第8話異世界で迎える初めての夜 3

「ホォー」「ホォー」


うん、そんなフクロウの鳴き声聞こえてませよ。

だってここ日本の山奥じゃないもん、異世界だもん!


木々の葉が擦れる音だけが静寂の中に響いてます。


ゾルス達ゴブリンは作成した武器を一通り試し、今は焚火を囲んでます。

まずはさっき思ったことを聞いてみようと思います。


なんせ今従属してるゴブリンが腐りだしたらなんか色々やばい気がするし、ていうか聞いても問題は解決しないけど聞かないと何か気分的にね…


「ロゼフ、ゴブリンシャーマンってことは死霊術使えるんだよね?」

「はい、私はシャーマンですので死霊術を扱うことはできます。」


「それって今自分が使っているのと同じ感じ?」

「いえいえ、私が使える死霊術は死体に簡単な命令を与え動かすくらいです。マサト様の使う死霊術とは全く別物です。かくいう私もすでに死んでいるにもかかわらず自分の意志で話しておりますし。普通死霊術で操る死体は意思など持ちません」


「そうなんだ。 う~ん、ますます謎だね、同じ死霊術なのにここまで違うなんて」

「マサト様はステータスとやらでご自身のスキルが見えるとのことでしたが、そこにはなんとあるのですかな?」


「あっそうか、ステータスオープン!…う~んと、上級死霊術LV1かな」

「上級死霊術ですか。なるほど…恐らくではございますが私の使う死霊術は初歩的なものなのだと思われます。 ゆえに意思も持たず、簡単な命令しか与えられないのだと思われますな」


「てことは死霊術のレベルが上がればさらに皆の出来る事の幅が広がるわけかな?」

「左様ですな~恐らくとしかお答えしようがないですな。申し訳ござらん」


「いや、こっちも少しは疑問が晴れた感じがするから、むしろありがとう。 あっあと、皆は死んでるわけじゃない?てことはこのままだと数日で腐りだしたりしないのかな?」

「それについても、先ほど頂いた短剣を磨いていた際に気が付いたのですが、私たちはなぜか死んだはずなのに血が巡っているのです。短剣で指先を切ってしまったのですがその際、少量でかなりドロッとしておりましたが確かに血が巡っております。胸のあたりもゆっくりではありますが鼓動があります。」


「まじ? じゃあ今は、アンデットじゃないってことなのかな?」

「さあそれはわかりませんが、一応血が巡っているということはすぐにでも腐りだすということはないと思われますな」


「そっか、よかった。せっかく仲間になったのに数日で腐って居なくなっちゃうとかいやだもんね」

「ハハハ、そのように思って頂き光栄でござます。 まあ肉がなくなったら私はスケルトンとなってでもマサト様についていきますがな、ハハハハハ」


うん少しは疑問がはれたような感じがします。とりあえず数日は問題ないでしょう。

ただ1か月とかそれ以上となるとどうなるかわからないので死霊術に関しても研究の必要性を感じてしまいます。


「さて、明日の行程だけど、森を抜けて城塞都市の方に向かっていきたいと思う。 出来れば早めにつきたいんだけど」


不思議そうな顔をしてハンゾウが質問をしてきました。

「どうして町に行くのを急ぐのでございますか? 別に急がなくても町は逃げないと思われますが」

「貴様!!!! マサト様の要望に異を唱えるとは何事か!!!!」


ゾルスがすごい剣幕で怒り出しました。

ゾルスを手で制します。

「ゾルス、いいんだ。これからは皆も質問や疑問は必ず言うようにしてほしい。 でないと行動に齟齬が出たりしちゃうからね。 その方が致命的なミスを減らせると思うから」

「ハハ!! かしこまりました。マサト様の仰せのままに」


ゾルスがかしこまってます。あとでゾルスとハンゾウそれぞれにフォローを入れときましょうか。


「それはそうと、早く町に行きたい理由だけど、自分でも良くわからないんだよね。 この世界に飛ばされる前に神が(まずは町を目指してね~村じゃないよ町だよ~っ)て言ってたから気になってね」

「左様でございますか」


「うん、町に行ったらなにか起きるのか起きないのかはわからないけど取り合えず町に行ってみないと何もわからないしね」

「確かに左様でございますな、うむ~~」


ゾルス達ゴブリンが考え込んでしまいました。

なんせ自分でもなぜ町を目指せと言われたのか予想がつかないのですから従属させたこの世界のゴブリンが回答を持ってるわけもありませんし。

考え込んでいると、ロゼフが難しい顔をして話し出しました。


「急ぐのはわかりましたが、この森が厄介でございますぞ。 体力的な問題はさておき森では方位を見失いがちです。 まっすぐ町まで進めれば早く着きましょうが、いやはや私共でもまっすぐ町まではなかなか…」

