第26話:遊撃
魔王軍を撃退して二カ月ほど経って、バナナの栽培も順調な頃、魔境を索敵していた騎士隊が魔王軍を発見した。
「魔王軍だ、迎撃しろ、斃す事よりも生き残る事を優先しろ」
魔王軍を発見した騎士が配下の従騎士に迎撃を命じる。
その声を聞いた他の騎士も配下の従騎士に警戒や協力を指示する。
どの騎士も従騎士も、魔王軍が襲いかかってくると覚悟していた。
成長が早い種族が数多くいる事で圧倒的な兵数がいて、種族によっては人族を圧倒する強さがある魔王軍が相手では、消耗戦は不利なのだ。
人族はできるだけ死傷しない戦い方をしなければいけない。
それが原因で今回は完全に裏をかかれてしまった。
「追え、逃がすんじゃない、魔境の外に出すな、笛を吹け、警戒の笛を吹くんだ!」
索敵部隊を指揮する騎士隊長は慌てていた。
今までの魔王軍とは違い、今度の敵は戦わずに騎士隊の警戒網をすり抜け、魔境の外に出ようとしていた。
このような可能性もあるだろうと、リカルド王太子は全騎士全従騎士に犬笛を渡し、非常時には番犬を通じて魔王軍の襲撃を伝えられるようにしていた。
そのお陰で、魔王軍が魔境の外に出る前に迎撃陣を敷くことができた。
「焦る必要はない、一撃で斃す必要もない、魔王軍に突破されたら、追撃して背後から討てばいい事だ。
追い討ちくらい簡単に敵を斃せる戦いはないからな」
「「「「「おう!」」」」」
魔王軍を王国領内に入れてはいけないと緊張する騎士達に、リカルド王太子は安心できる言葉を選んで指示をした。
索敵部隊を突破するくらい逃げ足の速い敵が相手だ、数が多ければどうしても討ち漏らした敵に迎撃陣を突破されるだろう。
だがそれに慌ててしまったら、死傷しなくてすむ味方まで死傷して戦えなくなってしまうから、だからやり直しがきくのだと言い聞かせた。
「敵はコボルトだ、コボルトに指揮された魔狼、魔狗、魔犬だ、馬で追えるぞ」
リカルド王太子は遠目の魔術で魔境から出てきた敵を正確に把握した。
コボルトロード、コボルトリーダー、コボルトファイターなどのコボルト種が指揮官となり、四つ足で足の速い魔獣を指揮している。
コボルト自身が戦闘よりも速度を優先して四つ足で駆けている。
その行動から一目で速度重視の遊撃部隊だと分かった。
「初撃は最大距離から弓を射る、近づかれたら槍で突け、突破されたら奇数隊は迎撃陣を維持、偶数隊が追撃をする、分かったか」
「「「「「おう!」」」」」
リカルド王太子はこの部隊の恐ろしさを理解していた。
もし王国内にこの敵が入り込んだら、神出鬼没に村々を襲撃するだろう。
そんなことになったら、食糧生産力が激減してしまう。
いや、防塁の薄い村は皆殺しにされてしまう。
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