アラビア妖精と海の森
孤独なピエロ
第1話
1アラビア妖精と海の森
玉榮茂康
貴方は世界中から集められた宝石の中で何が一番欲しいですか?高級貴金属店に並んでいる高価なダイアモンドとサファイアは岩の中に埋まっていた光る石ころでしたが職人の手でカットされ磨き上げられたものです。人の手で加工されず自然のままの宝石が真珠です。真珠はアコヤ貝の中に眠っている妖精が神様から頂いた命です。無理して貝を開いて真珠を取り出すと哀れな妖精は死んでしまいます。それでもあなたは真珠が欲しいと思いますか?
遠いはるかな昔アラビア半島の砂漠に人間が住んでないころ海の女神は何もない砂漠の海辺に海の森とその周りの砂漠に広い草原を創りました。草原には砂漠からいろいろな生き物サソリとクモにイナゴなどやネズミそれにヘビなどが集まって住みつきました。森には木から生まれた緑妖精と葉の露から生まれた水妖精を住まわせました。妖精の食べ物は森の木々が作る霧と葉の表面で作られるミネラルを含んだ小さな露で太陽の恵みを受けて森が作るものばかりでした。緑妖精は薄い緑のベールと羽でそよ風の音を立てて木々の間を飛び周り、砂漠に出かけて美しい風紋を作ります。水妖精は水色の透明なベールと羽で水面を飛び虹色に輝くさざ波を立てました。海底も砂漠でしたがいつしか海草の草原となりいろんな魚や小さな生き物たちが住むようになりました。ウミガメや子供連れのジュゴンの家族も時々海草を食べにやってきました。海の動物たちは美しい妖精の踊りを見るのが楽しみでよく森に遊びにきていました。妖精達は海の生き物達と話すことができたのです。妖精達は世界中の海を旅している老ウミガメの話をとても楽しみにしていました。老ウミガメは妖精達にこの世界でなんでも捕まえ檻に入れて見世物にする人間ほど怖い物はない、あなたがた妖精は見世物として狙われるので気をつけなさい」と口癖に言っていました。妖精達も海の草原でたくさんの動物達が漁師の差し網にからまってもがき苦しむのを見ているので人間の怖さは知っていました。
ある年の夏、時々草原を訪れるウミガメとジュゴン一家がこの数ヶ月間草原に現れません。
心配した妖精達は森に一休みで立ち寄ったフラミンゴにウミガメとジュゴン一家のことを尋ねました。フラミンゴは悲しげに話しました「この近くの海でウミガメは漁師に捕まって水族館に売り飛ばされたそうだ、ジュゴン一家はハンターに追いかけられ子供を守りながら夫婦は必死に逃げたが最後まで抵抗した夫はモリに刺されて死んだ、その間に母親と子供は深い海に逃げたよ」妖精達は深い悲しみに包まれてジュゴンの冥福を祈りました。
冷たい北風が吹き終わった5月の森は黄色の小さな花で飾られ塩の香りで満ちました。花の香りに誘われて遠くからミツバチとチョウチョそれに小鳥も飛んできました。海の女神に見守られた森は。数千年間砂漠のはてで平穏でした。しかし、平穏は永遠に続きません。ある年大勢の人間たちが沢山のヤギとラクダをひき連れて砂漠にやってきたのです。家畜が砂漠のオアシスの少ししかない緑を食いつくと人間たちは砂漠のはての海の森近くにやってきました。沢山の家畜の群れで草原は次第に消えていきました。草原が減ったので大多数の人間は家畜をつれて砂漠に戻ったが、家畜を持たない者は海の森の近くに村を作って漁業を営むようになった。家と薪のために森の木がどんどん切り倒されていくので妖精達と動物達は森の奥の沼に浮かぶ海の女神のお社に逃げ込みました。沼周辺の森にはサンドフライが住んでおり人間が進入すると大群で襲いかかり体の柔らかな部分の耳、鼻、まぶたや皮膚に噛み付いて血を吸いかまれると発熱と皮膚をかきむしる痒みがひどかったので漁師達は恐れてあまり近寄らよらなかった。老人達は森は海の女神のもので森の木を切り過ぎると祟りがあると漁師達に警告したが迷信だとバカにされていた。
久しぶりに社を訪れた海の女神は妖精達に危険が迫っていると告げ決して人間に見られないよう命令しました。妖精達はお社は底なし沼の上に建っているし人間は海の女神のたたりを恐れてお社と沼周辺の林には近づかないだろうと思っていました。妖精達はお社に引きこもり食べ物探しは沼周辺の林の中だけに限っていました。人間が沼近くの森に入るとサンドフライの襲撃と鳥達がいっせいに鳴いて知らせるので妖精たちはすぐお社に隠れました。
そんな日が続くと妖精の子供達は外を飛び回れずとても退屈していました。風のない暑い日です。鳥達は巣作りで忙しく飛び回っていました。人間が森に入った気配がないので妖精の子供達はお社と沼周辺の林で遊ぶことが許されました。不運なことに人気のない沼の水面で楽しく遊んでいた水妖精の子供が夜中に漁師の仕掛けた刺し網にからまってしまったのです。悲鳴を聞いて助けようとした緑妖精も網に絡まれてしまったのです。助けを求めて泣き叫ぶ二人をお社の妖精達はどうすすることもできません。漁師は二人を見てこれは珍しものだ売れば金になると小躍りしました。二人は網カゴに入れられ森から連れ去られました。二人はカゴに入れられて漁師の家の前におかれました。老人達はこの妖精は海の女神の子供だから女神のたたりで村が不幸になるから早く森に返せと忠告しましたが漁師はこれはおれの捕まえた獲物だと言って聞き入れませんでした。カゴに閉じ込められた二人は隅っこで震えていましたが村の子供達は妖精に飛べと棒きれでつついたり手でつかもうとするので二人はカゴの中を逃げまわりました。うわさで妖精が有名になると娘のペットに欲しいという町の金持ち達が漁師に妖精を売ってくれと打診しましたがまだ高く売れると考えすぐには承諾しません、結局漁師は大金を提示したサーカスに大変な高額で売り渡しました。それを見た村の漁師たちは魚より妖精を捕まえた方が大金になると森に押し寄せ刺し網を張ったのです、刺し網を張るのに邪魔な木を切り始めました。海の女神が心配したことが本当になったのです。
