第29話 帯をギュッとね!  河合克敏 小学館

 スポ根物についての要請があったので、ざっと棚を見てみました。

 う~ん……あまりないのね。やっぱりそっち方面は好みじゃないのかな?

 いや、けっこう読んでるはずなんですよ。ただ猛トレーニングで強くなる、という系統の作品は嫌いでして。

 ラストイニングのポッポが言っていた、さわやかさとか明るさとか、本当にスポーツの世界ではどうでもいいことだと思います。

 まあ明らかな反則とか誤審とか、そういうのは別ですけどね。

 オリンピックでもろに誤審で金メダル取ったフランス人なんか、その後のコメントでフランス自体を嫌いになりそうでした。


 さて、河合克敏の初連載作にして代表作……と言えるのでしょうか。

 モンキーターンととめはねの他に、短期集中連載の野球物も書いてたけど、あれ単行本になってませんよね。

 帯ギュの袴田さん主人公の外伝も書籍化されてないような……。文庫版には入ってるのかな? 絵筆を持ってねが収録されてないので、文庫版を買うつもりはないんだけど……。小学館、仕事しろよ。


 柔道と言えば汗臭いスポーツの代表格とされ、まあ実際にそうなわけです。

 昔から柔道物の名作マンガはけっこう多くて、ドカベンも最初は柔道やってたんですよね。

 ちなみにほぼほぼ同時期に柔道部物語とYAWARAがあって、リアル系が柔道部物語、トレンディ系がYAWARA、スタイリッシュ系が帯ギュと私は認識しています。


 特徴としては柔道物、部活物であるにも関わらず、上下関係が弱いまったりさ。

 一部を除いて練習行きたくないという、微妙なヘタレさ。

 師匠の上條由来であるのか、キャラのスタイリッシュなところ。

 あとはギャグのキレとかが、センスを感じさせますね。




 さて、一応少しだけ話の中身を申します。

 中学時代には三つの学校に分かれていた黒帯柔道少年が、偶然にも同じ高校に進学したところから本格的な話が始まります。……まあミッタンはちょっとアレですけど。

 せっかくだから柔道部に入部しようとしたら、なんと存在しない。なら作っちゃえということで全員一年、そして女子マネ二人の柔道部が誕生。

 顧問の先生は段持ちですが、柔道ではなく剣道という。

 まあそのお父さんが達人なんですけどね。


 基本的なストーリーは、ライバルの登場、練習試合、初めての大会、三角関係? とオーソドックスな展開を見せます。

 しかしテンポがいい。新キャラを出しても埋もれることが(あんまり)ない。

 特に主人公の宿敵ともいえる藤田との関係は、王道のものと言ってもいいでしょう。

 女子柔道の方にスポットを変えたりもしますが、これが脇道に逸れてつまらなくなるということもない。

 個人的にはやはり海老塚押しですかね。真理ちゃんも可愛いけど。

 しかしこの人の作品の常として、主人公の彼女的キャラにあんまり人気がないんですよね。


 柔道物としては、ややイロモノ的な展開も序盤にありますが、ぶっちゃけYAWARAに比べたらありえなさはそれほどじゃないですし。

 いや、YAWARAも面白いけど、あれはもう柔道を使ったトレンディドラマですから。

 一番リアルに近いのは柔道部物語でしょうかね? でもあれの釣り手のみの背負いなんて、どう考えても投げられないような気もしますし。

 帯ギュは最初の山嵐を除けば、ほぼほぼトンでも技はヴァン・デ・ヴァル投げぐらいですし。

 それにあれも実際に近代柔道で使われたものですしね。

 丸山スペシャルとか、実際の柔道でもほとんどマンガみたいな技はあるのです。


 しかし最近の柔道はつまらなくなったというか。

 昔は勢いがなければ両肩が畳についても一本取られなかったことが多かったんですよね。

 いきなり下半身にタックルにいくのが反則になったのは、見栄えとしてはいいのかもしれないけれど、格闘技としてはどんどん柔道の力を落としていっていると思います。

 けれどルールの改正などで、柔道による死者が減るならそれはそれで仕方がないのかな、とも。

 全国の体育や部活での柔道での死者って、日本ではそこそこ出てるんですよね。

 同じ柔道大国のフランスではほぼゼロなのに。


 ちなみに私は黒帯取るほどではないけど、簡単な技は使えます。

 得意なのは体落としと見せかけた大外刈りか、大外刈りと見せかけた体落とし。

 あるいは寝技。

 自分よりも重くて力のある人間を抑え込んで何もさせないのは快感でしたねえ。

 ……立ち技はほぼほぼ弱かったですけど。寝技も強いとは言えませんでしたけど。

 体固いから、内股とか使えないんですねん。




 スポ根物を題材に紹介する予定でしたが、どうもスポ根と私の相性は悪いようです。

 ひたすら肉体や精神を苛め抜くのって、マゾとか洗脳に近いような気がしてしまって嫌悪感があるんですよね。

 そんな私も認めるスポ根物の一つが帯ギュなわけですが、これもなんだかんだ言ってスポ根物以外の要素が大きいですね。

 いや空手バカ一代とかの、本当のスポ根物も読んでないわけではないんですけど、そんなんで強くなるの? と考えてしまうのですよ。

 どこまで言っても文科系の頭なんでしょうかね? だからこそ帯ギュの緩い雰囲気も好きですし、おお振りとかラストイニングとかの、理論的なスポ根は好きなんですけど。


 とりあえず帯ギュは単純なスポ根物ではなく、軽いタッチの作品ですので色々な人にお勧め出来ます。

 かといってスポ根にありがちなトンデモ理論もないし、その点ではやはり文科系の匂いがするというか。

 サンデーも最近は本格的に売り上げ落ちてるし、河合先生また帰ってこないですかね。

 年齢的に週刊少年誌連載は厳しいものがあるのでしょうが。


 とりあえず柔道へのとっかかりとしてはお勧め。帯をギュッとして読んでみましょう。

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