「それに魔獣や魔物もおりますのでそれの対処をしながらとなると骨がおれますな某たちならよほどの強者が出なけれな遅れはとりませんが」


「この森を抜ければ川がございますのでその川を下れば町の近くにつきますのでまずは何よりは森を抜けなくては」


ロゼフの話を引きつく感じでバルタが話してくれました。

「確かに、森でまっすぐって難しいよね。しかも魔獣や魔物って、昼間ゴブリンの大群に襲われたのもう忘れかけてた。勝手に思い込んだ安心って一番の敵だよね」

「左様でございますな、襲ったのは我々で、見事に返り討ちに遭いましたが、ワァハハハハハ!」


うん、ゾルス大岩で押しつぶしたの根に持ってないよね?


「そうか~まっすぐか…道に迷わない方法、まっすぐ、道に迷わない、まっすぐ…道、まっすぐ」

……

………

「そうだ!!!!この手があった!!」


急に大声を出したのでゴブリン達がビックリしてこちらを見てます。


「ああ、ごめん、だけど森を迷わずまっすぐ進む方法思いついたよ。」

「「本当でございますか?」」


少し驚いたような顔でゾルスとロゼフがハモりました。


「うん、何もない森の中を歩くから迷うんだよね?だったら森に道を作ればいいんだよ。」

「道ですか?」


ますますわからないといった感じでバルタが怪訝な顔をしていますが話を進めます。


「うん、道がないなら道を作ればいいんだ。今いるのはちょうど山の山頂で明日からは山を下る工程なんだし、ほぼまっすぐに森を抜ける道を作ればいいんだ。 ちょうどいい大岩が山頂にあるんだし、これを錬成で丸くして転がしたら真っすぐに続く道が簡単にできるじゃん!!」

「なるほど!」

「我々が轢き殺されたあれですな?」


うん、ゾルスだけじゃなくてバルタも根に持ってます?


「まあそうだね、山頂の岩は相当でかいので魔力が持つかどうかわからないけど転がしたら迷いようない道ができるし進路上にいる生き物も討伐できるから立ちふさがる魔物とかも少なくなるんじゃない?」

「確かにその通りですな」


ロゼフも賛同してくれたので行動あるのみです。

まずは山頂に向かい、岩と土の境目あたりを探します。


山頂の大岩との境目はすぐ見つかりましたが大岩が予想以上に大きすぎました。

両手をあてて魔力を流し込みますがなかなか全体像がつかめません。

これは予想外でした。ここまで大きいとは。

恐らく今のMPの残量でこの大岩全体を錬成で丸くするのは不可能でしょう。


今のMPでできるとこまで大岩を錬成して明日朝回復したMPで残りの錬成をおこなうか?

それとも全部ではなくできる限りの範囲で大岩を丸くして明日回復したMPは温存するか、自分の中で決断を迫られてます。


「よし!! 今あるだけのMPでできる範囲の岩を丸くしよう!! 明日は明日で何があるかわからないし」


そうと決まれば後は実行あるのみです。ロゼフに町の最短ルートの方角を確認して山頂からその方角に岩が転がせるように岩を錬成します。

錬成も慣れてきたので最初のころに比べれば魔力ロスも減ってきたようです。


岩に手を当てて魔力を流し込み大岩を丸くするイメージで…イメージで…


「よし完成!!」


山頂の岩の部分を全部錬成はできなかったけど、直径50メートルの丸い大岩ができた。


「いやはや、ここまで綺麗に丸く加工された岩は初めて見ましたぞ」

ロゼフがそういうとゾルスも

「さすが、マサト様、我がお仕えするに値する主でございます」


バルタもハンゾウもこの大きさの丸い大岩には驚きを隠せないようです。

「うむ~某、この大岩が転がってきたら昼間と同様につぶされますな!ワァハハハ」

「なんと申してよいのやら、拙者夢でも見てるのでしょうか」


うん、四者四様の反応ありがとうございます。

さて、明日はこれを転がして道を作って町までの近道を作ってしまおう。


「よし、今日はここまでにしよう。明日が本番だから今日はもう休むね」

そういうとロゼフが作ってくれた洞窟のような洞穴に入って寝ることにします。

洞窟に入ると枯れ草が大量に敷き詰められてました。きっとバルタが集めてきてくれたのでしょう。


ゾルス達ゴブリンが見張りはお任せあれとの事でしたので今日はこのまま寝ようと思います。


「おやすみ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る