第20話 マウンテン・エル・エクザ
「ま、マウンテン・エル・エクザ……さん?」
「知らん名だ。で? なんの用だ?」
困惑を隠せないユグルスと、威嚇するかのように睨みつけるシャインにエクザは、
「おめぇら、えくすくわりばーって知ってっぺ!?」
そう言って胸を張る彼に、
「え、えくすくわりばー? ってなんですか?」
「そんなものは知らん。失せろ」
二人の反応に、エクザはオーバーすぎるほどの動きで仰け反ると、
「えくすくわりばー知らないっぺ!?」
「ああ。知らん」
即答するシャインに、エクザはまたしてもオーバーすぎる動きでドヤ顔をすると、
「えくすくわりばーっでのはな、伝説のくわだぁ。なんでも切れ味が抜群な上、錆ねぇし、耕せば土が生きがえるんだぁ! オラは冒険者兼農家なんだっぺ! とにがぐそれが欲しいんだぁ!」
キラキラした顔で語るエクザに、シャインは冷たく、
「そうか。だが、知らん」
そう言うと立ち去ろうとする。だが、エクザが道を塞ぎ、
「だがらぁ。姉ちゃん達なんか知らねぇっぺ?」
しつこいエクザにとうとう我慢の限界が来たシャインは、
「うるさい男だな! とにかく知らんもんは知らん!」
拳銃を取り出し、銃口をエクザに向ける。
「しゃ、シャインさん! 落ち着いてください!」
今にも弾丸を放ちそうなシャインを、ユグルスが慌てて止めに入る。
【シャイン。ユグルス、の、言う通り。落ち着いて】
内側からフレナがフォローに入る。二人の頑張りで、シャインは銃口を向けるのをやめた。
「……ふん」
「おっがねぇ姉ちゃんだっぺ……殺気だげでオラぁ死ぬがど思っだっぺよ……」
エクザが緊張から解放されたように言う。その様子を見たシャインは、
「……で? もう行っていいよな?」
圧をかけながら言うとエクザは、
「知らねぇならしょうがないっぺ。オラのカンがはずれだのが納得いがねぇだども……。足止めしで悪がっだけろ! 姉ちゃんだぢ、なにするが知らねぇだども気ぃづげでな!」
最後に爽やかな笑顔を見せると、早々に立ち去って行った。
【なん、だったの?】
【あははは! これだから下界は楽しいね! あははは!】
フレナはともかく、爆笑してうるさいラファにまたしても苛立ちながら、シャインは、
「……時間を無駄にした。今日はもう休む。明日、朝イチに出発だ。いいな?」
「は、はい!」
こうして二人は、道具屋を後にした。
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