
いや、今日の『デート』の意味を。
そっと窺い見た孝平の表情に浮かぶのは……たぶん、決意。
そっか……もう、
更に視線をずらすと、複雑な感情を宿して見える表情の青海さんと目が合う。
なんとなく、
青海さんは綺麗で、頭が良くて、何でも出来て……アタシとは、正反対。
正直に言えば……アタシは、青海さんに憧れていた。
まぁ、性格は思ったよりめんど……もとい、面白い人だったけど。
それはそれで、この人の魅力なんだと思う。
三ヶ月前まで抱いていた取っつきづらいイメージは、もう粉々に砕けてる。
だからこそ……仕方ないかな、って思ってるんだ。
青海さんに負けるなら……って。
◆ ◆ ◆
【青海玲奈】
花火に照らされる孝平くんの横顔を窺い見ながら、考える。
今日の『デート』は、一年前のやり直し。
若干一名、お邪魔虫もいるけれど……まぁ、これはこれで楽しかったわ。
孝平くんがくれた、最後の情けというところでしょう。
そう……最後。
最初からわかっていた。
今日が、ちょうど三ヶ月目……審判の日だから。
そっと視線をずらすと、複雑な感情を宿して見える表情の紅林さんと目が合う。
なんとなく、
紅林さんは明るくて、友達が多くて、包容力もあって……私とは、正反対。
正直に言えば……私は、紅林さんに憧れていた。
まぁ、思ったより頭のネジが外れ……もとい、積極性が過ぎるところもあるけれど。
それはそれで、魅力だと考えることも出来るでしょう。
だからこそ……諦めに近い感情が、胸に浮かんでいた。
紅林さんに負けるなら……って。
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