祭り 影
仲仁へび(旧:離久)
01
お祭りの会場を歩きながら、二人の子供が話をしていた。
日が沈みゆく中。
大通りの脇に並ぶ出店の明かりが、二人の姿を照らし出す。
二つの影が足元に生まれた。
その影は笑っている。
冷たい風が吹くが、すれらはすぐに集まった人々の熱気でうちけされた。
集まった多くの人々は、思い思いに談笑しながら出店を見回っていく。
「お祭りの射的店とか輪投げやさんとかって、たまに理不尽な仕様になってるよね。
そんなの絶対景品なんてとれっこない、って思っちゃう。
あるある。
でしょー?
なんで、そんな風なんだろう」
「お祭りのお店なんてそんなもんだよ。
雰囲気を楽しむもの。
ほんのちょっと日常から離れた場所を演出するためのかざり。
中身なんて求めなくてもいいじゃないか」
「えーっ、なんかそれはいやだなぁ。
ごまかされてるみたい」
「文句があるならデパートかスーパーで買った方が確実だと思うけど」
「そんな事いってませーん。もー、いじわるなんだから」
「でも、そんな面倒くさいお祭りも楽しいって思ってるでしょ?」
「そんな事おもってないもん。ふーんだ」
「はいはい。でも、お祭りの雰囲気って、独特だよね。ちょっとくらい嫌な事があっても、うちけせちゃうんだからさ」
「それは分かるよ。せっかくの楽しい日なんだからって思うよね」
「神秘的な雰囲気も関係してるのかな。みんな服装が違うからとか?」
「着物着るのたいへんだったなー。一年に一回でいいや」
「毎日やる事じゃないっていうのも、雰囲気の演出にかっているらしい」
「そだねー」
「いつもと違うって事は、いつもと違う事が起きやすいって事でもある」
「ん?」
「お祭りの日は、異界と接しやすくなる」
「オカルト信じてるの?」
「まさか。でも気をつけなよ」
「何に」
「あやかしに話しかけられても、相手をしない事。興味があると思われたらだけだ」
「はいはーい」
「こんな風に会話しちゃったら、だめだよ」
「わかってまーす」
「綺麗な夕焼けだよね。日がしずんでく、逢魔が時って知ってる? 今さら遅いか」
「え?」
祭りの会場で多くの人が歩いていた。
夕暮れ時。
まぶしい夕日に目を細めながら、人々は出店を見回っていく。
やがて日が暮れて、出店のライトが人々をの姿を照らしはじめた。
人々の足に影が生まれ始めた。
明かりがなければ、影は生まれない。
日が沈まないと、明かりで照らせない。
照らさなければ、影は生まれない。
祭り 影 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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