フェリシアン・シンドローム

九條 連 様作


【物語は】


あらすじからしてとても面白そうな作品だなと感じた。物語は、不審な死をとげた兄の死因に主人公が疑念を覚えることから展開していくと考えられる。

書き出しからして最高。どんなドラマが待ち受けているのか、とてもあワクワクする。文体も上手いが、それよりも物語の流れが自然であり、特に会話がナチュラル。こういう上辺のようなような人いるよね、と思わせる部分が多々あり、主人公に感情移入しやすい。


【物語を読んで感じること】


BLという括りではもったいない作品。登場人物がどんな人物なのか分かりやすく、心情以外のちょっとしたしぐさからも、主人公が何を思っているのか分かりやすいように描かれている。とても読みやすく、何が起きているのか想像もし易い。主人公は、周りに本心を悟られないようにしているタイプの人間なのだろうか?駆け引きと感じてしまう部分も、とても面白い。かなりの切れ者であることも、具体的に”こう”という確かな言葉ではなく、描写によって分かるようにしているところに、本格派であることを感じる。

例えば、”サクラが散っている”と明確にいうのではなく、別の表現で表しているという意味合いである。


正確による会話の割合。大体の人がやりがちな”言わせたいことを言わせてしまう”ようなことではなく、その人の立場や目的、性格により会話を決めているのではないかと感じた。恐らくこういうところからも、非常にドラマ性の高い作品だと感じた。あっと言う間に5000字を超えてしまうような、夢中になれる作品である。

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