他方サーカスに売られた二人の妖精はカゴ入れられたままアラビアの砂漠からヨーロッパに運ばれました。最初はサーカスの入口に小さな看板をつけたカゴに入れられましたが小さいので見る人は少なく子供達にいじめられることもありませんでした。二人は女神様が助けにきてくれるまでこらえましょうと励ましあいました。サーカスの団長から妖精の世話を命令された飼育係は妖精のことをマジックで使うアラビア人形とバカにして世話は必要ないと思っていました。団長は不思議なアラビア妖精登場とチラシで宣伝したにもかかわらず妖精のカゴに観客が集まらないのは展示方法が悪いせいだと考え妖精の飛べる広さのカゴに二人を移し妖精の住む森らしく飾るよう飼育係に命じました。飼育係は妖精の森なんて想像できずブツブツ言いながらお人形さん用の森を作れば良いのだろうと近くの木の枝と雑草を切り取ってカゴにつめました。
水遊びの池はサービスだと水の入った動物用のバケツを置きました。二人は木の枝と無造作に積まれた雑草の間を飛び回りました。木の枝に座ってみんなどうしているだろうかと話しました。二人とも捕まってから何も食べていませんからとても空腹でのどがかわいていました。水を飲もうと下に降りてバケツに近づいたとたん二人は異様な匂いに頭がクラクラしてすぐバケツからはなれました。バケツ水道水でこれに含まれている消毒剤の塩素は妖精には強烈な毒ガスでした。塩素が水から抜けるまでの2日間二人は目と体に痛みを感じました。ある日の開園で二人の美しい飛翔は観客を驚嘆させました。プールの水面で緑のさざなみと飛沫できれいな虹を作ったり、ピエロの帽子や肩に止まったり、客席の間を飛んだりして子供達を喜ばせました。連日妖精を見ようと大勢の人達がサーカスにおし寄せました。お客さんが増えて興行が盛況なので二人は休むヒマなく飛び続けました。お客さんが帰った閉園後のサーカス広場にアラビアの妖精と掲げられた小さなテントの看板の裏に妖精見たさに居残っている少女が隠れていました。カゴのすぐ近くの止まり木にオウム止まっています。勇気を出してゆっくり近寄るとオウムは少女を見ると「なんだお前はサーカスはもう終わったぞ」とがなりました。少女は舞台でオウムがナッツが好きなこと知っていましたからオウムの好きなナッツを手のひらにのせて「オウムさんこれあげるからすこしだけ妖精さんに合わしてちょうだい」と少女はサーカスの人にみつからないようにテントに入りカゴを覆っている布を少し開いて中を覗いてみました。カゴの中で空腹と疲れで羽を閉じぐったりしている妖精に少女は「お腹すいているでしょう、これあげると言ってブドウとバナナにジュース差し出しました。空腹な二人は果物をほんの少しだけ食べましがコップに入ったジュースは飲みません。それに気がついた少女はストローでジュースの水滴を作り二人にあげました。二人はそれで少し元気になり少女の心に話しかけました。「美味しい食べ物と飲み物をありがとう、私達は捕まってから何も食べてなかったのです」。美しい妖精にどきどきしながら少女は自分の名前はマリアンヌと告げて二人の妖精の名前をたずねました。二人は笑顔で「私達には名前はないの私達を創った海の女神様は私達を緑と水で分けて呼ぶの」。妖精と少しおしゃべりをした少女は家に帰るとママから「マリアンヌ、お友達は家の前を通ってとっくに帰ったのにどこで遊んでいたの?」と問われました。マリアンヌはママにサーカスの妖精に会って話をしたと話しましたが、妖精は童話の中のもので貴方が見たのは魔術師の操り人形だったよと言ってとりあってもらえません。夕方帰って来たパパに話しをしてもお前は日頃から童話の世界を夢見ているからマジックにかかったのだよと笑うだけでした。両親が話を真面目に聞いてくれないので少女はぷりぷり怒って近くのおばあちゃんの家に行きました。不機嫌な少女を迎え入れたおばあちゃんはどうして怒っているのかやさしくたずねました」「ママとパパは信じてくれないけど私は今日サーカスでカゴに入っている妖精とお話しをしたの」と言うとおばあちゃんは「私はマリアンヌを信じますよ、人は大人になると子供の頃に夢見た妖精の世界をすっかり忘れてしまうの、これはチャンスよ妖精さん達とお友達になってたくさんの面白い話をお聞きなさい」おばあさんの話で自信を持ったマリアンヌは何度も妖精に会いに行き妖精の住んでいた海の森と集まってくる動物達の話を聞きました。話しの中で老ウミガメとジュゴン一家の不幸なできごとには可哀想で涙を流しまた。
マリアンヌは学校のクラスで妖精の話をしました。仲の良い3人だけは熱心に聞いてくれましたが数人の男子は「サーカスで見た妖精はマジシャンのイルージョンマジックだとパパが言っていたよ、妖精に似せた人形を見て本物と思い込むなんて君は幼稚だよ」とばかにしてマリアンヌはクラスの笑いものにされました。
それでもマリアンヌは妖精は本物だと言いはり妖精から聞いた話を絵や作文に
書いたりしたので妖精おたくとあだなをつけられました。クラスの担任の先生はマリアンヌの絵の才能と作文には感心していましたが妖精に執着していることが心配になりマリアンヌの両親に童話を少し遠ざけてほうがよいという手紙を送りました。マリアンヌが黙々と妖精の絵と作文を書くので気味悪がって誰も近寄らなくなってきましたが3名の友達だけはマリアンヌの新しい絵と話を楽しみにしていました。ある日友達のアンが「マリアンヌ、私達を妖精に紹介してちょうだい、私達はサーカスで妖精を見たけど大人と男子はマジックだと言ってバカしているけど私達はあなたのお友だちは本当の妖精だと思うの」
