第10話 その十 あずまんが大王 あずまきよひこ メディアワークス
四コママンガの歴史には、明確な分岐点がある。
あずまんが大王以前と、以降である。
これまである意味マイナーなマンガを取り上げてきた、ここいらで少しはメジャーなマンガを紹介してもいいだろう。
同作者のよつばとが不定期連載になってしまっている以上、この人の作品はこれで紹介するのが適当だからだ。
ちなみに私はこのマンガを、自分用、布教用、新装版と三種類持っていたりする。
今では新装版も持ってるけどな!
マンガの内容は、高校生少女たちのゆるい日常。
しかしこれまでの4コママンガと圧倒的に違うのは、キャラクターの個性の強さと、4コマに捕らわれない柔軟な表現である。
事実四コマのマンガであるに関わらず、普通のストーリー物として作られた話もあり、それも面白かった。
あずまきよひこ氏の才能は、それ以前からある程度知られていたが、私が初めてそれを知ったのは、To Heartの二次作品であった。
「私とあんたらの差がちょっとやと思ってるんか!」
「委員長! 結婚してくれ!」
このやり取りで、作者の非凡な才能を見抜き、マンガを一巻から初版で持っていることは、私の誇りでもある。
元々電撃大王という雑誌には、決定的な看板作品がなかった。
強いて言えば当時セカイ系ラノベの最高作であるブギーポップの漫画化だったのだろうが、それでもそれほどの販売数はなかったのだ。
当時高校生だった私は、あずまんが大王だけは毎月立ち読みしていた。
今は存在しない、あの本屋で……。
あずまんが大王のキャラクターの強さに関しては言及したが、キャラクタノーの魅力はなんであったのか。
それは当時四コマ界に不足していた『萌え』要素を導入したことである。
クールで長身で人気がある、ちょっと近寄りがたい雰囲気を感じさせるが、実はコミュ障に近いだけの榊さん。
小学生だが勉強で飛び級しているちよちゃん。
元気と言うか、こいつがアクションを起こしてそこから話が始まるとも。
メガネで常識人だが、実は一番エロい体をしたよみ。
そして登場後しばらくして、当時の萌え要素に、新たな萌え要素を加えた歴史的キャラ大阪。
もちろん大人である先生たちも個性が強く、ゲームを買うために遅刻したり、酒によってエロエロ話をしたりしてくれる。
その全てがそれまでの常識から半歩ほどはみ出て、素晴らしい作品へと昇華しているのだ。
萌え四コマと言えば「けいおん」が有名なのだろうが、キャラの個性の強さや物語性としては、あずまんが大王の方が後世に与えた影響は大きい。
逆に今では四コマと言えば萌え、と逆転してしまっている感もあるが、あずまんが大王に存在するユーモアセンスに匹敵する作品は出ていないと断言できる。
物語は三年間で終わる。続けようと思えばサザエさん時空でまだまだ続けられただろう。
しかしこの物語は全4巻。あまりにも短く、それでいて珠玉の輝きを放っているといえるだろう。
最初から読み直したとき、キャラたちは成長しているのが分かる。
四コマであり、コメディともギャグとも言える要素が強く、それまでの四コマにはなかった画期的要素を詰め込んでいるにも関わらず、この作品ではキャラクターたちが生きている。
その部分がこのマンガにおいて、最も凄い所なのかもしれない。
あずまんが大王、新装版もあるので、是非お手にされたし。
ちなみに私は電撃文庫のおまけに付いていたあずまんが大王のしおりを、全て持っている。
羨ましいであろう、ふふん。
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