第71話:なすべき事・レイラ第三皇女視点
フィフス王家に来てからは、母国にいた時以上に言動には気をつけました。
細心の注意を払って、フィフス王家にも皇室にも悪影響が及ばないようにしてきましたが、今回ばかりはそうも言っていられません。
差し出がましいと思われるかもしれませんが、今はなすべき事をする時です。
リカルド王太子の婚約者ではなく、皇国の第三皇女でもなく、一人の王侯貴族として身命を賭してやらねばならない時です。
「フランシス子爵、皇国に援軍を依頼しようと思っているのですが、どう思われますか、リカルド王太子の邪魔になったりはしませんか」
私は母国にリカルド王太子への援軍を依頼しようと考えています。
母国の首都から魔王軍が大山脈に開けた穴までは三〇〇キロほどです。
国境線からなら最短で一〇〇キロほどです。
隣国との戦争を覚悟すれば、リカルド王太子の遠征距離よりも遥かに近いのです。
問題は侵攻した国の民を養わなければいけない事と魔王軍に勝てるかどうかです。
大陸最強と信じ込んでいた皇国騎士団が、フィフス王国の徒士団の足元にすら及ばないという事を、この国に来て初めて知ったのです。
「残念ながら即答はしかねます、レイラ皇女殿下。
リカルド王太子殿下にも考えておられる戦略があると思われます。
皇国が動くことで、その戦略が崩れる可能性もあります。
まずはリカルド王太子殿下に話をしてからの方がいいとおもわれます」
確かにフランシス子爵のいう通りです。
私の想い考えだけで決められるような事ではありません。
なんと言っても人類の存亡にかかわる大問題なのですから。
「分かりました、勝手に依頼を出すような事は絶対にしません。
私についてきている者にも独断専行はさせません。
だからというわけではありませんが、直ぐにリカルド王太子に問い合わせてください、フランシス子爵」
「分かりました、直ぐに連絡させていただきます」
私には貸し与えられていませんが、旧ウェルズリー国領の総督格で、ウェルズリー城の城代でもあるフランシス子爵には、リカルド王太子と直ぐに連絡ができる使い魔が貸し与えられています。
あまりの待遇の差に少々哀しくなりますが、実質人質の私に頻繁に連絡されるのは嫌なのでしょう。
私はこのままこの城で、リカルド王太子に顧みられることもなく、お飾りの妻として朽ちて行くのでしょうか。
私との間に子供を作らなくても、もうリカルド王太子には子供がいます。
抱くこともなく子供ができなかったとしても、子供ができなことを理由に、公妾の産んだ子供を養子にしなければいけないかもしれません。
いえ、今のリカルド王太子の実力と名声ならば、教会の影響を排除して離婚すら可能かもしれないのです。
いえ、そもそも結婚すらしてもらえずに、婚約が解消されるかもしれません。
私はどうなるのでしょうか。
リカルド王太子ほどの方が私を殺して正室の座を開けるとは思いませんが……
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