神為る土地で―起源観測―
N.C
覚醒前夜
12月24日、協定世界時の0時。
その日、世界は分岐点に立った。
―――全世界の老若男女の諸君、ご機嫌麗しゅう。
加工された中性的な声がありとあらゆる放送を奪い取って、それは始まった。
―――我々はしがない科学者の集団だ。少々風変わりな研究が実を結んだゆえに、今回諸君らに体感していただこうという次第である。
後で実しやかに流れた話だが、この声明を出したのはどこの国にも依存せずとも実力で成果を出し続けた天才たちの集まりだったという。しがないなどと笑わせる話だ。
―――名称は敢えて与えていない。強いて言うのなら我々の崇敬の系譜であり、諸君らの憧憬の結晶だ。
それは後に、『覚醒遺伝』と呼ばれる人為的な異常現象だった。
人に、神話や伝承で伝えられる神格や英雄の能力や性質を押しつける馬鹿げたもの。
―――それを踏まえて、我々はこの技術をこれから恒久的に世界に提供しよう。人類全てに大いなる力を与えよう。
誰も求めていない力を押しつけられて、世界がどうなったのか彼らは知っているのだろうか? 力に溺れた者によって絶えず壊される世界のことを、彼らは少しでも考えたのだろうか?
―――我々は神には為れない。
嘲りを含んだその声は、一体全体誰に向けたものだったのだろうか。
―――だからこそ。諸君らを神格に。あるいは英雄に、祀り上げよう。
だがこれは間違いなく言える。
彼らは私たちを祀り上げたのではない。
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