喧嘩
あじさ
視点A
怒られていた。
どのくらい時間が経っただろうか。
目の前にいる彼女は、もはや僕の方を見ていない。
3日前のこと、先週のこと、1ヶ月前のこと。
彼女は怒り続けている。
出会いは大学のサークルだった。
大学が始まり、なんとなく選んだサークルの新歓飲み会が初対面だった。
その場では全然話さなかったけれど、部室で何度か一緒に話していくうちに、自然と仲良くなっていった。
映画が好きな彼女に連れられて、映画館に作品を観に行ったりもした。
僕は最新作とは話題作は全然わからないけれど、作品に好き嫌いはなかったから、わりとなんでも楽しむことができた。
観終わった後は感想を言い合ったりもした。
ほとんどは彼女が観たかった映画だったから、感動を熱く語る彼女に質問したりしながら店で夜ご飯を食べる、そんな日々を何度も送った。
なのに。
「......たしかに、これまで何も言わなかった私も悪かったのかもしれない。
でも......じゃあきくよ! どうしていつも意見を言ってくれないの? どうして何も言ってくれないの?」
彼女が顔をこちらに向ける。
「ご飯何にする、とかは最悪こっちで考えることができるけどね。2人でどこに行きたい? とか、やってみたいことある? とか、私はいろいろ質問してたよね。でも、いつも、なんだろうねって言いながら答えてくれなかった......」
「この前だって忙しくてしばらく会えないってなった時、私、連絡くれるのずっと待ってた! だっていつも! 連絡するのは私からだけなんだもん! どうして......連絡くれなかったの?」
「 ......私なんかと話してもつまらない?」
「こんなんじゃ私、独りよがり過ぎるよ......」
顔を歪めて彼女が俯く。
頬には涙がつたっていた。
僕が何も言わなかったから、彼女を独りにしていた。
僕はずっとそれに気づけなかった。
彼女がずっと笑っていたから、それでいいと思ってしまっていた。
「ごめん、本当にごめん。」
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