第235話野田課長
「お前! 武内か!!!」
第一声がそれかよと思いながらも、そうですよと答えると野田課長は何故かニヤニヤしながら勝ち誇ったような顔をしています。
「どうかしたんですか? ニヤニヤして、いつ処刑されてもおかしくない状況なのにえらく余裕ですね?」
「ふん! そんな脅しは意味無いぞ! 見てみろ、この待遇を、牢屋に幽閉と聞いていたが個室でベッドもまとも、本も望めば用意され、まともな食事が3食ついて来るんだぞ! これが処刑される人間への待遇なわけ無いだろ! ウソを付くならもっとまともなウソを付け! どうせ処刑できないから待遇を良くし私の知恵を欲している証拠だ!」
そう自慢げに言い放ち、ドヤ顔をする野田課長ですが、ここが王国幹部、言うなれば身分の高い人が罪を犯した際に幽閉される場所だから豪華なだけで、誰も野田課長の知恵など欲して居ないとは思っていないようです。
うん、分かってはいるけどとてつもなくムカつく…。
そんな自分を無視しつつ野田課長は自分がここに来た理由が何なのか理解していないようで何故か勝ち誇た顔をしています。
「野田課長の今後、というかこの異世界の今後とそれに伴う野田課長の身柄の扱いにに関して一応お知らせをしようと思ったんですけど、野田課長がそう言うなら自分は帰りますけどいいですか?」
めんどくさいような顔をした自分の表情と態度に、一瞬ムスッとした表情を浮かべましたが、自分の今後が気になるのかどうなるのか質問攻めが始まります。
「まず、異世界の状況ですけど…」
「そんなのはどうでもいい!! 私の今後を先に言え!! パルン王国が是非ともと頭を下げるなら国の発展に協力してやってもいいのだぞ!」
「いや、それはありませんから!! まずは異世界の現状を把握してください! 現状この世界はもう暫くしたら無くなります、まあそう言うと若干の語弊がありますのでハッキリと言いますと地球と融合します」
「武内!! お前は馬鹿か? 地球と異世界が融合などどうやったらそんな非現実的な事が起きるんだ!」
「はぁ~、野田課長、そもそも自分達が異世界に転移させられたこと自体が非現実的なんですよ? 融合だって非現実的とは言えないでしょ」
「確かにそれはそうだが、だからと言って地球と融合など信じられるわけないだろう!」
「まあ信じる信じないはご自身の判断にお任せしますが、後4~50日後には融合されるのでそうしたら信じるしかないでしょうけど、とは言えここで幽閉されていれば融合を実感する事も無いでしょうけど…」
「それで融合したからどうだって言うんだ? 私はもちろんパルン王国から好待遇を受けれるんだろう?」
「いや、好待遇なんて受けられませんよ、野田課長達、反乱の首謀の面々は外交の道具として使われるか、使い道が無いから即刻処刑されるかのどちらかでしょ」
「何を言っている!! 私達の知識があれば国が発展するんだぞ! それを外交の道具? 使い道がなければ処刑だと!!」
「そうです、パルン王国が日本との交渉で野田課長達が起こした反乱の損害賠償を日本に要求するでしょうね、そして日本は、賠償の支払いと引き換えに身柄の引き渡しを、と言うのが普通ですが、日本の世論が反乱の首謀者の為に金を払うのを認めるかどうか、そもそも賠償は払っても、犯罪者引き渡しの条約など無いので引き渡す理由もありませんし、そうなると処刑って事になります」
「ば、馬鹿なことを言うな!! 私は異世界に転移させられた被害者だぞ! なら日本政府は救出するのが普通だろ!!!」
野田課長は自分の思い描いていた答えと全く異なる現実に喚き散らしますが、とりあえず自分は淡々と説明を続けます。
現状、地球とこの異世界が融合した後、恐らく諸外国を含め、異世界の各国と外交関係を築こうとすること、ただしその中に犯罪者引き渡し条約があるかと言えば、まずそのような条約は後回して経済や貿易交渉が優先されること、そしてなにより、日本人によって反乱を起こされ被害を受けたパルン王国に対して日本と野田課長達は諸外国から非難をされるので、日本としては強気の外交は出来ない、賠償金の支払いに関しても日本政府は世論などを考慮して個人のやったことであり日本政府が賠償金を支払う事は難しい、そうなれば死刑に相当する数人の日本人の助命は求めるけどそれ以上はしない。
そう現状を説明すると、先程まで自信満々に勝ち誇った顔をしていた野田課長の顔が青ざめて行きます。
「武内!! いや武内君、どうにかならんのか? 日本政府に私達の身柄を引き渡すよう交渉をさせてくれ、そもそも私は日本人なんだ、日本の法律で裁かれるべきだろう?」
「いや、治外法権は無いですから、日本の法律じゃなくてパルン王国の法律で裁かれます、今の所、処刑が執行され無いのは自分が国王にストップをかけているからで、それでも国王の一言で即時処刑が執行されてもおかしくない状況ですから」
「そ、そんな…、だが武内君がストップをかけられると言うならうまく交渉すれば日本への身柄引き渡しも出来るだろ?」
「無理ですね、あくまで自分が依頼できるのは一時的なストップまで、一個人に反乱の首謀者を解放させる力はありませんよ」
まあ日本政府としても融合前に処刑が執行された方が面倒事が無くなって助かるって感じだろうけど…。
淡々と現状を話す自分に、真っ青な顔をしていた野田課長ですが、自分が助命及び日本への身柄引き渡しは無理と言うと、顔を真っ赤にし、弁護士を呼べと怒鳴り出します。
これ以上は話しても無駄だな…。
そう思い、牢を出ようと歩き出すと、野田課長は喚き散らしながら何とかしてくれと懇願していますが、完全に自身は悪い事をしたという認識がないのでこれ以上話しても無駄なので、無視をして牢を出ます。
パルン王国としては平民用の牢屋に入れておいて脱走や病死なんかされても困るから王城の牢屋に入れたんだろうけど、少し甘やかしすぎだね、全く自分の置かれた現状を把握するどころか厚遇されてると思ってたみたいだし。
一応、鈴木さんには伝えてはおくけど、また面倒事をって感じなんだろうな。
パルン王国には賠償金たっぷりせしめろと言っておこう。
日本人以外の幹部の多くは既に処刑されてるし、野田課長達の身柄なんて今となってはそのぐらいしか使い道ないしね。
それにしても、外交の講習は盛況なんだな、国王を含め誰も戻ってこない…。
書類仕事とか放置して大丈夫なのか?
まあしわ寄せを受けるのは何処の世界でも大体中間管理職と下っ端なんだけどね。
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