コミック蔵書数万冊(たぶん)の元書店員のオススメマンガ

草野猫彦

第1話 その一 超人ロック 聖悠紀

 どーも彦猫です。失業中の元書店員です。まあ書店員と言っても昨今のマルチ展開から、本ばかり触っていたわけではないのですが。

 というかね、マンガばかり触っているわけにもいかなかったんですよ。現在の書籍を含むマルチメディア展開は目覚しいものがあり、CD販売とかDVD販売とか、レンタルもしているわけです。


 まあそんな私ですが、骨の髄からマンガ好きです。中学生になったころには既に1000冊近くのマンガ本を持っていました。

 今の若者からは信じられないでしょうが、当時は新刊のコミックが、立ち読みできる時代だったのですよ。そこでマンガを読み漁り、買いあさっていたわけです。

 そんな私の近所に、障害者支援の一環として、障害者が運営する古本屋があったのですね。

 古本で立ち読みも出来る。そして安いので買いまくる。規模はそれほどでもなかったのですが、あの店が私の原点だったと思います。

 まあ小さい店ですので、それほど量はありません、それでも読みまくって、一巻から読む本はなくなって、普通は途中巻からなど手を出さない私も、途中の巻から読み始めたりもしてしまったわけですよ。


 はい、ここで知ってる人は気付いたと思います。

 超人ロックって、特にキング時代のものは、明確に時系列がバラバラなんですね。

 初期だけを挙げても 6→4→5→1→2→3 というように読むのが正しいのです。そして私が最初に読んだのは5巻でした。

 最初はなんじゃこりゃ、と思いもしたのですが、超人ロックはロックの物語なのです。

 そして彼の周囲で起こった出来事が描かれる。ちなみに作品中では少なくとも1400年以上。年代の言及がなかった地球時代の話を含めると、おそらくは2000年以上が経過しています。

 ロックはその中で活躍しますが、あくまで個人としての活躍。組織に属することもありますが、組織の変化によりその組織から離れることもあります。銀河帝国の設立から安定期までは帝国派でしたが、衰退期には敵対していますね。


 ロックは長命の超能力者で、数多くいる超能力者の中でも、ほとんどいない不老、あるいは若返る存在です。

 そんな彼の価値観は、超人の名に相応しい超然としたものかと言えば、それは違います。

 助けられる命は助ける。敵でも無力化して殺さない場合もある。完全な悪人は廃人にしたり殺したりしますが、その基準もぶれる。

 作品中で「何が最強の超能力者、最高の賢者だ!」などと言われることもありますが、その通りなのです。

 彼は超人ですが、同時に一人の人間としての己を持っています。恒星の表面で戦っても死ななかったり、惑星を破壊したりすることさえ出来る超人。ですがその根本はやはり人間なのです。


 ロックは不死身に近いですが、彼の周囲の人間はそうではありません。

 死線を共にした仲間。親のように育てた子供。様々な人間と関わり、そして別れていきます。

 割と最近出た作品では、遂に彼と共に歩む伴侶を得ましたが、そんな彼女ともやはり、寿命の関係で死別することになります。

 度々隠棲するように農場を経営したりもしますが、やはり銀河に危機が迫ると、舞台に立たざるをえない。

 実のところ、彼の存在がなくても、歴史は流れていくのかもしれません。

 ロックは超人ですが、神ではないのです。しかしどうしようもない悲劇は防ぎたいという、根本的な人間らしさは失っていないのです。

 そんな彼でも、どうしようもないことはいくつもあります。己の力を制御出来ず、数十万の人間を殺してしまったりもします。

 しかしそれでも彼は、距離を保ちつつも人間と関わろうとすることをやめないのです。


 超人ロック。現在ではメディアファクトリーと少年画報社で描いてますが、一つのお話を完結させるごとにタイトルの副題が変わっています。

 しかしやはり私が好きだったのは、少年キング時代の超人ロック、全38巻なのです。

 銀河連邦の中での活躍。第一次銀河連邦の崩壊と、宇宙戦国時代。銀河帝国の樹立と安定、そして末期の帝国期と第二次銀河連邦の設立。

 スケールの大きな舞台の中で、ロックは強大な力を持ち、組織の一員となることもあるのですが、最終的にはやはり一人で戦い、そして去っていくのです。

 去った後の彼は、やはり農園で穀物を育てたりするのです。


 今から読み始める人には絶対にお勧めしません。正直初期のSF描写は、他の多くの過去のSF作品と同じく、古びてしまった部分もあります。

 それでも私が最初にお勧めするのはこのマンガ。超人ロック。無限の時間を生きる緑色の髪の少年。

 彼自身が舞台装置となり、話は展開する。おそらく今もまだ読んでいる人は、作者が亡くなるまで読み続けることでしょう。


 おそらく私の命が尽きるまで、この作品を手放すことはないでしょう。お勧めと言いながら手を出しにくい作品を最初に持ってきてしまいましたが、これ、お勧めではなく筆者の気晴らしですね。

 作者も命の危機からなんとか生還しましたが、さすがに執筆ペースは落ちた模様。

 では次回もお読みいただけることを願って、筆を置きます。

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