四話 今度こそ
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「ウルス〜晩御飯できたわよ、降りて来てっ!」
「うん、分かったー!」
ある日の夜、自分の部屋で魔法のイメージトレーニングをしていた僕は、お母さんに呼ばれて階段を降りてリビングのテーブルの前に座る。そしてお母さんが食事を運んで座るのを待ってから、一緒に手を合わせた。
「いただきます。」
「いただきます! ……そういえばお父さんは?」
「お父さんはライナちゃんのお父さんと一緒にお酒を飲むって、あの人お酒得意じゃないのにねぇ。」
「へぇ……お父さん、最近よく行ってるね。何かあったのかな?」
「さぁ……そういう気分なんじゃない?」
お母さんとそんな話をしながら、僕はご飯を食べ進めていく。そしてしばらくした後、お母さんが僕に魔法のことを聞いて来た。
「ウルス、お父さんに教えてもらっている魔法はどう?」
「うーん………まだ全然。本当に難しいよお父さんの魔法は。」
「そうよね〜あの人が作った魔法、私も教えてもらったことがあるんだけど………全く駄目だったわ。一体どこで覚えてきたのかしら…………」
(お母さんでも無理だったのか………)
そこで僕は気になったので、お母さんのステータスを見てみた。
名前・ハルカ
種族・人族
年齢・30歳
能力ランク
体力・39
筋力…腕・29 体・34 足・39
魔力・44
魔法・7
付属…なし
称号…【成人の証】
(……お母さんの方が魔力と魔法のランクは高い、でもできないんだ………)
お父さんが言ってた通りなら、お父さんよりも魔法が上手いお母さんなら『あの魔法』は普通できるはずなのに……何か特別な魔法なのかな?
「………ちなみにウルス、お父さんの魔法が風以外にもあることは知ってる?」
「え、ほんと?」
「ええ、お父さんの部屋にある本に書き留めるらしいけど。『何とか』の力を操れって……私も一度読んだことがあるけど何がなんだがさっぱりだったわ。」
お母さんはお手上げと言わんばかりに頭を横に振った。そんな姿を見て僕は自信が無くなっていく。
「………お母さんでもできないのに、僕にできるのかな…………」
僕のステータスはまだ全然低い。毎日頑張って練習してるけど……もしできなかったら……………
「大丈夫だよ、ウルス。」
その時………頭に、お母さんの手が乗せられた。そして、その温かい手は僕の髪を優しく撫でていく。
「努力は、頑張ってる人を絶対に裏切らないの。だからウルスもいつか、必ずお父さんの魔法ができるようになる……ウルスが諦めない限りは、必ずね。」
「あき……らめない……」
「ええ、諦めなければ絶対にできるわ。」
お母さんの強い意志に、僕の心は震わされる。そして…………
「だから…………ウルス、諦めずに頑張ってね。」
そう、言ってくれた。
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(…………諦めない……限り……)
顔を上げ、迫ってくるゴブリンを見据える。奴は僕が抵抗する様子がないと思ったのか、この状況を
そんな顔をひっくり返そうと………僕は地面に手をつく。
「…………まだ、だ…………まだ………」
「グギィ……?」
「僕は…………まだ、戦え…る………!!!」
消え入りそうだった意識を無理矢理起こし、感情を騒がせて恐怖を吹き飛ばす。
「頑張るんだ…僕はっ…………!!」
土を引っ掻くような手を付き、体を持ち上げる。
(努力は………裏切らない、今度こそ……………!!)
その言葉を信じ、僕は今一度立ち上がって魔法の構えを取った。
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「…………どうだ、これが俺が作った魔法だ……強そうだろ?れ
「う、うん。かなり強そう…………でも、これって僕ができる魔法なの………!?」
「大丈夫だ、お前
魔法の話を聞いた次の日、ついに僕はお父さんの魔法の特訓を開始することになった。そして今さっき見せてもらったその魔法を見て………僕は、度肝を抜かされてしまった。
(す、凄すぎる………こんな魔法、青嵐なんて全然目じゃない…………!)
