ひ ね る
火楽
第1章 し つ け
母は蛇口を力一杯ひねっていた。限界まで締めてもちょろちょろと細い水が悪あがきをする。水道代がかかるのに、と苛々していた。詩織の成績に対しても同じだ。今勉強しないと将来困るのよ。あんたの人生は、小学校、中学校、高校、大学…ってずっと続いていくの。お母さんは馬鹿であんたに何も教えられない。勉強できなかった私の分まで頑張って頂戴。詩織は母にワークブックを見せるのが嫌だった。間違うと怒られる。小学生レベルで間違うの?と罵られる。母がワークブックを添削した跡はやたらと乱暴だ。特にペケ印の書き方はナイフの斬撃を思わせる。母は真面目だ。神経質だ。それ故に勉強に煩い。さらに慎重でもあるが、用心や心配の言葉は詩織にとって聞き飽きたものだった。
母親は口を酸っぱくして「後ろには気をつけなさい、振り返りながら帰りなさい」と言う。不審者や通り魔から我が子を守りたいという親心だろう。
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