第五十九時限目

目を閉じれば




昨日の事のように感じるあの日々




あたしの高校生活は君の為にありました。




君の笑顔を取り戻したくて…




君との時間を取り戻したくて…





ねぇ拓…




あたしは今も覚えてるよ?




幼すぎたあの頃の拓の声、拓の温もり、そして虹が見える教室で拓と再度誓ったあたし達だけの七つの約束…





虹色の約束を…








「結芽、結芽っ!」




「パンツは脱がないっ!!」




「違うっての!!」





拓がポケットに手を入れ、黙ってあたしの手に何かを握らせた。





「何これ!?」





あたしは手を広げ、渡された物に視線を落とす。





「新婚初夜だろっ!渡しとくわ!」




「…何考えてんの?」



「いやぁ…長かったぁ…」





桂太君と菜緒は顔を見合わせ、苦笑いをしながら校門へと歩き出す。



「まだ新婚初夜じゃないでしょっ!」




「あ、じゃあ予行練習で…」




「菜緒!桂太君!助けてーっ!!」








「「バカ夫婦(笑)」」










まだまだ残された課題は沢山ある。




似た者同士のあたし達は、きっとこれからもケンカを繰り返して…



でも、その度に絆が深く刻み込まれていくはず。




幸せが逃げるならまた捕まえればいい。




やっと咲き始めたピンク色の淡い花。




拓がいる事を




あたしがいる事を噛み締めながらこれからも生きて行こうと思う。




希望を胸に、不安を胸に…そして






虹色の約束と共に…








      《完結》





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