第十一話 ハンターズギルドと匂い

貴族女性さんとわかれて、ハンターズギルドに到着する。

到着したはいいのだけど・・・速攻でハナを塞ぐことになった。


「なにこの・・・なに?」


「うう・・・気持ち悪くなりそう・・・」


入口にたどり着くや否や、漂う異臭。

そう、クサいのだ。


考えてみれば当然かもしれない。

なにせここに来るのは腕自慢の荒くればかり。

汗臭くなるのは当たり前と言えば当たり前。


その上、ここでは魔物や魔獣、動物の解体も行うし、

事前に解体されたものの売買だって行われる。

流石に解体自体は別の場所で行っているだろうけど、

それらを持ち込んでいるのはここからなのだ。

腐臭や血臭、獣臭さなどが漂っていたっておかしくはない。ていうかするし。


そんなのが混ざり合ったかほりが、入口から漂ってくるのだ。


「どうしよう・・・入る・・・?」


「入りたくないけど・・・。

 7日間お世話になるの・・・ここだよ・・・?」


そう。

ハンターズギルドの詰所にお世話になる手はずなのだ。

だけどこれは。


「と、とりあえず中に入ってお話だけでもきいてみよう?」


「うう・・・、マスクかなにかもってくればよかったぁ・・・」


仕方ないのでマントをうまい具合に口と鼻を抑えるようにまきつけるステラ。

あ。器用。私も真似しよう。





中に入るとやっぱりその匂いは顕著だった。

今はさほど人が居ないようだけど、

受付を除けば筋骨隆々な腕自慢っぽい男性が多い。

おもわずはなをつまみたくなり、口と鼻を布で抑えながらきょろきょろしていると、

受付のひとだろうか。が手招きしている。


なんだろ?と二人で首をかしげながら移動する。


・・・あれ?


「あれ。匂いがおさまってきた?」


受付のほうに進めば進むほど、

なんというか、よどんでいた空気が浄化されているような気がする。


「あなたたち、ここははじめてね?」


受付さんが苦笑しながら声かけてきた。


「あ、はい・・・、そうです」


受付さんと会話できる距離にもなると、

もうあの匂いはほとんどしなかった。はて、これはいったい。


「臭かったでしょ?魔物や魔獣の放つ匂いもそうだけど、

 それ以上に何日も体を洗っていないハンターの体臭とかのほうがきついのよね」


受付待ちでもしているのだろうハンターたちを見据えながら、

はぁ、とためいきひとつ。

きっと受付している間、その体臭に鼻をつまみたい衝動と戦ってるんだろう。


「でもなんでここは?」


「ふふ、受付周囲には、消臭の魔道具が設置されているのよ」


魔道具?またあたらしい言葉が出てきた。


「その道具のおかげでここは臭くないんですね」


「えぇ。そうよ。

 見たところ冒険者にもハンターにも見えないけど、

 何かの依頼できたのかしら?」


「あ、いえ、7日間ほどこちらでお世話になる予定の・・・その」


「ああ、召喚者さんね。

 それにしても随分若いわね。13歳くらい?」


え。そんなにわかく・・・というか子供に見える?私たち?


「じゅ、15です!」


「多分おなじくらいです」


ステラはちゃんと分かるみたいだけど、私は記憶がない。

ステラと同じくらいだと思うので、たぶん15歳かな?


もしかしたら受付さんの言うとおりの年齢かもしれないけど。


「なるほど。それでも若いことに変わりはないわね。

 さっそく討伐依頼を受けるとかかしら?」


「いえいえいえいえいえ!無理無理無理無理無理!!」


「討伐とかあの怖い化け物と戦うってことですよね!?むりですーー!!」


「あ、え、あ、はい。うん、わかった、分かったから落ち着いて?」


あの人工ダンジョンでの出来事を思い出し二人してずざざっと後ずさりながら手と首をぶんぶんとふる。

あんな思いはもうたくさん。


「となると、もう詰所で休憩かしら?」


「いえ、とりあえずギルドを回っていこうかなって思いまして」


「なるほどね。それはいいとおもうわ」


うんうんと頷きながら、

軽くこのハンターギルドの説明もしてくれた。

受けた説明はギルドマスターさんのと大差なかったけど、

どこで依頼がはりつけられ、どこで受けて、

そしてどこで報酬を得られるかなど、

あと依頼書の見方などなど、色々と教えてもらえた。


「それから、依頼はでていなくても、魔物や魔獣の討伐には報酬が出るの。

 その際に、討伐証明のできる討伐部位を持ってきてもらう必要があるけどね」


魔物や魔獣は、基本的に人を業敵として襲い掛かってくる。

或いは害獣などもそうだけど、倒せば報酬が貰える。

ただ、討伐したのをそのまま持ち帰るなんてことは余程の人でないと出来ない。

1匹とかだけならできるだろうけど、何十匹にもなるとそうもいかない。

なので、倒したという証明ができるように、討伐部位なるものを持ち帰って、

ハンターギルドで清算をすることでお金を得られるらしい。

なお、前に遭遇したあの犬の化け物・・・確かコボルトという名前だったかな。

は、尻尾と耳が討伐部位にあたるそうな。両方剥ぎ取らなければいけないらしい。


「もちろん、依頼として出されているばあいのほうが、報酬は上だけどね?」


討伐報酬は固定金額になるけど、依頼で討伐を求められる場合は、

基本的に討伐報酬に上乗せされた金額になる。

なので、普通に討伐するより実入りが良いために、依頼の取り合い奪い合いになることが多いらしい。

まぁ・・・わたしたちには無縁だけど!


「ひとまずはこんなところかしら」


ちなみに、魔物や魔獣について、や、その分布図などは、

ここの資料室に保管されており、ギルド登録者は閲覧自由だそうだ。

資料と言えば。


「そういえば、クラスについても調べられますか?」


「クラスについては統括ギルドの資料室ね」


あ。統括ギルドのほうだったのね


「それじゃあ戻る?」


「ううん、このままほかのギルドも見学しよう?」


「そうだね。その、色々ありがとうございました」


「いいのよ。この時間帯だと依頼も来ないし、

 ハンターも討伐に出ちゃってるから暇だしね」


お互いに挨拶を済ませ、

臭エリアを足早に駆け抜けて、外へと出る。


「さて、それじゃあ次はー・・・」


「ね、セーラ、魔法師ギルドにいってみない?」


「うん、いいよ。幸い近いみたいだし」


「魔法、使えるようになるのかなぁ・・・?」


そういえば魔法というのがあるんだっけ。

ちょっと楽しみになってきたかも。

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