おっさん高校生、青春ラブコメをやり直す 〜 幼馴染が結婚の知らせを送ってきたので「あの頃に戻れたら、ぐいぐい行くのに」と叫んだ結果 ⇒ 戻ってきました平成に 〜
竹井アキ
第1話:ぐいぐい行くぞっ!
俺は言い訳の天才だ。
昔、好きだった幼馴染から結婚を知らせる手紙が届いたとき、ぽろぽろと涙がこぼれた。
彼女とは幼稚園から高校まで一緒の学校に通っていた。
ずっと一緒の時間を過ごしていたのに、大学入学を機にまったく会う機会がなくなってしまった。
大学で忙しいから、バイトで忙しい、仕事を始めて忙しい、昇進したから忙しい、なーんてことを自分の中で言い訳にして、連絡すら取らなくなっていった。
いつしか、好きだったかどうかなんて気持ちも、
年齢的にも結婚して不思議じゃない……むしろ遅いぐらいの年齢だ。
今更俺が、あ〜だこ〜だ言う方がおかしい。
なのに──
「なんで泣いちゃうんだろ? かっこわりー」
封筒の中には、俺の知らない結婚相手と取った写真が入っていた。
「どっかで見たことのある顔な気もするが……」
まぁそんなことは今はどうでも良い。
ショートカットのよく似合う彼女は、今もまだかわいくて、美しかった。
ただ、無理矢理笑顔を作っているように見えるのは、俺の都合の良い想像だろうか?
「……ってか、こんなの送ってくんなよなー」
知らないところで勝手に結婚してろよな、と思ったりもする。
手紙の内容も形式ばったものではなくて、俺とのちょっとした昔話が書いてあったりするもんだから、余計に昔を思いだしてしまうじゃないか。
「チクショーーーーーーーーーーーー!!」
近所迷惑もかえりみず、俺は声を張り上げた。
なくして分かる大切なものに気がつくのは、やっぱりそれをなくしてからだ。
俺は後悔の天才だ。
取り返しなんかつかないけど──
「あの頃に戻れたら、もっとぐいぐい行くのになーーーーー!」
瞬間──意識がとんだ。
◇ ◆ ◇
「…………」
意識が戻ってきたが、ここがどこだか判断するのに少し時間が必要だった。
混乱の中、自分の記憶を検索し、精一杯考えたセリフを吐き出す。
「……知ってる天井だ」
ってか、おいおいおいおいおいおいおいおいおい!
ここは俺の実家──しかも、もう親も引っ越しして取り壊されたはずじゃ!?
いくらなんでも、おかしい!
「うん、夢だな」
俺、疲れてるんだ。
そう思って夢の中で寝ようとしてみるが、イマイチ寝付けない。
というかカーテンから差し込む日差しがリアルに眩しすぎる。
夢としては欠陥品もいいところだ。全く気持ちよくなーい!!
「くそっ」
毒づいて、起き上がってみる。
「マジかよ……」
リアルすぎて寒気がした。当時の俺の部屋の配置が完璧に再現されている。
「ってことはもしかして……」
机の引き出しの、更に奥をまさぐる。
「うおーーーーー! あの頃のエロ本じゃねーか!」
近所の神社で拾ったりして集めたエロ本がそこにはあった。
デ○べっぴん……ご存じだろうか。
「うううう」
ちょっと感動してしまった。
今度は、鏡を見てみる。
「若い! 若いぞ、俺! 高校生ぐらいか?」
ついでにお約束で、頬をつねってみるが覚めない。
そういう夢もあるかもしれないけど、いくらなんでも感触から何からリアルすぎる。
俺の脳がこんな高性能な夢を構築できるはずがない。
カレンダーを確認する。おいおい平成七年ってなってるけど……まじ?
「そもそもこっちが現実で、社会人になってた俺の方が夢だったのかも」
いや、それもないよな……。いくらなんでも記憶が鮮明すぎる。
うーん、と頭を悩ませていると、自分が寝ていた枕の下に、見覚えのある封筒が挟まっているのが見えた。
「…………」
封筒は、幼馴染が送ってきた結婚のお知らせだった。
「……確定した。確定した。確定した!……」
「……俺、過去に戻ってる……」
少なくとも、あっちが現実なのは間違いない。
万が一、これがリアルすぎる夢なのかもしれないけど、この状況なら俺は決意できる!
「今度こそ俺は、ぐいぐい行くぞぉおおおおおおーーーーーー!」
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