107話「排斥派ダンク」
2mを超えているであろう巨漢の体躯・ツルッとした坊主頭をした亜人。見た目は生前の俺や藤原とあまり変わらない人間の男。しかし一目見れば人間を超えた存在であることを思わせるオーラが感じられる。
アレンたちや藤原もそれに気付いてるようで、みんな緊張した顔つきになる。
ダンク 80才 亜人族(超人種)レベル110
職業 大剣使い
体力 12000
攻撃 10000
防御 7000
魔力 8000
魔防 7000
速さ 6000
固有技能 亜人族剣術皆伝 気配感知 怪力 絶壁 見切り 剣豪
大地魔法レベル9 限定進化
パルケ王国で出会ったどの亜人戦士たちよりも強い。たぶん国王のディウルよりも強いかもしれない。他の亜人戦士たちも中々のステータスだ。この危険地帯で暮らしてることが強さの秘訣なのだろう。恐らく日々戦いに駆り出ているのだろう。
「………俺はこいつらをまとめている亜人、ダンクだ。家名は捨てたから名乗らない。それで…お前たちは一体何をしにこんな所まで来た?何やらここに用がある様子だが。それも、同胞を脅してまでここに来させてまで。返答次第では穏やかに済ませるわけにはいかないぞ、鬼族…」
最後の言葉に威圧がこもっていた。同時に他の亜人戦士たちも敵対する視線を向けてくる。歓迎されていないのも当然か。パルケ王国にいた連中と違って、どいつもこいつも血の気が多いように見える。確かに返答次第では血が流れることになりそうだ。
「私はアレン。金角鬼種。ここに来たのは、この辺りに生き残りの仲間がいるって聞いたから。お前たちが捕らえているって聞いたから」
アレンが一歩前に出てそう主張する。ダンクはじろりとアレンに目を向ける。金角鬼…と小さく呟くと目を険しくさせる。
「そうか……お前は、姉上を殺したあの……っ」
ダンクの存在感が膨れ上がるのを感じる。少し感情的になってるようにも見える。センやルマンドが小さく息を呑む。藤原も冷や汗を流してアレンとダンクを見つめている。
「私たちがここに来た理由は一つ、仲間たちを解放しに来た!ここにいるってことはもう分かっている。だから、仲間たちをここに連れて来て!」
「…………」
「仲間たちは今どこにいるの?何かさせたりしてるの?何人捕らえているの?みんなは無事なの?答えて!!」
アレンは矢継ぎ早に問いかけて仲間たちの解放を求める。
「鬼族なら、確かにいる。この里に3人いる」
「…!本当に3人だけ?お前たちはけっこうの数の鬼を捕らえたって、亜人の国王から聞いた。本当に3人だけなの?ちゃんと答えて!」
アレンは険しい顔でダンクに詰問する。ダンクは少し沈黙した後、重々しく答えをくちにする。
「ここに来た当時は……6人いた。奴隷としてここに連れて来た。しかし少し前に…3人の鬼たちが命を落とした――」
それを聞いた瞬間、アレンは飛び出していた。両手に高密度の雷を纏って爪を生成する。
「ああああああああ!!」
怒りの咆哮を上げながら、殺意がこもった爪撃をダンクに繰り出す。
「…っ!!」
対するダンクは咄嗟に後ろへ跳び、同時に背中に差していた大剣を抜いて、剣の腹でアレンの爪撃を受け止めた。
火花を散らしながらダンクは後退していく。
「ダンクさん!!」
亜人戦士たちが殺気をアレンに向ける。武器を手にして後ろからアレンに攻撃しようとする。
それを見たセンたちが奴らの前に立ち塞がり、威嚇する。両者とも睨み合った様子で立ち合っている。
その間にアレンとダンクは再びぶつかり合いに出る。
「…………(バチバチバチ!!)」
「…………」
アレンの雷拳とダンクの大剣が激突する。互いの一撃は拮抗して鍔迫り合う。
「………!」
押し切れないと分かったアレンは後ろへ跳び下がる。しかし大した奴だなダンクは。まだ進化していないとはいえアレンの全力パンチをしっかり防いでやがる。
それにしてもあいつ……
「よくも、仲間たちを……!!」
「待て……」
