カツアゲにあったけど……
「金、出しな」
「か、金ですか?」
「とぼけんじゃねえよ。次山高校は芸能人とか社長の子どもがたくさん通う坊ちゃん校だろ。そこの制服着てるってことは、お前もそれなりに持ってるってことじゃねえのか?」
こんな感じで僕は、見知らぬ他校の不良からお金を要求されていた。場所は駅の入り口の近くにある自転車置き場。ここまで連れ込まれたら、ただならぬ状況に気づいてくれる人はいない。いても見て見ぬふりされてしまう。
「おい、何モタモタしてんだ!」
「す、すみません。今出します」
僕は左のポケットから茶色の財布を取り出し、お金を指で勘定した。
「何加減してんだよ。そこに入っているお札全部出せ」
不良からのさらなる脅しに、僕は萎縮した。仕方なく財布に入っていた3万円すべてを取り出し、奴に差し出すことになった。不良は4万円を素っ気なくぶんどり、何も言わずに走り去っていく。
そんな怖い体験に脳内を支配されたまま、僕は帰宅した。
あらためて左のポケットから財布を出し、中身を見てみると、本当に中身は空っぽだった。
「よかった~!」
僕は誰もいない部屋で、安堵の声を上げた。
右のポケットから黒い財布を取り出すと、中には3万円が入っている。お札を半分だけ取り出すと、僕は財布とともに顔をうずめ、無事をたたえる。
「そうだ。とられた方のお札、補充しなきゃ」
僕は勉強机の下に潜ませていた装置を取り出し、部屋の真ん中にあるミニテーブルに乗せた。その装置は黒いローラーが縦に2つ並んでいる。僕は勉強机の引き出しから1万円札と同じサイズの紙を3枚取り出し、こちらもミニテーブルに置く。
白紙をローラーにくぐらせると、一万円札そっくりのデザインが刻み込まれていった。
「これで明日からも、カツアゲに襲われても大丈夫だね」
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