十年目の恋情


まぁ 様作


───相手の感情や必死さを表現することに長けている作品


【珍しいスタイルが印象的】


この物語で、最初に感じるのは”周りによって浮き彫りになる主人公像”。これだけを読むと、何が凄いんだ?と思われるかもしれないが、通常は視点になっている人物の思想や行動により、その人物がどんな人物なのか、印象が確定する。しかし、この作品は周りの反応や、それに対する主人公の言動によって”人物像”が浮き彫りにされていくのである。こういうスタイルは、あまり見かけない上、意外性があるのでとても面白いと感じた。例えば、噂話。母親の対応、友人とのスキンシップ、自分に好意を寄せる相手。彼らから投げられる言動によって、はじめてわかるのだ。


【予想のつかない展開】


上記の理由により、主人公の行動を予測するのが難しいという効果がある。そのため、主人公にとって困る展開が訪れる部分にも関わらず、思わず笑みが漏れる。なにこれ、面白い。がその時の率直な感想だ。小説で受け身の状態を作るのは、テクニックがないとなかなか出来ることではないので、無意識なのであれば是非とも大切にして欲しい個性である。


【個性的な登場人物】


個性的ではあるが、とてもナチュラルである。年相応の考え方、行動が基盤になっていて、この物語では”日常”を丁寧に描いている。一見何でもないシーンに見えるかもしれないが、それは登場人物たちがいかに、”生活”をしているのか、”人と関わっているのか”を読者の身近に感じさせるものであり、主人公に好感を抱かせるものでもある。


【主人公、読者の何故は解決される】


主人公サイドで見ていた相手は、視点が変わると印象が変わる。

年相応らしい無茶ぶりに出る、主人公に想いを寄せる高校生の男の子。主人公サイドでは必死さ、若さゆえというのが、特徴として目立つ。しかし、視点が切り替われば、その心情により健気さ、一途さが伝わってくる。真っ直ぐに主人公に想いをぶつけ自分に振り向いて欲しいと、努力する様は切なささえ感じる。


【翻弄される主人公】


初めは、勘違いしているのでは?と感じていた相手の気持ちを、次第に本気と受け取っていく主人公。それでも、年の差、同性、ということで葛藤してく。しかし、この物語には偏見による”同性だから”というものが感じない。あくまでも、恋愛は自由であり、そこに偏見があるわけではない。自分の問題として向き合っているという印象を受けるため、どんな答えを出すのか?と言うところに一番関心がいく。


互いの気持ちが少しすれ違い、複雑に絡み合う部分がとても魅力的に感じる作品である。

まだ半分ほどではあるが、これだけの魅力の詰まった作品である。


二人がラスト、どうなるのか?

それは是非、あなたの目で確かめていただきたい。

おススメです。お手に取られてみてくださいね。

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