愛と絶望の狭間に猟犬は眠る

水無月冬弥

ユメより醒めて……

序章 ユメに漂う

 現実リアルは息苦しい

 

 大学へ進学しても就職できるかどうかわからない。

 出会いも別れもワンクリックで、絆とよぶには軽すぎる。

 夢は星のように輝いているけどに、星のように届かなくて。

 チートなスキルを持っていないモブな俺たちは、運命という河を渡り切れるかどうかもわからない。

 

 だから、俺たちは夢を追わず、ただ河を漂いながら、仮初めのユメを見る。



 ネット小説というユメを

 


 ネット小説の中なら、モブな俺たちも主人公になれる。


 異世界転移してチート能力で俺TUEEEしたり、

 勝手に美少女から好かれてモテモテになったり……、

 現実ではありえないストレスのない楽しい物語が無限に創られていく。


 だから

 

 

 現実リアルに興味も夢も持てない俺は、ネット小説というユメの海に浸っていた。




****


「あんたは、それでええんか?」


 自宅近くの公園にたたずむ老婆が俺に向かってそう語りかけてきた。

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