マリアンヌは微笑みながら「みんなで会いに行くと妖精も喜ぶと思うよ」と返事をしました。学校からの帰り道4名は集まってサーカス広場に忍び込んで妖精のカゴの近くに行きオウムにたくさんナッツをあげてカゴの覆いの中に潜り込みました。カゴの奥で休んでいた妖精は突然の子供達の訪問に驚いたようですがすぐマリアンヌの近くに寄ってきました。みんな近くで見る妖精の美しさにうっとりしているとマリアンヌはひとりづつ友達を紹介しました。妖精は子供達の心の中に話しかけました。鈴のような美しい声はマリアンヌが作文に書いていたとおりでした。ひとりづつ妖精と話していると突然オウムが人がくるぞはやく逃げろとがなりたてたので子供達は外に飛び出して逃げました。4人はマリアンヌの部屋で妖精に会った感想を話し合いました。大人は誰も信じてくれないから妖精のことは私達の秘密にして妖精のことはなんでも話し合う約束しました。
ある日マリアンヌは学校の帰り道おばあさんからもらった妖精の好きそうな食べ物ハチミツ、ブドウ、イチゴにきれいな水の入った水筒をカバンに隠して無人のサーカス広場に行きすっかり友達なったオウムの見張りで妖精に会いました。妖精はお礼を言って少しづつ食べました。心配したマリアンヌが「お腹すいているのにどうして少ししか食べないの?わたしは食べものを残したらママに怒られちゃう」マリアンヌが「おなかすいているのにどうして食べないの?人間の食べ物なんておいしくないでしょう、おばあちゃんが妖精の食べ物は森でできる自然の果物だと言っていたけど」
妖精「マリアンヌ、心配してくれてありがとう、私達の食べ物は海の森の木からでてくる霧と木の葉の朝露なんです。マリアンヌ「そうか、これではだめなんだ」妖精「貴方からもらう食べ物で元気が出て舞台で飛ぶことができるのですよ」マリアンヌ「でも森の食べものがないと病気になるでしょう」マリアンヌ「そんな魔法の食べ物と飲み物がこのへんの森にないかな」妖精はマリアンヌを悲しませたくないのでしばらく黙っていました。
妖精「マリアンヌ心配してくれてありがとうでも私達はアラビアで捕まってカゴに入れられてから何日も食べてないのであと数日の命なのです」マリアンヌにはショックで黙ってしまいました。マリアンヌは急いで家に帰りママにただいまも言わず、自分の部屋に閉じこもり妖精達がもうすぐ死ぬなんてひどいと泣きました。帰宅したパパがドアをノックしても返事をせずにうつ伏せになっていました。夕食になっても出てこないマリアンヌを心配したママとパパが合鍵でドアを開け夕食だよと言っても部屋の隅でぼんやりうずくまっているだけで返事がありません。ママがどうしたのマリアンヌと肩を抱きしめるとマリアンヌは「もうすぐ死ぬなんてひどい」と大声で泣きじゃくりました。二人は何がなんだか分からないがとりあえず冷静に娘をおちつかせて話しを聞くことにしました。ママが「マリアンヌ、だれがもうすぐ死ぬのか教えてちょうだい」
マリアンヌはサーカスの妖精と言いかけて口を閉じました。ママとパパには信じてもらえないし妖精のことを話したら私から童話を取り上げるかもしれないと思ったのです。学校でマリアンヌは教室の隅に座って何か考えているようでした。学校と町の図書館に行ってアラビアの海の森と魔法の食べ物と水も調べましたがそんなものはどの本にも乗っていませんでした。3人のお友達が心配して大丈夫かと聞いても首を振るだけで今にも泣きそうでした。学校がひけるても4人は教室に残っていました。アンが最初に聞きました「ねえマリアンヌどうしたの、もしかしたら妖精さん達に何かあったの?」マリアンヌは涙をぽろぽろ流しながら、妖精さん達は食べ物がないからもすぐ死んじゃうの」アン「食べ物は私達全員で交代で運んでいけばいいでしょう」
マリアンヌ「私達の考える食べ物ではなく砂漠の海の森にある魔法の食べ物と水なの妖精はそれを食べないと死んでしまう、捕まってからなにも食べてないからもうすぐ死ぬかもしれないの」みんな考え込んでしまいました。「私はいろんな本で調べたけどわからないし魔法の食べ物と水を探しに行くにはアラビアは遠すぎるわ」
アン「ねえマリアンヌ、アラビアは無理だけど去年遠足で行った山のこと覚えている、先生がここは私達の国で人の入ってない美しい自然が残っているといっていたわ、あなたここには妖精達が住んでいるねと言ってみんなから笑われたでしょう」ベス「じゃあ、そこに行って水を汲んで妖精にのまそうよ、もしかしたら妖精の食べれるスモモやノイチゴがあるかもしれないよ」キャッシー「自転車で行けるかな」アン「だめよ私達スクールバスで行ったから遠いし道も分からない」ベス【学校のアルバムに去年行った山と地図が乗っているはずだからコピーしよう】アン「あの山はバスルートになってないから車でしか行けないよ」みんな「あの山に水を組にいこうよ」マリアンヌ「ありがとうみんな各自食料と飲み物を持って行こうよ、水汲みの綺麗なボトルと果物を入れるタッパーは私が用意するわ」ベス「明日から土曜と日曜日だから山まで行って帰れるね」4人は家族には友達とハイキングに行くと言ってそれぞれリュックを背負って公園に集まり山に向かって歩き出しました。郊外をでたところで足にできたまめが痛いとキャッシーが道端にすわりこんだ。ヒッチハイクしようよとみんなで親指を立てましたが4人を載せてくれそうな大きな車は停まってくれません。4人の立っている後ろの道路を巡回しているパトカーの助手席に載っていた婦人警官が「保安官、あの女の子達はうちの学校の生徒よ、危険なヒッチハイクなんてどうかしている、補導しましょう」パトカーに気づくと4人は逃げ出しました。「待ちなさい、マリアンヌとアン」名前を呼ばれて4人はあきらめて立ち止まりました。婦人警官は「ヒッチハイクがどんなに危険か学校で何回も教えたでしょう、あなたがたはいったいどいう考えでヒッチハイクなんてしようとしたの」
