第14話:亀裂
「主君スティン辺境伯はサザン辺境伯家の援軍を願っております。
つきましては両家の縁を深くするために、ボドワン様と長女フィール様との結婚を望んでおります。
持参金につきましては、塩を考えております。
更に今後の塩取引の値段と量も、親戚として新たな条件を考えております」
俺には難しい事は分からないが、デヤウスの妹フィール嬢が俺の嫁になり、デヤウスが俺の義弟になるという事だろう。
デヤウスと義兄弟になるのはいいのだが、問題はフィール嬢の性格だ。
デヤウスの妹だから、フィール嬢が性悪とは思えないが、気になってしまう。
万が一フィール嬢がターニャに意地悪をしてしまったら、俺はフィール嬢を殺してしまうだろう。
「それだけかな、御使者殿。
それだけでは、スティン辺境伯家がサザン辺境伯家に人質を送っているも同然。
同じ辺境伯家でそれはおかしい、必ず続きがあるであろう」
「はい、ございます。
ボドワン様とフィール様のご成婚一年後に、デヤウス様とターニャ様の結婚を考えております」
グッワシャ!
無意識だった、無意識に殴ってしまっていた。
スティン辺境伯からの使者の顔下半分がなくなっていた。
俺が殴った衝撃で、顔の下半分が肉片と骨片に化してしまっていた。
「やってしまったか、これでもうスティン辺境伯との同盟は不可能になった。
スティン辺境伯は生き残るために皇国の家臣になるだろう。
岩塩が発見されていなければ、条件を悪化させてでも同盟を願い出るのだが、もうどうしてもスティン辺境伯と同盟する必要もなくなった。
今のターニャを政略結婚させると言ったら、ボドワンは私でも殺しかねないから、ここは独立建国を宣言して守りに徹する」
父上が俺を見ながら諦めたように言われた。
俺も今の自分がターニャの事が絡むと何をしでかすか分からない自覚はある。
スティン辺境伯からの使者を殺した以上、デヤウスとの友情もこれまでだ。
俺にはデヤウスよりもターニャの方が大切だ。
こんなことになったのも、全部フレッドとルドバルのせいだ。
もうこの前与えたケガも家宝で治しているかもしれない。
「父上、ターニャの仇に皇国軍を叩きのめしたいのですが、宜しいでしょうか。
その途中で、フレッドとルドバルの鼻と耳と陰部と指と引き千切り生皮を剥がしたいのですが、宜しいでしょうか」
「フレッドとルドバルを苦しめるのは構わないが、皇国軍と戦う事は許さん。
場合によれば、皇国と軍事同盟を締結するかもしれない。
ターニャ件でボドワンは皇帝陛下を恨んでいるようだが、陛下には何御罪もない」
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