「…………そういえば、まだ魔法の『流派』について説明してなかったな。」
「りゅう……は……?」
「ああ、魔法には主に
「『数で攻める』………つまり、いっぱい作って飛ばす感じの魔法ってこと?」
「その通り、逆に和神流は単発系が多いんだ。しかし………」
お父さんは続けてその2つの流派について語り始めた。
その話は意外と長かったのでまとめると…………洋神流は一度にたくさんの数で相手を追い詰める系の魔法で、和神流は一撃に込めて相手にダメージを与える系の魔法だそうだ。ちなみにあまり深く考えなくても、何とかなるそうだ。
「…………と、言うわけだ。分かったか?」
「うん……あれ、でもじゃあ…………?」
「ん? どうした?」
流派の話を聞き終わったその時、1つの疑問が僕に浮かんできた。
「お父さんの魔法って、自分で作ったんだよね? じゃあ流派ってどうなるの?」
「……あー…………それは考えてなかったな。」
お父さんは
そして、何か思いついたようで手のひらをポンと鳴らして言った。
「よし、じゃあこれでいこう!! 俺の魔法の流派、その名も……………『
お父さんはそう誇らしげに名付けた。その名前を聞いて僕は………………
「龍、神……?? それって何か意味があるの?」
「………意味はない! 何となくかっこいいからだ!!」
「……………」
………急にアホっぽい感じが…………まあいいか。
(龍神流………全く意味は分からないけど、何故か
「………それじゃあ、名前も決まったところで……早速特訓を始めよう!! 準備はいいか、ウルス?」
「うん、やろう!!」
「はっはっ、相変わらず元気だなウルスは!!」
お父さんはそう言って僕の頭をくしゃくしゃに撫でながら、豪快に笑った。
そんな笑顔が…………僕は好きだった。
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(……やるんだ、今……例え成功したことがなくなって………!!!!)
心を震わせ、意思を固める。
そして、手を地面に当て…………僕は唱えた。
「吹き散らせ………『ガイヤの
「グゥ………グギャ!?」
その瞬間、ゴブリンの足元から風が吹き始める。その風は徐々に勢いを増し……やがてあたりの草や土は舞い上がり、ついにはゴブリンごと宙へと打ち上げていった。
「成功、した……!!」
「ギギャァァァ!!?」
ガイアの烈風。お父さんに教えてもらった龍神流の魔法の1つで、相手を暴風で攻撃しながら打ち上げてから叩き落とす強力な魔法だ。
「落ち…………ろっ!!」
「グガァ、グラギャァァッ!!!!」
僕は舞い上がったゴブリンを一気に地面へと激突させ…………体をバラバラに撒き散らさせた。
「ガァ……ァ……………」
「………倒せた……僕が、できた……!?」
喜び半分、驚き半分な僕はついに龍神流魔法ができたことに口元がにやけてしまう。
(これが……この魔法が、あれば……お父さんを助けることが…………!)
「行かないと、お父さんのとこ、ろ……に……?」
喜びのまま、早速僕は村へと戻ろうとしたところ………急に足がほつれ、その場へと倒れ込んでしまう。
「な、何だ………ぐぅっ!!?」
困惑も束の間、次の瞬間には頭に電気でも流されたかと思わんばかりに衝撃と痛みが走り始めた。その痛みたちに耐えることはもちろんできず、僕は絶叫する。
「がぁ……あぁァァっ!!!!?」
(こ、これっ………まさ、か……
………以前、お父さんに『魔法を使いすぎると魔力切れを起こして動けなくなるから、あまりやりすぎるなよ』って……言われてた、よう…な…………
「く……そっ………立てっ、よ……!!」
そんな指示も身体には一切聞こえてないようで、どんどん自由が効かなくなっていく。意識も次第に遠くなっていき、考えることすらままならない。
(お母さ、ん………お、とう……さぁ………)
そんな心の声も口にできず…………『
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