アン「去年遠足で行った山でノイチゴを取りたかったのです」保安官「そんな遠い所は家族でいくところだよ、ミセスヘンダーソン、とりあえず事務所に連れて行ってこの子たちの親御さんに迎えにきてもらいましょう」「帰りたくない、怒られると」子供達がいっせいに騒ぎ出したので、保安官はこまりはてヘンダーソンさんに子供達の弁明を聞いて二度とあんな危ないことはしないと約束させて開放して下さい。保安官から家には連絡しないから安心して早く帰るように言われてみんなホッとしましたがマリアンヌだけはずつとうつむいて黙っていました。
月曜日の放課後4人は教室の隅で小声で話をしていました。
マリアンヌがわたし今晩サーカスに妖精を助けにいくと言った時みないっせいに「妖精」と声をあげました。アン「妖精を助けてどうするの」キャッシー「お部屋に隠したらすぐママに見つかって怒られるわ」マリアンヌ「私妖精を助けたら家出してあの山に行って自由にしてあげるの、あの山の妖精達が助けてくれると思う、皆に迷惑かけたくないからわたし一人で行くね」言いましたが、みんな大反対して一一緒に行くと言いだしました。みんなのうしろから「ねえ君たち、妖精がどうのこうのって一緒に何処に行くの、ぼくも仲間に入れてほしいな」とピータが言いました。「あなた妖精はマジック人形とバカにした男の子達の仲間でしょ」「ちがうよ、ぼくはおばあさんから聞いてマリアンヌの妖精は本物だと信じていたんだけど仲間はずれにされるのが怖いから黙っていたんだ」アン「マリアンヌが死にそうな妖精を今晩助けに行くからみんなで一緒にいくの」ピーター「サーカスには番犬がいるし、ぼくはテントの中で妖精のカゴをみたけどカゴのドアにはおおきな鍵がかかっていたから簡単には開けられないよ。みんな顔を見合わせました門番のオオムとは仲良くなったけど番犬とカゴの鍵のことは考えていませんでした。ポール「大丈夫だよ、僕の父さんのカギ開け道具を使えば開けられるさ」
5人は近くの空き地に自転車をおいてサーカス広場に忍び込み妖精のテントに近づきました。マリアンヌがこんばんはオオムさんと小声で声をかけるとまたお前かとオオムは眠たそうに言いました。今日が最後だからこれをあげるねとたくさんのクルミとアーモンドをエサ箱におきました。誰か来たら小声で知らせてね。オオムは知らん振りしてクルミをポリポリ食べました。大勢で入ると妖精がビックリするからマリアンヌとピーターがテントに入りました。テントの中は暗闇でなにも見えませんでしたがピータが工事用のヘッドランプヲを灯して明るくなりました。寝ていた妖精はびっくりしてこんな夜に来ては危ないから早く帰りなさいといいました。ピータが鍵を開け始めました。ピータが鍵をはずして入り口のドアを開くとマリアンヌは「お願い、このバッグ中に入って下さいと叫びました」妖精が入るとバッグを閉じてみんなが待っているテントの外に飛び出しました。サーカス広場から出ようと走っていると数頭の番犬が追いかけてきます。ぼくがここで番犬を止めるから早く逃げろとピータが言いましたがマリアンヌは逃げません。バックのフタが少し開いて妖精が出てきて番犬達になにか話すと番犬達はおとなしく犬小屋に戻って行きました。息をきらして自転車を置いた広場に戻るとサーカスの団長と警備員が待っていました。団長「君達サーカスから盗んだものを返してくれないか」「いやだ」みんながいっせいに叫ぶとマリアンヌからショルダーバッグを取り上げようとした警備員に抵抗して引き合いになりました。団長「まて、乱暴に引き合いして大事な商品を傷つけては大変だ、保安官事務所に行って話をつけてもらおう」全員動物運搬用のトラックに載せられて保安官事務所に運ばれました。話をきいた保安官とヘンダーソンさんが飛び出してきて檻に入った子供達を見て「また4人娘かそれに男の子が加わってなにをしたのだ?団長「サーカスから黙って商品を持ちだしたが返してくれないのでこまっています、むりに取り上げようとして商品を傷つけられたらこまるので穏便に子供達から商品を取り上げて返してほしいのです」保安官「いま聞いただろう、それはサーカスの大事なものだから返さなくてはならない。返さないと君達は泥棒になるぞ。ヘンダーソンさんにそのバッグを渡しなさい。マリアンヌはバッグを抱え込みほかの4名ガーがっちりガードしておりヘンダーソンさんもお手上げである。いずれにせよ子供達を檻に閉じ込めてはおけない。親たちが見たら悲鳴をあげるだろう。保安官はこまってしまいました。「なあマリアンヌ、バックを取り上げないからみんなで檻から出て事務所に入ってくれないかい、ほら通行人がなんだろうと見ているよ」みんな檻から出て事務所に入りました。その間にヘンダーソンさんは学校の担任のミス・カレンに連絡して親御さん達とすぐ来てくれと依頼、みんなの家族にも電話を入れて至急保安官事務所にきてくれと頼みました。子供に何か起こったのかと親たちは事務所に殺到しました。保安官の説明を聞きながら親たちは子供達を取り囲み何をしたんだと叱りました。