正しい恋の学び方

鏑木ナチ 様作


───過去の想いは、現実に打ち砕かれ、逃れられないその先に救いを求める。


【物語は】


教師である主人公が、過去に想いを寄せていた先生との進展により変わっていく。二人の男性の間で揺れ動くのは、相手の一人が法的に付き合うことの出来ない学生であるからだと思われる。もし、この彼が学生でなかったならば。生徒でなかったならば、こんな辛い思いをせずに済んだのではないかと、思わずにはいられないが、主人公が”過去に対する憧れ”により選んだ道であることには変わりない。


【学園生活が基盤】


学校と言うところが、この三人を繋ぐ中心点。主人公への気持ちがなかなか恋だと気づかないのは、彼の中の常識に偏見を抱えている為だ。性の多様性とうものは、自分が興味を、持って初めて理解と言う場所に辿り着くものである。彼はまだ学生であり、経験も少ない。特にGLBTと言うのは、カミングアウトをせず、人に気づかれないように過ごすことの方が圧倒的に多い。それは偏見の目から逃れるためである。そのような事からも、彼が偏見を捨てるべきと至るまでが、なだらか(あることをきっかけに気づく)であるのも、至極自然である。


【先生と生徒の書きわけが鬼畜レベルで凄い】


始終、主人公と先生の関係には眉を寄せてしまっていた。ここまで書けるのも凄いと思う。望まない性交は感じようが感じまいが単なる暴行に他ならない。先生の愛情の欠片もない接し方。いつ別れるんだろうか?別れられるんだろうか?この教師、埋めてもいいだろうか?そんなことを思いながら読んでいたのだが、読み手の感情をそこまで揺さぶることが出来るというのは、秀逸作品であると言っても過言ではない。先生の主人公への態度はほんとに、酷い。ただの、性欲処理の道具。本人も相手のことを尊敬はおろか嫌っているんじゃないだろうかと思える心情で綴られている。


だからこそ、生徒と交わされるコンタクトは純粋なものに感じる。この高低差、早く生徒とくっつけばいいのにと、スコップを片手にしているような気分で読んでしまう(先生を埋めるためですw)

これはほんとにすごい。とにかくいつ幸せになるんだと、読む手が止まらない。登場人物の落差、感情の高低差と言う意味でも、色々勉強になる作品だ。悪い人というのは、書けそうでなかなか書けないものなのだ。役者でも、悪役が出来ると本物と言われているくらいなので。


【主人公が選ぶ道の先】


この物語で一番心に残ったのは”自分は穢れている”という部分。もっと幸せな未来を描いて、交際を受けたはずなのに、現実は悲惨なものだった。これは現実にも言えることなのではないか?


昔憧れだった人、熱中したもの。冷めて見れば、とても色あせている。何が良かったのか分からないこともある。その辺については作中でも描かれているが。それはきっと、恋に恋しているというものなのかもしれない。大人になれば冷静に物事を考えることが出来、何が幸せで、自分が何を求めているのかも理解することが出来るようになる。この物語は、教訓でもあるとわたしは思っている。


憧れだけで、真に相手の姿を知らず選んだ道の先に、幸せはあるのだろうか?

そして、幸せとは案外身近なところにあるのではないだろうかと。


自分の人生を冷静に振り返ってみることの出来る作品でもあります。

青春の中にある、純粋な日々。

不純まみれな自己中な人間。

どちらも現実。良いものだけ見ていてはきっと幸せにはなれない。

わたしはこの物語から、そんなことを学びました。


是非、お手に取られてみてくださいね、おススメです。

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