人気読者モデルが彼女に告白したら速攻で「キモい」と言われた理由

「付き合ってください!」

「キモい」


 玲奈の即答に、僕は愕然とした。しかも彼女の顔は、この世にないものを見ているかのように、おびえていた。


 2人きりの学校の屋上で、僕は無機質な風に吹かれながら、告白に失敗した原因をつかみかねている。


 この僕、杉井凛音(すぎいりおん)は高校2年生でありながら、読者モデル。ビジュアルなら、毎日自分なりに磨いてきた。我ながら、今や所属する雑誌『Sweeter』では男子モデルの中で上位人気と言われている。


 その僕が、なぜいきなり好きな女の子に「キモい」と言われなければならないのか。ワケが分からなかった。しかもそんな怯えた表情で。


 もしかして今日になって、僕の顔は、まったく別人のブサイク顔に変わってしまったというのか。気になってついつい顔中を触るが、特に変わった様子はない。


「あの、もしかして僕の顔どうかした?」

 僕は困惑しながら玲奈に聞いてみた。彼女は何も答えずに僕の頭の上を指差す。

「……いる」


 何がいるのかさっぱり分からない。もしかして僕の頭上にUFOでも現れたのか。


「頭の上、這っている」


 僕の髪の毛を、何が這っているというんだ。気になって頭を下げ、軽くはたいてみた。

 頭から黒い物体がひとつ落ちる。背中から落ちたそいつは慌てて起き上がる。体は赤黒っぽくてシャープ。頭からは二本の触覚、体の両サイドからは六本の足。


 そして足をせわしなく動かしながら、ジグザグに動いていく。

 ソイツが何なのか、僕には分かってしまった。そのときには、顔から血の気が引いていた。


「ゴキブリイイイイイイ!」


 僕は無我夢中で叫びながら、階段の踊り場に飛び込んだ。

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