第14話 その十四 皇国の守護者  伊藤悠・佐藤大輔 集英社

 ……てめえ! という声が聞こえそうであります。いや、その思いは充分に分かるんですけどね。

 今回紹介するのは皇国の守護者。初めての原作付きマンガであります。


 中身はガチガチの戦争マンガ。大陸から攻め込んできた植民地主義的な帝国に対し、島国の皇国が対抗するという物語です。

 戦争マンガと言いますが、この皇国、第二次世界大戦初期の日本軍よりもひどい状況です。初期の優勢も何もなく、最初から劣勢で頭の悪い上級指揮官や古臭い戦術によって会戦で敗北。そこから撤退するというのが物語です。

 主人公の新城直衛は小隊の指揮官である中尉。彼だけは現実的な戦争を把握して、味方の不利や絶望的な状況を洞察しています。

 それにも関わらず、悲壮感は感じられません。なにしろこの主人公、とっても戦争が好きなのです。

 自軍の主力が撤退するための時間稼ぎを命じられても、なんら不機嫌にはならずそれをこなすのです。

 主人公は敗北を繰り返します。もっともその敗北の時間稼ぎによって、自軍は態勢を整えることが出来るのです。

 戦闘における主人公の台詞は名言の数々となり、多くの場所でコピペされたでしょう。

 そして物語は主人公に課せられた任務が終わり、降伏が許された状態で完結となります。


 おいおい、ここから反撃じゃないの? と読者の方は思うかもしれません。

 その通り。原作のほうはここからまだ話が続くのです。しかしマンガはここで終わり。

 原作者との間に確執があったとは噂されていますが、その真相ははっきりしません。

 とにかく全五巻で完結している、濃縮された名作なのです。


 ちなみに原作の方は9巻まで出ています。

 第一部完結のような体裁をとっていますが、実際のところこれで完結です。

 なにしろ作者、最近亡くなっておりますので。


 佐藤大輔。完結させた作品はただ一つ。それ以外は全てエタってます。

 その中で皇国は丁度いいところで切ってあるだけ、まだマシなのかもしれません。




 というわけで好きなマンガをオススメしていた私ですが、この作品に関してはオススメ出来ません。

 明らかにこの先に楽しい物語が待っているのに、途中で完結しているのですから。

 それでも活字に飢え、物語に飢えた人ならば、小説だけでも読んでいいかもしれません。

 しかし漫画のほうの描写も素晴らしいので、そちらも読みたくなってしまうのは必然です。


 しかし天はどうしてこういう作家に才能を与えてしまうのでしょう。

 まったくもってクソ野郎の佐藤大輔。今からでも甦ってエタってる作品を全て完結させてほしいものです。

 そういや田中芳樹のタイタニアは完結しましたね。あの人は銀河英雄伝説を完結させてるので、まだ許せるのですが。その後に完結したアルスラーンは、むしろ完結しないままの方がよかったとかも言われてますが。


 さて、皇国の守護者。泥臭い戦場描写が魅力のこの作品、面白いことは間違いありません。

 しかし続きが読めないという致命的な欠陥があります。それでも手を出すかどうかは貴方次第。

 性格の悪い私は、是非読んでほしいと思いますけどね。でわでわ。


×××


 この作品に限らず、全ての作家はある程度のペースで作品を完結させてほしいものです。


 そう、秋山瑞人! あんたのことだよ! ミナミノミナミノの続きはいつ出るんだよおおおお!(魂の慟哭)

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