第250話エピローグ

海が見える小高い丘の上に建てた豪邸で、コーヒーを飲みながらのんびりと過ごす。

日本で会社員だった頃の生活を考えると、天と地ほどの差があるな…。


そう思いながらクルセルにある港町の近くにある高級住宅街を見下ろしながら、ふとここ数年の事を思い出す。


それにしても日本人が異世界のウェースに集団転移し、その後地球とはウェースの一部が融合してから10年が経過したけど、見事に世界が変わったな…。


当初は、地球に融合された国と繋がりを持とうとする以前に魔物が融合された土地から溢れ出した事で、各国はその対処に追われ、また直接融合された土地と接していない地域でも魔物が生まれた事で混乱に拍車がかかった為、融合直後から余裕を持って異世界の国と外交をおこなえたのは日本だけという状況でした。


とは言え外交先は、自分の居るクルセルを含む太平洋上に融合された6か国、地理的にも日本と近いうえに、自分がゲートで好き勝手移動できるので、外交交渉からインフラ整備支援まで意外と速やかに進められた感じです。


とは言え日本にも魔物が現れるようになったことで自衛隊に武器使用が認められ、今では自衛隊=魔物狩りと言った感じの印象になってしまってるけど。

融合後、北関東に融合された枯れ果てた大地のスケルトンは減る様子も無く、更に魔物が各地に出没するようになると日本政府も対応に苦慮し、自分に魔物討伐の依頼をしてきたので、北関東の枯れ果てた大地にゴブリン軍団を送り込み、数か月でスケルトンを一掃、その後、日本政府の支援の元、日本企業の進出によりインフラ整備と資源開発が加速した事でクルセルを含む6か国は急速な発展を遂げていたし。


何より王城の宝物庫にあった魔物除けの魔道具を見本にして大型化した魔物除け魔道具を作成する事で、クルセルの大部分が自分の指揮下にあるゴブリン以外の魔物は居ない場所となり、それが世界に知れ渡ると魔道具もあるし発展もしていて、かつ景観も良いとの事で、世界中の金持ちがクルセルに別荘を建てたいと言い出した事で、慌てて港町を整備し、高級住宅街を作って売りつけた事で財政的にも莫大な利益を得たうえ、人口増加にも寄与してくれたんだよね。


そして何より大きく変わったのはエネルギー事情。

未だに魔物は相当数自然発生するのでそれを駆除すると魔石が手に入る。

その魔石を魔力石化する事で、半永久的に魔力と言うエネルギーが得られることで、その魔力石を使用した自動車や船、そして近々飛行機まで登場するって話が出ているし。


クルセルの産業の一つとして各国から魔石を買い取り、魔力石化して販売する事でかなり利益があがっている。

うん、魔力石化の技術はクルセルの独占状態なうえ、それに反発して魔石を売ってくれなくても、クルセル内でゴブリン軍団が定期的に魔物を狩って魔石を回収して来るから、魔石を売らない国には魔力石を売らないという方針を取ったら、大半の国は魔石を売る様になったし。


まあ各国も魔力石を作るのに躍起で色々実験をしているみたいだからそのうち何処かの国が魔力石を作り出すだろうけど…。


とは言え、魔力石を原動力にした車や船舶の登場によって環境問題もかなり解決しつつあるし、何より給油を必要としないうえ半永久的にエネルギーを供給し続ける為、需要と供給のバランスが当初は追い付かない感じだったし。


まあそれも魔力石を大量生産できるようになったことで解決されたけど。


そして何より、融合された国々の適応力の高さには驚いたな。

地球とウェースでは、技術的にも差があり過ぎたけど、各国とも近隣の国とうまく交渉して技術を取り入れ近代化してるし、今となってはここが、10年前まで異世界で中世レベルの文化だったと言われても誰も気が付かないくらいだろうね。


更に驚いたのが土田かな、ステレーネさんと結婚したのは当然として、子供が8人って、どれだけ頑張ってるんだか…。

しかも9人目がお腹の中に居るとか言ってたし。

まあそれより驚いたのは、土田がネレースを信望する教会の最高司祭に就任した事。


元聖女の夫という事もあるけど、何よりウェース聖教国が滅んだ後、復興の陣頭指揮を執っていた事で多くの信者から支持を得たらしい。


まあ、暇があったら遊びに行くか。


ネレースは、融合後、すべての人間に神託を与えてから全く干渉をしてる様子も無いし、まあ恐らく人間に化けて世界の美味しい物を食べ歩いたり、洋服を買いこんだりしてそうだけど。


異世界に転移させられた時、こんな事になるとは思わなかったな。

異世界には1年と居なかったけど、慌ただしい異世界生活だったけど面白くもあった。


まあ今は地球が異世界になったと言うべきかもしれないから自分も自由気ままに各国を回ったり、クルセルでのんびりと過ごそう。


さて、今日は何をして過ごそうかな。


自由気ままな第二の異世界生活だ。

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