成長期、モテ期、三角定規

名取

一難去ってまた一難



 男子にとって一大イベントがあるとすれば、それは年に一度のバレンタインデーと、そして一生に一度(人によっては二度以上?)の「成長期」である。


 まあ、諸々の細かい部分の成長は割愛するとして。


 一番大事なのはそう、


 


 ああ、いったいどれだけの身体測定を女子にからかわれて過ごしたことか。どれだけの前ならえを腰に手を当てて過ごしたことか。どれだけの数のおばちゃんに「あらあ〜〜アキラくん小さくて可愛いわねえ〜」と頭を撫でられ続けてきたことか。

 しかしそんな地獄の日々も、待ち焦がれた成長期の到来とともに終わった。僕も小学六年生。ようやくクラスのほとんどの女子より高い身の長を手に入れた。これでもう、女子からのからかいや嫌がらせはなくなる。


 はずだった。



「おはよ〜。アキラく〜ん」

 


 この頃、通学路を通るといつも、そんな空耳が聞こえる。


 女性の声だ。


 聞いたことがある声のような気もした、でも、誰の声かは全然わからない。


 そして振り返っても、道路には誰の姿も見えない。


 でも僕は感じるのだ、確実に誰かがそこにいる、と——……。

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