成功する外国人研修と採用

又吉秋香

第1話 外国人社員研修と労務管理

筆者はベトナムで、ある事業の再生を任されることになり、店舗リノベーションと同時に人材教育を一からやり直す事にしました。


すでにマネジメント人材については、ヘッドハンティング会社を通じて面接を行い、私が持つ「人材=人財」への思いが共感できているかを確認させていただいたところです。


これから彼を通じて、外国人社員の研修について現地社員に共通認識を持っていただくために、「成功する外国人社員研修」と題して、新しく連載させていただくこととなりました。



外国人研修の目的


これまで多くの日本企業が海外進出を果たし、グローバル採用が実施されることが一般的になりました。


そして現地で採用した外国人社員の研修を日本で実施する企業が増えているのですが、以前は外国人研修生として熟練技術の習得を目指すことが多かったのです。


しかし、最近では日本的なビジネス習慣や社内文化の定着などに焦点を絞った、ホワイトカラーに対する研修が多く実施されています。



コンプライアンス


外国人研修の受け入れは、入管法、労働法、税法などの様々な分野におけるコンプライアンスが要求されます。


特にホワイトカラーの研修の場合には、従業員としての日本滞在なのか、それとも単なる研修目的での一時的な日本滞在なのかにより、受入れ企業の法的な義務なども大きく異なりますが、これらの境界は非常にグレーな部分が多いのです。


したがって、ホワイトカラーの研修を実施する場合には、研修の目的や受け入れ態勢を明確にすることが必要となってきます。



入管法の改正


2009年に入管法が改正されたことにより、コンプライアンス上の問題の多かった従来の外国人研修制度は廃止されました。


代わりに「技能実習ビザ」が創設され、受入れ企業には技能実習生との雇用契約の締結など、労働法の順守が厳しく求められるようになりました。


この影響で、他の就労ビザとの違いが曖昧となり、特にホワイトカラーを対象とした研修では「人文知識・国際業務」、「技術」、「企業内転勤」、「研修」など、多くの選択肢が考えられるようになりました。



企業単独での研修


AOTS(財団法人海外技術者研修協会)が事業仕分の対象となり、多くの企業が外国人研修を単独で実施する傾向がみられるようになっています。


企業が単独で実施する場合にはすべて自己責任となるため、各分野の情報を整理し、コンプライアンスに注意しながら研修を実施する必要があります。



外国語への対応


これからあなたの会社で研修目的で外国人を受入れする場合であっても、日本の労働法などが適用される場合であれば、諸手続きにおいて相手が理解できる言語での対応が求められます。


研修目的で来日する外国人社員は、日本語に不慣れなケースが多く、後で「言った言わない」や「理解していない」などのトラブルの元となることが多々あります。


そのため、就業規則や雇用契約などは可能な限り、外国語で作成する必要があります。



保険制度へ加入のすゝめ


日本の保険制度へ加入するかどうかは、どのような形態で外国人社員を受入れるかにより、大きく異なります。


直接雇用なら雇用保険、社会保険への加入が求められますし、そもそもビザ申請の際に入国管理局で確認されることもあります。



最初に決めておくべき「賃金額と支払方法」


外国人の社員を研修目的で受け入れる場合には、賃金額や支払方法が非常に重要となります。


これにより取得可能なビザなどが異なるため、最後に決定しようとすると研修計画を最初から組み立てる事態にもなりかねません。


また、入国後に著しく内容を変更するようなケースでは受入企業の不正行為とみなされることもあるので、今後のビザ申請などに大きな影響を与えることも考えられますので注意しましょう。



メンタルケアは日本以上にケアレス


日本に来たばかりの外国人社員は慣れない文化や職場環境などにより、とかくストレスをためがちです。


特に言葉の問題などがあるため自分の意見を自由にいうことができず、社内の些細な出来事からトラブルへと発展することも珍しくないので、受入れ企業では人事・総務の方がなどが定期的にミーティングを開いたり、悩み事を聞き出すなどのケアが必要となります。


そもそも専門のケアスタッフがいると心強いです。


次回はインバウンドの研修と実務における税務について解説させていただきたいと思います。

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