マリアンヌはカバンを抱え込んで座りこんでいました。ママが「マリアンヌサーカスから何を盗んだの、妖精のお人形さんでしょう、そんなもの買ってあげたのに」マリアンヌ「ママとパパはぜんぜん分かってないし、わたしを信じてなかった」大声で泣き出しました。他の親たちも何がなんだか分からずお互いの顔をみるばかりです。あとから遅れてきて様子を見ていたマリアンヌのおばあさんがマリアンヌを抱きしめて「マリアンヌお前とお友達が泥棒なると妖精さんがとても悲しむのよ」と言いました。マリアンヌは立ち上がりカバンを開いて「助けることができなくてごめんなさい」と妖精を一人づつ取り出してテーブルにおきました。緑のベールに包まれた妖精と水色のベールの妖精の美しさにみんな息を飲みました。「本物の緑妖精と水妖精よ」とマリアンヌが言いました。妖精はみんなにあいさつをしてテーブルの上から軽やかにみんなの頭上を跳びました大人達はおとぎの世界にいるような気持になりました。妖精はテーブルに戻ると大人達の心に鈴のような声で言いました。どうか今度の子供達の行動をせめず叱らないでください。わたし達を助けようとした優しい心から出た勇気と知恵です。私達は人間はとても恐ろしい生き物だと考えていましたがそれは間違っていたと気づきました。「これ以上みなさんにご迷惑をかけたくありませんからサーカスに戻ります。さようならお元気で」と迎えが持ってきたカゴにはいると扉を閉めました。マリアンヌがわーっと泣き出しましたがママがしっかり抱きしめて追うことはできませんでした。保安官「みなさん今晩はこれで帰って下さい家で子供を叱らないようお願いします」ミセスアンダーソンさん「保安官、この騒ぎの報告書はどうしますか?」保安官「妖精の盗難は入れないで下さい、そんなこと報告したら本省の笑いものになるだけです、サーカス団長は妖精が戻れば盗難届けは出さないと約束しましたよ、次の町の公演認可でここでは住民とのトラブルは全くなかったという私の証明書がいるらしいからです」ミセスアンダーソン「事件は何もなかったと日誌に書きますか?」保安官「サーカスからオウムが逃げ出してその捕獲に5名の子供達が協力して無事サーカスにつれ戻したとしましょう」
翌日の放課後5人はサーカス広場に行きましたがサーカス小屋は消えていました。広場の木の枝に例のオオムが止まっていました。ポールが「おいオオムサーカスはどうした」とたずねると、「遠くの町に行ったよ」と答えて飛んでいってしまいました。【バカね最初に妖精のことを聞くべきだったのに、ほら彼の好きなアーモンドとナッツをたくさん持ってきたのに】とアンが笑いながら袋を見せました、「彼がいらないならぼくが代わり食べるよ」と「お前たちサーカスは終わったから家に帰れとオームのまねをしたのでみんな大笑いしました。
サーカスは都会の公園の中にテントを広げました。団長は今回は妖精を中心にはでな公演にしようと新聞に広告を出しました、その効果で大勢の人が集まりました。美しく飛び回る妖精と水上の虹はまるでおとぎ話の世界のようで人々に感銘を与えました。ショウが終わると大勢の子供達が妖精のカゴの周りに集まりました。人形とか本物だと言い合っていましたが男の子が棒切れで妖精を突いてほら動いたぞと自慢するとやっぱり本物だと大笑いしました。連日公演は大成功でしたが近寄る妖精を捕まえようとしたりする不心者のトラブルは耐えませんでした。ショーの前に団長は妖精にいたずらしないようお客さんにお願いしますがトラブは収まりませんでした。妖精は虹作りとピエロや動物と遊ぶだけで客席には行かなくなりました。ある日団長は地元の小学生をサーカスに招待しました。
団長は妖精は客席のいたずら小僧のところにはいかないだろうと思っていましたが、ショーが終わると妖精は客席の上に飛んで一人の女の子の肩にとまったのです。妖精が「こんにちは、あなたのお名前は」と尋ねると「こんにちは妖精さん、わたしはジョセフィーヌです、きょうは楽しいショーをありがとう」顔をあからめてこたえました。他の子供達が自分にも止まれと大騒ぎしたので妖精は逃げてしまいました。
家に帰るとジョセフィーヌはおじいさんの書斎に走っていきました。書斎ではママとおじいさんとおばあさんがお茶を飲んでいました。ジョセフィーヌが興奮ぎみに飛び込んで来たのでママは「ただいまも言わないでどうしたの」ジョセフィーヌ「サーカスで妖精さんがわたしの肩に止まってお話ししたの」おばあさん「妖精とお話ししたなんて素敵ね」ママ「妖精はマジックよ新聞とテレビでトリックと解説していたわ腹話術人形で子供を騙すなんて許せない」おじいさん「お前は子供の頃の夢を忘れた現実主義者になってしまったね、ジョセフィーヌ、妖精はどんな姿をしていたかね?」
ジョセフィーヌ「これ学校で書いたの、緑と水色のとってもきれいな妖精だった」
おばあさん「ジョセフィーヌ、妖精はどんな声で話かけたの?」
ジョセフィーヌ「鈴の音みたいな声が心にとどいたので心で返事をしたの」ママ「もうやめて、ジョセフィーヌまず宿題をしなさい、おばあさん妖精のお話は寝る前にしてくださいね」
ジョセフィーヌは妖精のことが気になってボーッとして先生から「ジョセフィーヌ、授業中に居眠りしてはだめですと何度も注意されました。
ジョセフィーヌは学校が終ったのにすぐ家に帰らずサーカスに行きました。妖精のテントの前の止まり木にオームが一羽止まっています。とおりすぎてテントに入ろうとすると、「こら女の子料金を払え」とオームがどなりました。ジョセフィーヌはびっくりして、「オームさんわたし小学生でお金持ってないの、おねがいだからちょっとだけ妖精さんに会わして」オームがしらん振りして向こうを向いたのでテントに入りカゴの側にいきました。妖精達は木の枝で休んでいましたがジョセフィーヌに気づくと降りて側に寄ってきて「ジョセフィーヌ
