君の想いをきかせて
かにゃん まみ 様作
───読んでいるうちに、タイトルの深い意味に気づく
【分かりやすすぎる叔父、ひた隠そうとする甥】
性格による行動にリアリティを感じる作品。あるトラウマを抱えている男子高校生が、両親を失うことで独りぼっちになってしまう。親戚がいるにも関わらず、施設に預けられることになってしまいそうなその彼に、手を差し伸べたのは優しい叔父だった。嬉しい反面、抱えたトラウマのせいで距離を置くしかない状況。理由をしらない叔父は、次第に自分が嫌われているのではないかと思い始める。
それでも、歩み寄りたいと考えていた叔父に突きつけられる現実。
ショックを受けていた彼に、想定外の幸運をもたらす。
【叔父に萌えを感じてしまう】
三章後半までは、方向違いな互いの想いを切ないな、と思いながら読み進めることとなる。この物語の叔父は、相手の気持ちを大事にする性格の持ち主である。何かあれば、自分が悪いのではないかと考えてしまうところもある。思慮深いが、とても分かりやすい性格の為、心ここにあらずと言う状況になると、目の前の出来事にすら気づかない。甥の言動一つで一喜一憂する様は、とても萌える。料理に手を付けて貰えなければ、しょんぼりしてしまうし、相手が笑えばとても嬉しそうだ。大人ではあるけれど、そういった素直な反応は、可愛らしく目に映る。そのため、甥が彼を傷つけないようにと振舞う場面は、なんだか笑みが零れてしまう。
【甥の苦しみ】
どんなに好意を寄せていても、距離を縮めることが出来ない甥。理由を彼に言えるはずもなく、葛藤していく。もし大好きな人に触れることすら出来なかったら、どれだけ辛いことだろうか。本当は傍に行きたいのに、行くことが出来ず現実的な距離感に、心の距離感を重ねてしまう。言うことが出来ないからこそ、誤解をさせているのではないだろうかと、苦しみがさらに積み重なっていく。
【この物語の凄いところ】
まさに伝えたいのはタイトルの通りなのだと気づく。心理に重点を置いた作品であり、切なさに胸が苦しくなることも多い。この物語では、二人が自分自身と向き合い、相手を思いやるという事に重きをおいており、やたら外野がでてややこしくなるという事がない。そのため、どうなるんだろうか?トラウマから解放されることはあるのだろうか?など、二人の行く末をじっくりと見ることが出来る。
【彼らの周りの人々】
全体的にはシリアスではあるものの、日常の一コマとして職場の仲間との交流の場面もある。
しかし、そこでは自分の性別により、嫉妬や葛藤していく姿が見られ、それは重要なシーンだと感じることが出来る。
なかなか結ばれることがない二人ではあるが、だからこそゆっくりと心の距離を縮めていく様子が丁寧に描かれている作品であることは間違いない。
最後まで、どうなるのか分からないハラハラ感。もしかしたら途中で諦めてしまうのでは?と思う不安。
しかし、幸せを祈らずにはいられない甥の恋。
一緒に、最後まで見守ってみませんか?
ここには優しくて、胸が締め付けられそうな恋が存在します。
是非お手に取られてみてくださいね。おススメです。
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