第212話巨大魔力石

291日目


ゴブリンの調査隊が持ち帰る情報を元にロゼフが地図を作製していきますが、やはり広すぎるようで昨日だけでは全てを調査しきれませんでしたので、調査を継続します。


「ロゼフ、何故この遺跡、というより王都自体が全く朽ちることなく形を保ったままなのかわかる?」

「いえ、分かりかねます。 恐らく何かしら結界のような物か、魔術などで時を止めているのか、町を見て周りましたが全くもって分かりません」


そう言って首を傾げるロゼフですが、興味があるようで自身も調査に乗り出したくて仕方が無いようです。

とは言えゴブリンからの報告を受け王宮の地図を作製する役目のロゼフが居なくなると地図の作成が滞る為、現時点では調査を諦めてもらい地図作りに集中をして貰います。


調査隊のゴブリンが王宮に入って4時間程が経過した頃、調査に向かっていた一隊が報告をもたらします。

報告によると、王宮に地下室がありそこに異様な光景が広がっていたとの事、イマイチ要領を得ない報告の為、ロゼフにそのまま作業を継続させ、ゴブリンの案内で発見した地下室に向かいます。


王宮の中心部の地下と言ってもよさそうな場所にある螺旋階段を降りると、そこには異様な光景が広がっています。


「な、なんだ? ここは?」

そんな言葉が口から洩れ、唖然と周囲を見渡します。


広いすり鉢状の地下室の壁面にびっしりと何かの結晶に閉じ込められた人たちが眠り、そしうて中心部のにある巨大な魔力石のようなものから魔力が溢れ出しています。


「これは、この遺跡に住んでいた人? いや、服装が日本人っぽい…。 てことは転移させられた人?」

そんな疑問がよぎりますが、結晶に閉じ込められている人はスーツを着ていたりラフな服装をしていたりと明らかに異世界の人間とは思えません。


これはどういう事だ?

何故、日本人がこんなところで結晶に閉じ込められているんだ?

それにこの地下の中心にある10メートルを超える超巨大な魔力石、見る限り何かが閉じ込められているという様子はないけど魔力を吸収し続けた結果、容量がオーバーして溢れ出してる?


地下の光景を見ながら唖然としていると、目の前が真っ白になり、直後、ネレースの部屋の中に居ます。


「ふふふ、もう辿り着いちゃったのね。 もっと時間がかかると思ってたけど、まあウソは言ってなかったでしょ? 3万人をヌスターロス大陸に転移させるって言ったじゃない?」


そう言ってネレースは楽しそうに笑っています。


「これはどういう事なんだ? 大勢の日本人を閉じ込めて何を企んでる? それよりも結晶の中の人は生きているのか? この遺跡は何故朽ちてない、ここに住んでいた人間は何処に行ったんだ?」

「そんなに一気に質問しなくても答えてあげるわよ」


そう言ってネレースは楽しそうな顔をしながら質問に答えて行きます。


「まず、ここに居る日本人2万人、全員生きているわ、力を与えたけどあまり異世界で生きていくには向かない感じだったから替わりに魔力供給の役目を担って貰ったの、そうね、あなた達の世界の物で言うと電池? と言う感じかしら、ちょっと違うけどまあそんな感じね」


「電池? この魔力石に魔力を送る為という事か?」

「そう、よくわかったわね、多少なりとは言え2万人もいるんですもの、魔力石に魔力を供給するには十分な量が確保できるのだから使わない手は無いでしょ。 おかげで魔力石に必要な魔力は溜まったし、ヌスターロス大陸にも十分魔力も行き渡ったし、まあ私の役にはたったわね」


「何を言ってるんだ? 何の目的でこんなことをするんだ? 今すぐにでもこの人たちを解放できないのか?」

「ええ出来るわよ? ただ私が異世界に転移させるにあたって不適合者と判断した人間よ? 一斉に開放してあなた制御できるの? 出来ないでしょ? それに無理やり結晶から出すと死ぬわよ」


「じゃあどうしろっていうんだ? 今の話ではもう用済みと言った感じに聞こえたが、だったらネレースが日本に転移させればいいだろう」

「そうね、それは出来るけど無駄に力を使いたくないのよ、まだ私にはやる事があるんだから」


「やる事? どういう事だ? 何をしようと言うんだ?」

「そうね、教えてあげてもいいんだけど、どうしようかしら…。 まあ知った所で貴方にどうこう出来る話では無いんだけどね」


ネレースは悪戯っぽく笑い、そしてクスクスと笑います。


「教えないならそれでもいいけど、この魔力石破壊すると言ったらどうするんだ?」

「ふふふ、貴方には出来ないわ、それを破壊すれば圧縮された魔力が解放されてこの大陸が吹き飛ぶわよ。 そう、この大陸に居る人間も魔物も全て死ぬわ、それでも破壊する?」


ネレースはそう言ってこちらを見ていますが、あながちウソと言う訳でもなさそうな上、自分が苦し紛れに言ったのを見抜いているのでしょうか、さして慌てる訳でも無く楽しそうにこちらを眺めています。


「まあここで魔力供給をしてくれた人間はさっきも言ったように用済みだから解放してあげてもいいんだけど、そうね、貴方が戻してあげなさい、結晶のままあなたのゲートで日本に送れば、日本に着いてしばらくしたら氷が解けるように結晶は消えるわそしたら目も覚めるでしょ」

「いや、ゲートは最大で55センチ四方の大きさしか開けないんだけど…」


「あなたちゃんと見てる? もう少し観察力あるかと思ったけど、結構節穴ね」

「どういう……。 そういう事か、結晶の大きさが中の人に関係なく一定の大きさって事か?」


「そう、見たら普通気付くと思うんだけど、まあいいわ、魔力石は回収させてもらうからその日本人は好きにしなさい」

「まて! それでこの町に居た人達はどうなったんだ? 何故朽ち果てもせずついさっき人だけが消えたような状態なんだ!」


「それはこの魔力石の効果よ、この王都全体が神域と同じで時間が止まっているの、でも住んでた人達は魔力が暴走した日に消滅したわ、それだけの事」

「じゃあネレースはその魔力石を使って何をしようとしてるんだ? この世界の神であるネレースがこんな巨大な魔力石を必要とする理由はなんなんだ?」


「それを貴方に教える必要があるの? それに知ったからと言ってどうするの?」

「いや、知っても何も出来ないだろうけど、異世界に飛ばされてこれだけトラブルに巻き込まれてるんだから知る権利ぐらいはあるだろう」


そう言う自分にネレースは少し考えたようなしぐさをしてから口を開きます。


「そうね、じゃあ教えてあげる。 もう誰にも止められない事だから…」

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