会いにきてくれてありがとう」とうれしそうに言いました。ジョセフィーヌ
「わたし昨日の夜おばあちゃんから妖精さんからたくさんのお話しを聞きなさいと言われたとの」
妖精達は笑顔で「ええ、たくさんのお話しがありますよ」と答えました。
ジョセフィーヌが喜んでいるとテントの外から誰かくるぞ早くにげろとオーム
ががなりましたジョセフィーヌはいそいでテントの外に出てオームさんありが
とう「つぎはお金を持ってくるからねと言うと、「お金はいらない、クルミとナ
ッツが良い」と答えました。ジョセフィーヌは家に帰るとすぐおじいさんの書
斎に行こうとしましたがママに見つかり「妖精の話は宿題をすませてからよ」
と言われ
しぶしぶ自分の部屋に行きました。ジョセフィーヌは宿題をすましたノートに
ママのOKマークをもらうと書斎に飛び込んでいきました。おじいさんとおば
あさんは孫の話を楽しみにしていました。今日は妖精さんとたくさん話をした
ことにことばをしゃべる変な門番オームのことを話しました。
サーカスの団長は妖精が有名になったので何時妖精を売ろうかと考えていまし
た。マジック、イルージョンテクニックとか音声付き妖精人形、希少生物とか
うるさい解説者や団体が妖精を見たいと押し寄せてきたのでサーカスにおい
ておくのが面倒になってきたのです。
団長は久しぶりに妖精のカゴを見ておどろきました。かごの中の小枝と草はす
す汚れバケツの水はゴミが浮いていました。妖精達はカゴの隅に小さくなって
座っていましたが入り口近くの小箱の乾いたオレンジとスイカは食べたあとが
ありません。
団長は怒って飼育係を呼びつけ、この汚れた草木と水は何だと問い詰めました。
飼育係は忙しかったから道端で小枝と草を切って入れたけど水と果物は忘れ
ていたと弁解しました。もうすぐ大事なお客が見にくるから掃除をして水換え
と新しい小枝を入れるように命令しました。飼育係は妖精人形のことで怒るな
んて変な団長とぶつぶつ言いながら近くの公園から小枝と草を取ってきてカゴ
に押し込みました。妖精達はカゴの天井近くに避難して飼育係の仕事を眺めて
いました。バケツの水はゴミが浮いていましたが塩素が抜けたので妖精は安心
しましたが小枝と草は車の排気ガスで煤けて気持ち悪かったのでカゴの隅に座
りました。妖精のカゴがあまりに無造作なのに心を痛めたジョセフィーヌは公
演の最中にテントに忍び込んでお花と果物に果汁ジュースを隅において帰りま
した。
飼育係は誰かいたずれでおいたのだろうと気にしませんでしたが舞台が終わり
カゴに戻った妖精はすぐにジョセフィーヌだと気付き「ジョセフィーヌは本当
にやさしい子だね」と話し合いました。二人は果物を食べてジュースを飲んで
花の上で眠りました。
もうすぐジョセフィーヌの誕生日です。おじいさんとおばあさんは何が良いか
考えましたがパパとママが先に決めてしまったのでジョセフィーヌの欲しいも
のを探そうと考えていました。ジョセフィーヌが学校から帰って書斎に入って
きたときおばあさんは誕生日プレゼントの欲しいものは何かとそっと聞きまし
た。ジョセフィーヌは少し考えてから妖精さんと答えました。おじいさん【妖
精は家にはおけないからどうするの】ジョセフィーヌ「もしプレゼントにもら
ったら
妖精を狭いカゴから出して自由にしてあげるの」おじいさんはジョセフィーヌ
を抱きしめて、この子のためにサーカスから妖精をゆずってもらおうと決心し
ました。その晩サーカスの団長に電話を入れて値段はいくらでも妖精を引き取
りたいと申し入れました。団長「妖精はアラビアの砂漠からはるばる運んでき
たものですから高いですよ、それに妖精を買いたい人は他にもおられますので
せりにかけることになりますがよろしいですか」わかりました」と言っておじ
いさんは電話を切りました。心配そうなおばあさんの顔を見て「私はジョセフ
ィーヌのために財産の半分をつかってもよいと考えているよ」せりの日が決ま
りました。集まった金持ちはみんな子供のために買うのだと説明していました、
大きなデパートの持ち主は妖精を店に飾れば客が増えるから商売繁盛のためと
高笑いしました。
団長がせりの開始値を提示しましたがあまりの高額にデパートの持ち主はとて
も引き合わないと降りました。金持ちの一人が「あなたは商品を見せずにそん
な高額を提示するのですか、まず商品を見せることが常識ですよ」と言いま
した。団長「それはもっともなことです、ショーでご覧になったものです、で
はお一人づつ商品をみてもらいましょう」せりの参加者は一人づつ妖精のテン
トに入りました。オームが「妖精高いぞ」とがなるので団長はうるさいとけと
ばすと「高いよ高いよ」と言って逃げていきました。おじいさんの番がきまた。
おじいさんはジョセフィーヌが言っていた妖精は心で話すことを思い出し、子
供の気持ちで本当のことを話してみようとカゴの前に立ちました。薄汚れた草
木の奥にいた妖精達はおじいさんの近くに飛んできて、「こんにちはジョセフィ
ーヌのおじいさん」と鈴の音のような声で心に話しかけられました」 おじい
さん「わたしはジョセフィーヌの誕生日のプレゼントにあなたがたを贈りたい
と思って今日のせりに参加したのですこうなったら財産のほとんどをつぎ込ん
でもあなたがたを手に入れるつもりです」妖精達は悲しい声で「わたしたちを
