第187話古びた日記
遺跡の中心にある屋敷だった建物の周りを散策していると、カウアが地下室らしきものを見つけたと報告に来ます。
地下室は2つあり、1つは食料庫でしょうか、中には干からびたかつては食料だった物が棚に並べられています。
そしてもう1つの地下室は隠し部屋でしょうか、朽ちた本棚が並び、部屋の真ん中には7~8人が座れるテーブルと椅子があります。
ここは何か密談や会議など他人に聞かれたくない話をする時に使っていたのかな。
そんな事を思いながらも、本棚の本の状態を確認しますが、やはり時間が経っている為、脆くなっており、ここで中を確認すると破損をさせてしまう可能性がある為、アイテムBOXに収納し、あとでゆっくりと中を確認する事にします。
それにしても、日記に納税に関する本に法律や知識書といったところかな。
内容の確認はグランバルさんやロ二ストさん達に依頼して人を雇って解析を進めたいけど、変な技術なんかが書かれてると将来的に変なことに使われる可能性もあるしな…。
でも悠長に本を読んで解析してる暇も無いし。
その後も部屋を探索しますが特に目ぼしい物は見られませんでしたので、建物を出て遺跡を一通り見て周った後、転移魔法でゲートを開き集落へ移動します。
それにしても、やっぱり違和感があるよな…。
大昔に人が生活していた痕跡があったように見え、風化した人骨などは転がっているのに、貴金属などは一個も見かけなかった。
誰かが盗掘まがいに持って行ったって可能性はあるけど、この大地まで探索に来る冒険者なんかいないだろうし、かといって集落の人間が持って行ったとしてもこの辺りの集落では使い道ないし。
魔道具に装飾品、金貨や銀貨など1つも落ちてないなんて。
魔物が集めている? それともこの大陸の奥地に町や国があるとか?
そして、遺跡なんて魔物の根城になっててもおかしくないのに何故魔物が1匹も居なかった?
そんな疑問を抱きつつ集落に戻ると、朝出て夕方には帰って来た自分に長や集落の人達は驚いていましたが、転移魔法で一度行った事のある場所なら自由に行き来できる事と、影の中に居るフォレスホースの事を話すと驚いていましたが、そのまま宴の支度を始めたのでどうやら集落の人達にとっては転移魔法もフォレスホースもどうでもいい事のようです。
う~ん、転移魔法やフォレスホースよりも宴ってどんだけ宴会好きなんだ?
その日の夜、用意された部屋で遺跡から回収してきた本を確認しますが、どうやらあの遺跡はモーラインと言う町だったようで、領主はブロード子爵と言う人のようです。
日記はそのブロード子爵が書き続けていたようで、大体10歳ぐらいからの日常が書かれています。
日記を読み進めるとやはりこの一帯はクルセルと言う国の領土だったようで、ブロード子爵はその国の貴族階級の人のようです。
モーラインの町も栄えて領地経営もかなり順調だったようです。
最初の数冊は、まだ家督を継ぐ前の事を書き記している感じで、勉強の事や飼っていた鳥の事、舞踏会で出会った女の子の事など、ごく普通の日常が書かれています。
どうやらブロードが15歳の時に父親が急逝し家督を継ぎ子爵となったようですが、ブロードが優秀だったのか、家臣が有能だったのか、領土経営は順調だったようです。
その後も読み進めると、ブロード子爵はクルセルの首都での執務が多くなり、領土を離れていた期間が多くなっていたようですが、それでも結婚をして、18歳の時には子供も生まれたようです。
うん、書籍にして販売したらそこそこ売れるかなこの日記。
そんな事を思いつつも更に読み進めると、ブロード子爵が25歳になった頃から日記の内容が一変してきます。
一部の人間に神託がくだされ、以前から行われていたクルセルでの魔法実験が激化し、神を生み出す実験を始めるに至り、反対派と賛成派に貴族たちが割れ、トラブルも多くなってきたようです。
それでも実験を推進する者達は王族を取り込み王城の一角で実験と研究を始め、反対派は王都から追い出される形で領地に引き籠ったようで、ブロード子爵もその一人だったようです。
とは言え王都に情報収集をする人間を派遣していたのでしょう、もたらされる情報と、神託を基に進む実験に関する不安などが書き綴られていました。
日記はその後しばらくの期間の出来事などが綴られていましたが、ある日を境に空白となります。
多分、空白になったのは、ネレースが言っていた魔力の暴走で町が滅んだからだろうな…。
流石に当日何が起き、どのようにして滅んだのかは書かれていなかったけど、実際あの遺跡には多くの人が生活をしており、恐らく一瞬ですべてが失われたのでしょう。
う~ん、やっぱりこの日記にある内容を信じるなら、昔王都があった場所、長が話していた巨大な遺跡って所に行って調査しないとどんな事が起きていたのか分からないな…。
263日目
長には一旦、砂漠の先にある国に戻ると告げて転移魔法で死の砂漠にある防塁に戻ります。
指揮所に行きダダルインさん達に砂漠の先にある大陸の事を話すと一様に驚きの表情を浮かべます。
「マサト殿、それは誠ですか? 想像では荒れ果てた荒野で魔物が跋扈していると思っていたのですが、話を聞く限り、穏やかな場所のように感じますが…」
ダダルインさんが、一同を代表して質問をしてきますが、自分も荒野のような場所を予想していたので皆さんが驚くのも納得です。
「確かに今回見て来た場所は一部でしかないので本質は分かりませんが、見た限りでは穏やかな場所でした。 ただ奥地に行けば深い森林などもあるようなので、そのあたりは魔物が多く居る可能性があります」
「とはいえ、砂漠の先にある大地に集落があり人が暮らしていたとは…」
「まあ集落の人も排他的な感じでなく友好的な人達ばかりでしたので、今度時間がある時に転移魔法で連れて行ってあげますよ」
「うむ~、確かに興味があるな、是非ともその際は頼むことにしよう。 それで砂漠の先にある大地を見て来た者の意見として再度大規模な魔物の襲撃はありそうか?」
「そうですね、恐らく暫くは無いと思います。 自分が見た限り大規模な魔物の群れはいませんでしたし、大丈夫だと思います」
「そうか、それは朗報だ、あんな襲撃が頻繁に起こるとなると守り切れる自信が無いからな」
そうダダルインさんは言い、安堵の表情を浮かべます。
ですよね~、自分もそう何度もあんな戦いは嫌ですよ、何気にゴブリン軍団被害甚大だし、防塁も一時は突破されてたしね。
そんな事を思いながらも、帰還準備を整えているバイルエ王国兵とドグレニム領兵を転移魔法のゲートで送り届け、二ホン砦にゴブリン軍団を帰還させます。
なんだかんだでタダ働きだったな。
まあ魔石が大量に手に入ったからタダ働きという程でもないかもしれないけど…。
あとは、日本にゲート開いて政府の人から本を受け取りパルン王国の近隣諸国にばら撒かないと…。
うん、数日連絡とってなかったから絶対文句言われるな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます