第2話:衝撃の事実

「おい、こら、われ、正直に話さんかったらぶち殺すぞ!」


 俺はとっさにここは脅迫して全てを話させるべきだと考えた。

 昔から戦略戦術などは苦手だが、直感だけは優れているのだ。

 その直感のお陰で、今日まで生き延びてこれたといえる。

 大魔境で迷子になった時も、刺客の団体に襲われた時も、その方向に向かえばいいのか、どいつから攻撃すればいいのか、どこを狙えばいいのか、全て勘に頼った。

 その勘が、この女を脅かすべきだと強く訴えたのだ。


「ひっいいいい、言います、言います、言いますから、殺さないで。

 全部王太子殿下が考えられたんです。

 いくら容姿がよくても、寝ているだけの女は面白くないから、婚約を破棄するって言いだされたんです。

 腹の中に子供がいては面倒だから、取り巻きに輪姦させて、尻軽で誰の子供か分からないと言い掛かりをつけて追い込み、自殺させればすむと言われて……」


 俺の心の中に、何とも言えない、どす黒い激烈な炎が湧き上がった。

 抑える方法などない、いや、抑える必要など一切ない憤怒の炎だ。

 俺は無意識に周囲の連中に殺意の籠った視線を送っていた。

 睨め回すといった方がいい、人間性のかけらもない、貧民街に巣くう犯罪者共の眼つきと同じだった。


「ひっいいいい、殺さないで、殺さないで、殺さないで」

「あぅてひぃ、か、か、か、関係ない、俺は無関係だ」


 多くの人間が恐怖におののきその場で腰を抜かしていた。

 令嬢や根性なしの令息は、ほぼ全員が失禁脱糞している、失神する者もいた。

 だが、明らかに俺の視線から逃れようとした奴がいた。

 それも一人ではなく六人もいた。

 誰から尋問すべきか、殺すべきか、勘が教えてくれた。

 俺の殺意が一段と高まって、多少は根性があって、逃げようとしていた連中までが、その場にへたり込んだ。


「さて、急ぐんだ、直ぐに妹と王太子の居場所を吐け」


 俺はそう言うと、一人の、いや一頭の豚の手を握り潰した。


「ウッギャアアアアアアア!」


 次に俺は、殺していいと勘が伝える相手の前に立ち、無造作に腹に手を突っ込み、内臓を引きずり出して、それを掴んだまま、三頭目の豚の前に行った。

 腹を突き破られ、内臓を引きずり出された二頭目が、言葉にならない叫び声をあげているが、知ったことではない、俺はとても急いでいるんだ。


「お前には選ばせてやる、俺を妹と王太子の所に案内するか、自分の内臓を生のままで食べるか、どっちにするんだ?」


 俺は、その場にへたり込んで失禁脱糞している、三頭目の顔すれすれにまで自分の顔を近づけて、優しく、とても優しく聞いてやった。

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