買ってはけません、欲張りの団長さんのことですから大変な高額を要求したで
しょう、もうすぐ死ぬ私たちにはそんな価値はないのです」おじいさんはびっ
くりして「どうして死ぬのです」妖精「私達は漁師に捕まってからいままで何
も食べていません、人間世界には私達の食べるものはないのです。あなたが引
き取っても私達は数日で死ぬでしょう、ジョセフィーヌを悲しませたくありま
せんからどうかこのままお引き取り下さい」おじいさん「それでも」と言いか
けましたが妖精は何も聞かないでカゴの隅に行ってしまいました。
妖精を一番欲しがっていたおじいさんが何も言わずに引き上げたので残った金
持ち達は不安になり少し考えたいと帰りはじめました。
おじいさんはしょんぼり家に帰りました。しょんぼりしたおじいさんの姿にお
ばあさんが心配してせりの結果はどうだったかと尋ねてもぼんやりため息をつ
きながら【妖精達から買うなとことわられたよ】と伝えました。おじさんはふ
と顔を上げて独り言をいいました「素晴らしく節度のある綺麗な妖精達だった」
とおばあさんに妖精との出会いを説明しました、ジョセフィーヌは本当に素晴
らしい友達を持ったものだ」と二人で笑いました。
サーカスの事務所で団長は「元金を取り返そうと高く言って失敗だったと
ため息をつきました。まあ次の町で妖精達にがんばって稼がせてもらうか。今
日の夕方にはアフリカハチドリが届くはずだから妖精と一緒に飛ばせば受ける
ことまちがいないだろう。まだ妖精を買いたい者がいたら少し値を下げて売ろ
う」とお金の計算をしていました。」
カゴの中の妖精達はジョセフィーヌのおいてくれた花の上に寝そべって話して
いました。緑妖精「おじいさんは分かって下さったかな」水妖精「がっかりし
たみたいだったけど、大丈夫よ」
「みんなどうしているかなあ」「海の女神様が助けて下さっているよ」
【お腹へったね】「喉もカラカラよ」「私達もうすぐ死ぬね」二人は飛び上がり
最後の飛翔だねとバケツの上を飛んでさざなみと虹を作り微笑みあいましたが、
ちからつきた水妖精は水面に落ちて死に緑妖精は花の上に落ちて動かなくなり
ました。
【妖精が死んだぞ、妖精が死んだぞ】とオウムはテントの上を飛び回りました。
飼育係は大慌てで団長を呼びに行きました。妖精のテントに入った団長は呆然としてなんということだ元金も取り戻さない前に死んでしまったと怒り、飼育係を罵倒しながら夕方アフリカハチドリが届くからカゴの用意をしろといいつけました。飼育係は今からハチドリのカゴを用意するのは無理ですと言いかけて止めました。団長はものすごく怒っていましたから無理なんて言ったら首にされかねません。飼育係は妖精のカゴを空にして外側に網を張れば大丈夫だろう思い水妖精のカゴから水妖精の浮いているバケツと緑妖精の倒れている花を取り出して水妖精は水と一緒に近くの下水に捨て緑妖精は花と一緒に空き地に捨てました。下水に捨てられた水妖精の遺体は川から海に流れつくと魚達が海の女神のもとに運びました。緑妖精の遺体は近くの公園の森に住む妖精達が
人間に見つからないように森の奥に立っている椎の老木のウロに隠しました。
緑妖精の死は渡り鳥からお社の妖精達に伝えられました。
妖精達は仲間の悲劇と死を悲しみ、自分たちも同じ運命をたどるのかと嘆き悲しんだ。
数カ月後ジョセフィーヌがお庭でお誕生日プレゼントを開いているとオームが
何か叫びながらジョセフィーヌの前に降りてきて「おいむすめ約束のクルミと
ナッツをよこせ」とがなりました。ジョセフィーヌがはいこれとポケットから
両手いっぱいのクルミとナッツを差し出すと「ありがとよ」と言って食べまし
た。「ねえ、オウムさん妖精さん達お元気?」とたずねた。クルミとナッツ食べ
終わったオウムは舞い上がり「妖精とサーカスは遠くに言ったぞ」とがなりな
がら飛んでいってしまいました。
二人の妖精の無残な死を聞いた海の女神は怒りを抑えながら妖精達が心配になり海の森に行って驚いた。森の木はほとんど切り倒されてお社の周りだけが少しだけ残っている。森の周辺に張られた網にシラサギとチドリが絡まって死んでいた。森の木がなくなったので海底の草原も消え魚達は遠くの海へ逃げていた。村の漁師たちは漁よりも妖精のほうが大金を稼げると考え網に妖精がかかってないかと毎日見回っていた。女神はお社で憔悴した妖精達に迎えられた。
女神「二人は残念だった、皆大丈夫か?」妖精「女神様、森の木が切られてしまい最後に残ったお社の周りの木達に助けてもらっていますが自由に動く事ができず夜の間に食べ物を少ししか集めることができません、網が狭まっていますのでこのままでは漁師に捕まってしまいます、私達を海にお連れ下さい」女神【私も連れて行きたいが海に入ればお前たちは死んでしまうからそれはできない】妖精「大勢の町の人間達が私達を捕まえに砂漠にきているそうです、人間に捕まって二人の様に悲惨な目に会うよりも死んだほうがましです、」女神「もう少しだけ辛抱して待ちなさい、何か良策を考えよう」海に戻った女神は怒り狂って津波を送り漁村と刺し網を跡形もなく押し流しました。海の女神の報復はやりすぎだと人間寄りの神々から痛烈に非難され女神は孤立しました。海の女神はこれから人間に干渉してはならないと裁定され妖精への手助けも固く禁止されました。
妖精の捕獲は砂漠の村だけではなく興味半分と金儲けに目の眩んだ町の人間まで加わり砂漠に押し寄せてきた。
妖精達はお社に集まって相談したが海の女神の助けがないのでは自分たちで解決するしかなかった。ある日草原に住んでいたさそり達がお社にお別れのあいさつにおとずれてきました。草原が消えて食べ物になるイナゴやトカゲなどの獲物がいなくなってみんな死にそうだからここを離れて砂漠に移るのだといいました。
