ロリ狐ン賢者はこの胸糞世界を生く

黄昏狐

第0話 ポンコツ神様の言う通り

 虚無に溶けていた魂の残滓から、意識が形作られる。

 マーブル模様のように渦巻いていた混沌から、神の手で掬い上げられた。

 やがて掠れ崩れていくはずだった魂に、手が差し伸べられる。

 温かな光が流れてきて、泥のような混沌を洗い流すと、そこに小さな肉体うつわがあった。

 強く触れば壊れてしまう魂を、神はそっと手に取り器に収める。

『──ここに約束は成る』

 神の声に気が付くと、器に収められた“我”は違和感に声を上げた。

「──話が違う!」

 明らかに小さな両手が視界に入る。

 自らが上げた声の高さにまた驚く。

 魅惑のロリプニボディのモフ耳モフ尻尾幼女がそこにいた。

「こんなお願いはしていない、何かの間違いだ!」

『──は? 何言ってんのお前? 狐娘になりたいと──』

「我は狐娘を愛でたいと言った! なりたいとは言っていない!」

『………………!』

 深読みし過ぎた神は、てっきり狐娘になった自分を愛でたいものだと思い込んで、掬い上げた魂を転生させてしまったのだった。

「クーリングオフは効かないのか!?」

『我には肉体に入った魂を抜く権限がない。あきらめろん』

 きっと神はテヘペロしているに違いない。

「じゃあ何か能力詫び石寄越せ!」

 幼狐は凄んで見せるが、プリプリ怒る姿は可愛らしいの一言に尽きる。

『ソシャゲか!? さっさと去ね!』

 逆ギレ神は幼狐を自分が管理する世界に送り出してしまった。本来なら要件を説明して力を分け与えるはずだったのに──。

『あっ……俺知ーらね』

 何の力もないただの素の幼女を送り出したことを思い出すのはそれから少し後のこと。



 

 


 

 

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