恋人が家に来て、何事もなく日常が続く

春嵐

第1話

「よく来たな」


「おまえに呼ばれた来たんだけどな?」


「まあ入れよ。女の部屋だぞ?」


「だから困るんですけどね」


「遠慮すんなって」


「あ」


「ん?」


「女性の匂いする」


「わかるんだ。そういうの」


「男性からは出ない匂いというか、なんというか」


「たとえば?」


「すももとみかん足して二で割ったような」


「わかんねえなあ。良い匂いなの?」


「まあ、よしあしかな。俺は好きでもきらいでもない」


「じゃあ普通に入りなさい」


「お邪魔しまあす」


「靴」


「匂いをかぐな。犬かお前は」


「おい」


「あ?」


「匂いがしねえぞおい。おまえの脚しんでんのか?」


「おまえがいつもやるから、確実にやられると思って靴まるごと洗ったわ」


「はあ?」


「俺は風呂も入ってきた。匂いはしません」


「うっそだろおまえ。おまえ。やりやがったな?」


「女性の部屋に行くんだから、普通では?」


「帰れ」


「は?」


「おまえ。匂いのないおまえ、いらない。帰れ」


「なんだこいつ」


「あ、わかめ買ってきて。ついでに」

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