アレンは全身に雷の鎧を纏わせて速度を上げる。拳や爪、蹴りを無数に繰り出す攻撃に出る。ダンクは大剣と大地魔法で器用にいなしている。
「甲斐田君、アレンちゃんたちを止めなきゃ!」
傍にいる藤原が俺の袖を掴んで言ってくる。
「甲斐田君なら気付いてるでしょ?あの亜人さん、さっきから…」
ダンクの様子に藤原も気付いているようだ。
「ちゃんと、話し合った方が良い。このままだと殺し合いになってしまうわ。お願い、アレンちゃんを止めて!私は他のみんなを止めに行くから!」
そう言って藤原はセンたちのところへ駆け出していく。俺は再度ダンクを見つめる。そして大技を繰り出そうとしているアレンの前に割って入った。
「…………何のつもりなの、コウガ……ッ」
攻撃の構えを取った姿勢のまま俺を睨んでそう言う。アレンが俺にこんな目を向けるのは初めてだった為、少し気圧される。
「……気付かないかアレン?こいつに殺気が無いってことに」
「…………」
俺に言われてアレンもようやく気付いた。ダンクは目は険しいが殺気が無い。さっきだって大剣に殺気を乗せてなかったし。
「それにこいつまだ何か言いたそうにしてるしさ。もう少し話を聞かね。それでまだ許せないって思ったらまた殴りにかかれば良いからさ。な?」
「…………わかった。睨んでゴメン」
大人しくなってくれたアレンは魔力を解いて拳を下げる。しかしダンクを睨む目はそのままだ。一方センたちと亜人戦士たちも引き下がっている。何故か全員びしょ濡れになってたけど。
「じゃあ、話を再開しようか。テメーらは鬼族を3人殺したのか?それとも死なせてしまったのか?」
俺が仲人的ポジションに立ってダンクたちに問いかける。この意味合いは大きく違ってくる。故意に命を奪ったのか、不本意で死なせてしまったのか。
アレンたちが剣呑な眼差しを向ける中、ダンクは大剣を収めてから答える。
「俺たちは意図して鬼たちを殺してはいない。彼らは…モンストールの群れとの戦いで、命を落としてしまったのだ」
アレンたちは息を呑む。
「戦わせたの?みんなを、無理矢理に?」
センが怒気を孕んだ声で訊く。
「いや、モンストールどもとの戦いは俺たちだけが出ていた。あれは……想定外のことだった。少し前までは里はこことは別のところにあった。そこはモンストールが現れないと思い込んでいた。
だがあの日、モンストールの群れが襲撃してきた。想定外のことだった為、いつものメンバーに加えて鬼たちにも戦わせることとなった。彼らにはそれなりの力があったからな」
アレンたちから怒りの感情が湧き出てくるのを感じる。また爆発するかもしれない。
「あの時戦ったモンストールどもは手強かった。そのせいで同胞が3人、鬼2人が戦いの末命を落とした。そして俺も絶体絶命の危機に晒されてしまった」
「俺はその時死を悟った。だがそんな俺を一人の鬼が助けてくれた」
「え……」
アレンは思わず声を出した。
「その結果、その鬼はモンストールに致命傷を負わされ、命を落としてしまった。俺を助けたせいで殺されてしまったのだ」
アレンたちは唖然としていた。全く想定していなかったことだから無理もない。
「仲間が、お前を助けた……?」
アレンが信じられないといった様子で呟く。ダンクは少し頷いて続きを話す。
「俺は鬼を憎んでいた。姉上を殺されたからな。ここに来た当初も、鬼たちには冷たい目を向けて奴隷同然の扱いを強いていた」
「…………」
「だが、あの出来事があった後、俺は…俺たちは鬼族に対する見方・扱いを変えた。生き残った3人の鬼たちに対する接し方を改めた。生活環境もきちんと整えて重労働を強いることも止めた」
「3人は今どこにいるの?」
「この里の奥地にある家屋で暮らしている。3人とも良好な状態だ」
ダンクの言葉に嘘は感じられない。それを理解したアレンたちの顔から険悪さが少し無くなっていった。
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