Where is
怜 様作
───輪の中の孤独、輪の外の孤独、最後にたどり着く場所
【光と予感】
物語は、主人公が唯一落ち着ける場所とも言える、図書室から始まる。彼は本を通し、父や母との温かいエピソードを思い出す。しかし、それは自分のいま置かれている、お世辞にも幸せとは言えない境遇を思い出すきっかけとなった。突然どん底に落とされ、それでも環境に馴染もうと健気に努力したが、その努力は周りによって手折られる。結果、残ったのは”輪の中の孤独”を感じ、一人でいることを選んだ自分であった。
しかし、そんな彼に突然の来訪者が。自分とは正反対にも感じるその相手は、これから主人公に多大な影響を及ぼすのではないかと言う”予感”を読者に抱かせる。
【彼との会話が読者に与えるもの】
二人の出会いのシーンには二つの印象に残ることがある。それは、主人公が”初めて他人に興味を示す”という”非日常”と、主人公と同級生の野球部員が、本の内容に触れる部分。単なる質問のように見えるが、何かを調べているのだろうかとさえ、思わせる。冒頭のページの両親の離別について詳しく述べられていないことから、何か関係があるのではないかと、深く疑りたくなるのだ。タグには記載されてはいないので、この時点でミステリー要素は含まれてはいないのだろうと思いなおすが、とても続きが気になる作品であることは否めない。
【戸惑い、恐怖、本心それを繋ぐとき】
恋と自覚した主人公は、淡い恋心を抱きながら、気さくな彼との時間を過ごすこととなる。主人公の心の変化や、自分の本心に気づくまで。彼に想いを寄せる様子などが丁寧に描かれており、応援したい気持ちになりながら、彼の行く先を見守ることとなる。しかし、そんな彼に突きつけられた悲しい現実。主人公と共に落胆してしまうのは、物語に深く入り込んでいるからなのだと気づく。
【自分自身と向き合う時】
一サイドの物語は、相手の気持ちが見えないからこその、不安、切なさなどがある。主人公は自分の想いを断ち切るためへと一歩を踏み出す。この物語は主人公と彼の恋の相手にしっかりとスポットが当たっており、余計な部分が一切ない。好きな人と一緒に居られる時間をじっくりと体感することが出来るのである。それは時に、胸を締め付けられるような切なさ。自分では気持ちのやり場がなく、ただただ感情を高ぶらせ、涙する。彼の言葉に一喜一憂するなど。読者は主人公の気持ちに入り込み、感情を揺さぶられることは間違いない。
【出逢った彼らは必然なのか、運命なのか】
ネタバレになってしまうので詳しくは書かないが、二人は互いに人には言えない過去を抱えていた。主人公はずっと言えずに、知られたくないと心の奥底にしまい込んでいた。
しかし、それを告げるチャンスは訪れる。好きとは何か?愛とはなんなのか?
相手を受け止めることで、真実の愛にたどり着いた二人は、今までよりも深く心が結びついているに違いない。
彼らがゆっくりと歩み寄り、それが愛に変わっていく様は、涙なしでは読むことはできません。純愛とは、互いを心の底から愛し大切にするという事であって、身体の結びつきがないという事ではない。
本物の純愛がここにはあります。
是非、お手に取られてみてくださいね。
最後まで彼らがどうなるのか目が離せません。(読了前に着き、ハッピーエンドかはまだわかりません)
ぜひ、その目で確かめて欲しい。おススメです。
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