「この森ももうすぐ人間達に裸にされるから貴方達もどこかに逃げたほうがいいよ」。
「私達は逃げるところがないんです」と妖精は悲しげに答えました。サソリは【君達を創った海の女神様は】と言いかけて【無理だよな、他の神様達から君達を人間から守ることを禁じられたようだから】クロサソリが言いました「それなら砂漠のジンに助けを求めたらどうだ」
妖精「それは無理かもしれない、ジンは海の女神さまとはあまり仲が良くなかったらしいから」
サソリ「ジンは砂漠で長らく暮らしているから知恵を出して助けてくれるかもしれないよ」
緑妖精a「ジンの住み家は暑くて乾燥した砂漠のど真ん中だよ」水妖精a「遠いからやっぱり無理かな」 緑妖精b私が行きます、私は人間に捕まるより砂漠で死んだほうがましだ」緑妖精c「無謀だよ、行く途中で干からびて死んでしまうにちがいない」水妖精d「それなら私達が一緒に行きます、私達がカバーすれば貴方は遠くまでとべるでしょう」「私も行く」次々に水妖精が立ち上がった。
満月が煌々と照り付ける夜空に砂漠に向かう一筋の虹の中を緑妖精が飛び立った。次々に虹が消えてゆく、急がなければ、緑の妖精は満身の力で飛んだ、最後まで残った水妖精が力尽きて別れを言って消えたあと緑妖精は月陰に隠れた暗闇の前に下りた。仲間を失った悲しみの緑妖精を泣きながら暗闇に向かって叫んだ。「私は海の森に住んでいる緑妖精です、どうか私の話を聞いて下さい!」
「うるさいね、何を泣き叫んでいるのだい」
「私達を助けて下さい」
闇から出てきたのは黒ずくめの美しいジンだった。
緑妖精「人間達が私たちを捕まえようと海の森に押し寄せてきます」
「お前は森からここまで独りで来たのかい?」
「いいえ、ここまで私を運ぶために水妖精達が虹の橋になってくれました、でも途中でみんな死んでしまいました」
ため息をつきながらジンはやさしく言った。
「仲間を犠牲にしてここに何しにきたの?」
「大勢の人間達が私達を捕まえに砂漠にきているのです、どうか私達を助けて下さい」
ジン「そんな人間達は海の女神の津波で流してしまえば良いだろう、」
「海の女神さまは他の神様との約束で私達を助けることができないのです」
「そうか、この間はやりすぎたからな」
私達は人間に捕まり見世物にされるぐらいなら死を選びます」
ジン「今逃げても欲深い人間達はお前たちをしつこく追いかけるから厄介だよ」
緑妖精「森の木が切られて私達の食べ物と住み家もなくなっています」
ジン「女神の海に戻ればよいではないか」
緑の妖精「私達は森での暮らしが長すぎて海に入ることができないのです」
ジン「海の森を失って人間に捕まるぐらいなら死んだ方がましとお前達は考えているのだな」
「はい、人間に捕まって見世物にされるより死を選びます」
ジン「わかった、皆にそんな覚悟があれば私も相談にのりやすい」
緑の妖精「お願いします、私達は貴方しかたよれないのです」ジンは祭壇に向かって誰かとしばらく話していたが振り返ると緑妖精に言った。
ジン「ではこうしよう、次の満月に聖なる雨が天から降るから森から浜に出て裸になって雨で体を清めて留まっている小舟に独りずつ乗るよう皆に伝えなさい」
緑の妖精はジンの話をうつろに聞きながら倒れこんだ。
ジンは緑の妖精を抱き起した。「どうしたんだ?」
ジン「お前は森に戻って私の伝言を皆に伝えてもらわねばならんのだ」
緑の妖精は死んだようにぐったりしていた。
ジン「世話のやける奴だ、ここまで飛んできた勇気に免じて森まで送ってやるか」
お社の前に一陣の風が吹くとぐったりした緑の妖精がしずかに下りてきた。皆は死んだと思っていた緑の妖精が黒い人物に抱かれているのに驚いて目を凝らした。
ジン「私は海の女神の社には入れないのでこの子はここに置いてゆく、まだ死んではないよ」。
妖精一同「ご迷惑をかけたうえにこの子まで助けていただき本当にありがとうございました」
ジン「約束の日まで人間どもは私が砂漠に足止めするから安心するがよい、詳細はこの子に聞け」
朝日がさしてくると皆が礼を言う間にジンは消えた。
数日後ものすごい砂嵐が砂漠に吹き荒れた。砂漠から海の森に向かっていた人間達は前進を阻まれ砂嵐が止むまでの数日間砂漠にとどまるしかなかった。
暗黒の砂の下でこの程度なら誰も文句を言わないだろうとジンはほくそ笑んだ。
満月の夜になった、妖精達は社から浜に出て雨を待った。天からキラキラ輝く雨が降ってくると妖精達はベールと羽を脱ぎ捨て手を差し伸べ天の神様へ感謝の舞踏を始めた、緑と虹色の混ざった美しい光景だった。雨のあと妖精達の胸には命の真珠が埋まっていた。水辺に堅い甲羅のアコヤ貝の小舟が泊っており妖精が独りずつ乗り込むと蓋が締まりゆっくり沈み始めた、人間達の手の届かぬ深い海底で眠りにつくのだ。妖精達の脱ぎ捨てたベールと羽は海面を漂い漁師の船のプロペラに絡みつくいたずらをする海草になりました。
砂嵐の去った砂漠から海の森を目指した人間達は砂漠のはてに緑の森を見て小躍りして近寄って驚いた、森が消えていたのです。海の森と思ったのは緑のない真っ白なサブカだったのです。誰かが「砂漠から見た森は陽炎だった」と叫んだ。砂漠から人間達が引き上げたサブカで吹き荒れる砂塵の中でジンは”これで海の森の妖精達の話は終わり”と大声で叫んで哄笑した。
アラビア妖精と海の森 孤独なピエロ @stamaei
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