第83話:激闘・リカルド王太子視点

「弓隊、矢を惜しまず最大射程で面制圧射撃を行え。

 盾隊、生き残ることを最優先に防御に専念しろ。

 槍隊、槍衾を作って敵を近づけるな。

 魔術隊、敵の指揮官を狙い撃て。

 治癒隊、誰一人死なすんじゃない、魔石を惜しむな」


 誰も死なさない、全員生きて家族のもとに帰す。

 それが司令官である俺の責任だ。

 王太子に生まれた俺のなすべき事だ。


 それにしても、魔王軍も馬鹿ではない。

 狡猾としか言えない方法で襲ってくる。

 俺の視界内におさまらないように、広い範囲に全軍を展開している。

 全軍が視界内にいれば、一撃で皆殺しにできるかもしれないのに。

 一撃では無理でも、反復攻撃を繰り返す事で全滅させることができるのに。


「ギャアアアアア」

「ぐゎぁあアアアア」

「ブッふぁあアアアア」

「ギィィィイイイイ」


 四種族が個別に襲っていてくれたからまだ助かる。

 四種族が混成軍になっていたら、強い個体だけを狙い撃ちするのが難しかった。

 種族ごとに分かれているので、最初にリザードマンだけを狙い撃てる。

 我が精鋭軍といえども、リザードマンの尻尾の一撃には耐えられない。

 後は大きい個体のオークとミノタウロスには要注意だ。


 あいつらの体当たりには、槍隊の槍衾も重装甲歩兵の防御力も通じない。

 ミノタウロスの角は重装甲も貫いて一撃で味方を殺してしまうだろう。

 オークの牙も同じで、重装甲を貫いて味方を殺す可能性が高い。

 少々狙いが甘くなっても構わない、魔矢を数多く放って体当たりを止める。

 即死させられなくても突進させなければいい。


「アルメニック、背後は任せた。

 ヴィクターは左を頼む。

 アルバートは右だ。

 リチャードは俺に万が一の事があったら正面を指揮しろ」


「「「「は」」」」


 視界内に入っていない敵を攻撃する場合は、面制圧攻撃になってしまう。

 使う魔力には十分余裕があるが、敵に魔王に匹敵する刺客がいる可能性もある。

 各種索敵魔術を常時起動させているから、不意討ちされる可能性は低い。

 低いが絶対ではない。


 槍衾は十分役立っていて、普通種のゴブリンやホブゴブリン程度なら、味方に近づかせることなく防いでくれている。

 重装甲歩兵の盾隊は、普通種のオークやミノタウロスの体当たりまでなら、ガッチリ受け止めてくれている。

 それ以上の敵は、魔術隊が狙撃してくれているから、陣形は保たれている。

 問題があるとすれば魔力の残量だな。


「伝令、この魔晶石を四方の魔術隊に配ってくれ」


「「「「「は」」」」」


 俺は魔力を充満させた大粒の魔晶石四千個を伝令に預けた。

 これだけあれば今索敵魔術で把握している敵は全滅させられるだろう。

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