ワニのタクシードライバー② (489文字)
私は「足は届くのだろうか」とか、「ちゃんと前は見れるのだろうか」といったことが心配になったが、流石に今のタクシーはドライブ・アシスト機能が搭載されているので無用な心配であるようだった。
よくよく考えて見れば、隣国ではドライバー無しでタクシーが100キロで走ると聞くし、それと比べれば「それほど現実離れした状況でもないな」と、何となく納得してしまった。
ワニは意外にも結構話しかけるタイプの運転手で
「最近寝つきが悪い」だの「私も100日後に死ぬんですかね」とか言っていた。
「例のワニはタクシーに轢かれて死んだんだろ」と内心思ったが、面倒臭いので適当に相槌を打っていた。
そしてタクシーは、運転手が全身ワニであることを除いては、特に問題もなく目的地に到着した。
仕事が忙しい時期だったこともあり、ワニ運転手のことはいつの間にか忘れてしまっていた。。。
数日経ったある日、何気なく新聞を手に取ると
「少女買春組織、噛み殺される。 犯人はタクシードライバー」
という見出しがあった。
そこにはモヒカン姿の、ワニ運転手の写真が載っていた。
私は、モヒカン姿のワニを見て「ロックだな・・・」と思ったのであった。
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