103話「亜人族の国パルケ王国」


 時はまた一日前に遡る。


 パルケ王国までの最短ルートをカミラの案内で、俺とアレンたち鬼族と藤原美羽からなる旅パーティは順調に進んでいる。俺たちにとって知らない土地の地理に詳しい奴がいるのは楽で良いな。カミラがここで早速役に立ってくれている。

 しかもこの道は魔物もあまり出てこない、安全かつ近道できるという都合の良いルートだ。お陰でさくさく進めている。

 昼過ぎになる頃にはパルケ王国の国境に入り、そのさらに1~2時間後には王国内目前のところに来た。

 入国するにあたって、カミラは門兵たち(当然だが全員亜人だ)のところへ行って事情を話す。


 「そのことなら今朝に国王様から聞き及んでいる。全員通って良し!」


 ニッズ国王は約束をちゃんと守ったようだな。この国の国王にあらかじめ話を通しておいてるらしい。検査されることなく入国出来た。門を通ったところに案内人らしき亜人がここから王宮へ案内してくれるとのことでついて行くことに。


 パルケ王国。その実態だが国民全員が亜人ではなく、人族も混じっている。このへんはハーベスタンと同じだ。友好国だからこそ共生可能となっている国なのだろう。ここにいる人間のほとんどはハーベスタン出身だろう。

 人族の何人かがカミラと藤原を見るとあっと声を上げてかけよってくる。誰もが昨日の襲撃のことを聞いてくる。カミラは民人どもを落ち着かせて冷静に事の顛末を話す。国が滅ばなかったこと、国王が無事であることに皆は歓喜して藤原とアレンたちに礼を言った。俺にだけは何も言わなかった。コイツ誰?的な視線を向けるだけだった。「認識阻害」で俺がただの少年に見えるようにしてるからだが。

 そんなモブどもを無視して王宮へ移動する。そして王宮前に着く。扉の前に衛兵がいて今度はそいつに連れられて王宮に入る。

 連れてこられた先は大きな会議室みたいなところ。1周50m近くはありそうな円卓席に座って待たされる。数分後ゾロゾロと亜人族が数人入室してくる。全員戦士の様相をしていた。国の要人でありながら全員武闘派に見える。


 「魔族の国の王族って、武闘派ばかりなのか?そういえば竜人族も、戦闘民族ばかりだったな」

 「私たち人族の大国と違って魔族の国は武力が強い者が高い地位に位置する風潮だそうです。滅んでしまった海棲族のことは知りませんが、少なくとも大陸に領地がある魔族国は全て武の面での実力主義国です」


 カミラから小声で教えてもらう。国の要人はとても強い、それが魔族間での常識らしい。ならここに入ってきた亜人たちは全員強いってことか。試しに「鑑定」してみると……確かに強いな。皆強い。中にはセンたちと互角レベルの亜人も何人かいる。

 最後に二人の亜人が入室した時、アレンたち鬼族全員がその二人を注視する。


 「………強い。あの二人がこの国のトップだと思う」


 アレンが小声でそう言ってくる。気になるのでまた「鑑定」してみる。



ディウル 90才 亜人族(超人種) レベル100

職業 戦士

体力 7500

攻撃 5000

防御 8000

魔力 5000

魔防 8000

速さ 3000

固有技能 亜人武術皆伝 瞬足 絶牢 魔力防障壁 炎熱魔法レベルⅩ 

光魔法レベル9 雷電魔法レベル6 魔力光線(炎熱 光 雷) 擬態看破 

限定進化 




アンスリール 25才 亜人族(超人種) レベル75

職業 戦士

体力 7000

攻撃 10000

防御 3000

魔力 10000

魔防 2000

速さ 5000

固有技能 亜人武術皆伝 瞬足 怪力 魔力障壁 雷電魔法レベル9 

光魔法レベル8 魔力光線(雷電 光) 限定進化 




 2mはありそうな身長の白髪混じりの黒短髪がディウルとかいう奴で、ディウル程ではないが高身長の金髪碧眼の男がアンスリールとかいう奴だ。二人ともセンたち四人の鬼族や竜人族のドリュウよりも強い。人族の国王とは比べ物にならないくらいの武闘派王族だなこいつら。こいつらがいればモンストールが群れで侵攻しにきてもさして脅威にはならないだろうな。


 「話は昨日ハーベスタン王国のニッズ国王から聞いている。まずは遠路はるばるご苦労、ようこそパルケ王国へ。私はこの国の王にして、亜人族戦士の序列1位でもあるディウル・パルケだ!」

 「次に、俺はアンスリール・パルケという。この国の王子であり、兵士団団長も務めている。戦士の序列は2位だ」


 亜人族のトップと二番目がそれぞれ自己紹介する。他の王族らしき奴らも自己紹介をしたが全員戦士序列が一桁台だ。


 「カミラ・グレッド、だな?前からお前の評判は聞いている。優れた軍略家であると。顔を合わせるのは初めてだったか」

 「お初にお目にかかります。まずは急な訪問をお許し下さい。今回の訪問はハーベスタン王国側が主体としてではなく、ここにいる鬼族の………」


 カミラがそこまで言った時、ディウルもアンスリールも他の亜人全員がアレンたちに視線を移す。視線を向けられたアレンたちは思わず身構えてしまう。それを見た亜人たちの目が細められる。


 「………いや失礼。鬼族が来ると聞いたときは何かの冗談かと思ったが、こうして本当に…それも五人もいるとは思わなかったんでつい見てしまった。敵意は無い、それは誓おう」

 「「「「「……………」」」」」


 ディウルたちが視線を外すとアレンたちも若干警戒は残しながらも構えを解く。ある意味これは既に戦っている状態なのかもしれない。亜人たちの態度次第ではここが戦場になる可能性だってあるのだ。その時は俺も参戦するつもりだ。


 「鬼族の話は後にさせてほしい。まずは、カミラ・グレッド。ハーベスタン王国の様子はどうなっている?」

 「はい、国の状況は――」


 話はまずハーベスタン王国の状況を尋ねるものだった。国王たちは怪我も無いということに安堵して喜び、多数のモンストールと戦って大勢の兵士と冒険者が死んでしまったことに悔しそうに歯噛みして悲しんでいた。けっこう情に厚い国王なのかもしれない。

 続いて今度は俺に視線を向ける。

 

 「で、そこの少年が、人族の冒険者オウガという者か。Sランクモンストールの群れを殲滅したと聞いたぞ。戦気どころか何も感じないのは妙だが、出来る者なのだろうな。

 ………ところで、何故姿を偽っているのだ?それが本当の姿ではあるまい?」

 「え?何故バレた」


 こいつ、俺の「認識阻害」(=「迷彩」)を看破しやがったぞ。どうやって……………あ、そうか。「擬態看破」という固有技能か。あの国王にはそんな固有技能があったんだったな。そいつで俺を見破ったってわけか。


 「………あんたに隠し事は出来ないな。じゃあ見せてやるよ。ほら」


 そう言って「認識阻害」を解いて正体を見せる。亜人族はもちろん、カミラまで俺の本体を見て驚いていた。そういえば彼女にはまだ見せてなかったっけ。


 「その肌の色……まるでモンストールだな。本当に人族か?」

 「俺はそのつもりなんだけど、違うらしい。色々あって俺は一度死んで復活しているんだ。これはその時にこうなったってわけだ。半分人族ってところかな」

 「………そうか。モンストールではないのなら良い」


 ディウルはこれ以上俺に何も聞いてこなかった。咳払いして再びアレンたちに視線を向ける。


 「では本題に入ろうか。鬼族の生き残りについてだったな――」


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