第5話 新米冒険者誕生
一週間後、訓練所にて。
「ハァハァ!」
息を荒らげるユグルスに対し余裕たっぷりのシャインは、木刀を静かに下ろし、
「……これくらいか? 自分の身くらい守れるようにはなっただろう?」
シャインの問いかけに、息も絶え絶えにユグルスは頷く。
「ハァ、なん……とか、なりそう、です……ありが……とう、ござい…ハァハァ」
シャインは面倒くさそうに木刀を返却すると、
「まぁ、一週間でここまでなら上等か。荷物をまとめろ。この町を出るぞ。それから……武器商人は廃業しろ」
シャインの言葉に、ユグルスは目をぱちくりとさせる。
「わからんか? 扱えない武器など邪魔なだけだ。アタシ達と来るのなら、武器商人は辞めろ」
そう言われ、すこし考えた後ユグルスは決意したのか頷き、
「わかりました。……その変わり、ワタシ……じゃなくて、オレも冒険者になります‼︎」
****
「はぁ〜、ワタ……オレも冒険者かぁ〜!」
冒険者ギルドに登録し、Fランクになったユグルスはプレートを嬉しそうに眺める。
「……登録するだけなら誰でもできる」
シャインの冷たい言葉に、ユグルスは少し落ち込むがすぐに持ち直し、シャインに訊く。
「あの! ところで、町を出たのはいいのですが、どこに向かうんです?」
ユグルスの問いに、シャインはぶっきらぼうに言う。
「……遺跡だ」
【シャイン、それでは説明が足りないとお兄さんは思うな! 遺跡調査専門だって教えてあげたらどうだい?】
ラファの言葉で、シャインはため息を吐きながら、
「……アタシ達は遺跡調査専門の冒険者だ」
「な、なるほど。……ところで気になっていたのですが、町を出てもシャインさんのままなんですね!」
ユグルスに指摘され、シャインは顔をしかめながら言う。
「ラファは有翼人で地上を歩くのに不慣れだ。フレナは知ってのとおり畏怖されるダークエルフ。目立つのは避けたいんでな、それで基本的にはアタシが表に出ているだけだ」
相変わらずぶっきらぼうに言うと、シャインは歩みを早める。それに合わせ、トコトコとユグルスもついて行く。
****
日が沈みはじめた頃になり、今夜は野宿する事になった。
シャインはラファと交代し、ラファが無詠唱で杖を次々と振るう。
「ラファさん、何をしているんですか?」
興味を引いたのか、ユグルスが尋ねるとラファは得意げに言う。
「これは、人避け、魔獣避け、獣避けの魔術さ! 大魔術師である私には造作もない事だよ!」
「な、なるほど。それなら、安心ですね!」
素直に尊敬の目を向けるユグルスに、ラファは嬉しそうに、
「ふふふ! そうとも! もっと褒めていいのだよ?」
【……調子にノるな】
シャインの苦言に、ラファはとくに気にも止めることはなく、
「さてと! 夜は長いんだ、少し語らうことにしようか!」
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