第09話 ソレイラ

 この砂漠の頂点に立つソレイラ。このモンスター……と言うか、もはや巨大怪獣と称したいこの生き物は、巨大な口と何千もの鋭い歯で獲物を磨り潰すようにくらい、砂を食うって移動する。ちなみに食べた砂はお尻(?)から出し、推進力に変えてます。


 そのせいで目は退化し、口にある嗅覚器官と魔力感知で獲物を捉えています。


 そんな場所にわたしが現れたら食べてくださいと言っているようなもの。いや、自殺と同じでしょう。


 そうならないための岩石地帯で、ソレイラの侵入を阻むのです。まあ、あの歯ですから時間をかければ食い破れるかもしれませんが、ソレイラは口や歯だけが硬く、胴体部は結構柔らかいらしいです。


 らしいと言うのは、剣で突き刺せるとあったからです。なら、銃弾でも効くと言うこと。砂を食わないと進めないソレイラなど陸に上がったマグロと同じ。是非とも来て欲しいです。そうすれば一億ポイントが得られるのに……。


 まあ、余程のことがなければそんなことにはならないでしょう。本能で生きてるとは言え、いや、本能で生きて来たからこそ、危険はおかさない。いつものように、安全に獲物を狩って来たからこそ生きてこられたんですからね。


「育ちも育って一千年、ですか。わたしには理解できない生き物です」


 もはやちょっとした山脈ですね。長さが一キロとか、端が見えませんよ。


 岩石地帯の端に立ち、ソレイラを眺めながら感想を口にした。


「マスターは、これを見越して岩石地帯を選んだのですか?」


「ええ。そうですよ」


 一年間はダンジョンから出ることはできない。侵入することもできない。つまり、フィールド内はダンジョン内と言うこと。外に出てないと言うことです。


 だったら岩石地帯じゃなくてもいいのでは? と問いたくなる人はいるでしょう。わたしも当初は草原か森にしようとしてましたからね。


 では、なぜ考えが変わったのか。それは、ガチャガチャをして、重力魔法と異次元工房って、もしかして当たりでは? と、フィールドに出て思い始めたからです。


 言ったようにガチャガチャから出たものはすぐには使えないものばかり(風子さんは別です)。ですが、今は使えないからと言ってこの先も使えないってことではありません。


 重力魔法で岩石を動かし、セメント(ポイントで取得できます)で固めればポイントを使わずダンジョン製作できますし、フィールド一択に絞れば少ないポイントで改造できます。


 異次元工房も材料があれば作れる。それは道具だけじゃなく料理にも当てはまると言うことです。そして、ポイントを使わなくても材料があるじゃないですか。セーフティールームに。一年間ならどんなに使ってもなくならない。使用したら補充される。それらを缶詰すれば日持ちもする。お酒だって作れちゃうのです!


「問題は人材。いや、迷宮獣をどれだけ集められるかですね」


 低級の迷宮獣、ゴブリン程度なら毎日一体タダで得られますが、はっきり言って戦力外だし、頭も悪い。成長率だって低い。


「そもそも外敵が侵入してこない時点でレベルアップなんて望み薄ですからね~」


 まあ、訓練でもレベルアップはしますが、どう頑張ってもレベル3が精々。それでも一般人に劣ります。


「ですが、これもやりかた次第考えた方次第です」


 ポイントを使わず365体の迷宮獣が手に入れられ、強力な武器を装備させればよい。十二分に一人の兵士として数えられます。


「それだけの数に武器を行き渡らせることができるのですか? セーフティールームの倉庫にある数では三分の一しか装備できませんよ」


「ふふ。抜かりはありませんよ。そのためのポイントの実です」


 味がないのは想定外でしたが、食材の一つと考えたらどうとでもなります。


 ポイントの実を豆と見立てれれば無限に……広がるほど腕はよくありませんが、それでも何通りかの料理は直ぐに思い浮かべられます。これでも自炊で生きて来たんですからね。


「迷宮獣を出す前にポイントを使って迷宮獣を創り出しますか」


 さすがにタダでもらえるような迷宮獣でどうにか出来るほど、ダンジョンは甘くはありません。わたしが目指すのは個人戦ではなく組織戦。軍隊――いえ、軍団を創り上げるのです!


「まずは第一軍団を纏める将軍です。さくら子さん。ニャコルトをお願いします」


 わたしの考えた100ポイントで創れる最大の迷宮獣ニャコルトを情報共有化能力でさくら子さんに創るよう指示を出した。


「マスター。乗りに乗っているところ申し訳ありませんが、ニャコルトとはなんでしょうか? マスターの情報と照らし合わせると、猫魔が一番と言うか、猫魔ですよね、これ。なぜニャコルトになるんです?」


「猫魔よりニャコルトが可愛いからです!」


「アホですね」


 抉るような罵倒に膝が折れそうです。


「い、いいではありませんか! 名前を変えたって! 猫魔よりちょっと大きいし、しゃべれるし、肉球はあるけど、銃を握れる手だし、格闘まで出来ちゃうし、猫魔より優秀だも! もう違う種だもん!」


 違う種なんだからわたしが名付けちゃってもいいじゃないですか!


「で、語尾にニャーをつけると。正真正銘のアホですね」


 ゴフ! 出血多量級の一撃です。


 だって、語尾にニャーは絶対だし。さくら子さんで失敗したし……ガク。 

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