『ムジカ・レトリックの園』というライトノベルを巡るお話です。
主人公はレビュー企画で『ムジカ・レトリックの園』というライトノベルのレビューを依頼されますが、ライトノベル大好きな主人公なのにそのライトノベルに覚えがない。
そんな導入から、主人公はライトノベルを巡る物語に足を踏み入れます。
溢れるように登場する実在ライトノベルのタイトルたち、『ムジカ・レトリックの園』に関する記憶だけが抜けている主人公、そして起こる『ムジカ・レトリックの園』の発売禁止回収騒ぎとテロ事件。
読んでいると、自分の中で『ムジカ・レトリックの園』が実在した世界と、消えようとしている世界、実在しない世界が交錯していきます。
実在しないはずのライトノベルは、本当に非実在なのか。わたしが忘れてしまっているだけではないのか。あるいは、知らないだけではないのか。
世の中に存在するたくさんのライトノベル、わたしはそれを全部読むことはできません。であれば、自分が読んでいないライトノベルの実在と非実在はどのように分かたれているのか。
自分が認識する現実の、いったいどれだけが実在するものなのでしょうか。
わたしが『ムジカ・レトリックの園』を読みたいと思っても手に入れて読むことができないのは、そのライトノベルが実在しないからではなく、書店に並んでいないだけのことなのです、きっと。