リ・デスティ 勇者に選ばれなかった少女と、選ばれてしまった少女の物語
蒼鳥マウス@ネコ耳
第一章 召喚
第一話 始まりの空間と出会い。
夢の中で目覚めるような、不思議な感覚だった。
今、ちゃんと目が覚めているのか。
それとも、まだ夢を見続けているのか。
そんな、あやふやな状態。
(夢ならそれはそれでいいかな)
などと呑気な事を考えながら、周囲を見渡す。
見渡してから唖然とした。
唖然として、あ。これ夢だわ。とはっきりと意識した。
周囲、『360度』満天の星空なのだから。
そう、足元・・・もとい床らしいもの、というか床がない。
かといって何かが床として存在するのは感じている。
それはさておき、その下にも星空が広がっている。
ガラス張りだとしてもおかしい。
そもそも360度星空とか、宇宙に投げ出されでもしたのだろうか。
おかしな夢を見ているものだ、などと呑気に構えながら、
ふと、自分以外にも人が居ることに気付く。
自分同様、今目覚めたのだろう。
頭を振って状況確認をしている人。
ただただ唖然としている人。
叫びながら走り出す人。
叫ぶのはやめてほしい。
というか、夢にしてはリアルだ。
おかしな状況にリアルというのもおかしな話だが。
ためしにユメかどうかを確認するおなじみの手段。
頬をつねる。
「いった・・・っ」
痛かった。
え。痛い?
あれ。じゃあこれ夢じゃない?
「だ、だいじょうぶ?」
「え?」
近くに居たのであろう、
歳のころは・・・私と同じくらいであろうか。
15,6歳くらいの女の子が、心配そうにこちらの顔を覗き込んでいる。
「痛がってたから・・・怪我でもしているのかなって思って」
「あ、うん、夢かどうか確認するのにつねってみたの」
「あ、なるほど」
言われて納得した女の子が、
私と同じように頬をつねりだした。
「痛い・・・」
「あ。やっぱり痛いよね」
「うん。夢じゃないってことかな?」
非現実的な現実であることを理解した私たちは、
はて、これはいったい?と首をかしげる。
まぁ・・・。
1番あり得る状況としては。
「あの世?」
「しんじゃったってこと?」
天国なのか地獄なのかわからないけど、
ともかくそれくらいしか思いつかない。
或いはそんな摩訶不思議な部屋にでも
寝ている間に押し込まれた、という可能性もゼロではないけど。
「短い人生だったなぁ・・・」
「いきなり悟らないで!?」
などと冗談めいてこれまでのことを走馬灯のように思いだ・・・
・・・
アレ?
「? どうしたの?」
はて。
「えーと。落ち着けー私」
ここで目覚めるまでの私はー。
・・・
・・・
・・・
な、なにも思い出せない!
「えーと・・・」
「?」
「アナタのお名前、伺ってもいい?」
「え。私?」
「ウン」
「私は、須藤 刹那。アナタは?」
「あ。やっぱり名前、あるよね。うん」
「??」
「えっとね・・・そのね・・・」
だんだんと焦りが全身を駆け巡る。
嫌な汗が噴き出てくる。
「思い出せない・・・」
「・・・え?」
ここで目覚めるまでのことが思い出せない。
今まで何をしていたのか。何をしてきたのか。
というか。
「名前も思い出せない・・・」
「えぇ!?」
なにひとつ、思い出すことができなかった。
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