第8話:籠城準備
リカルド王太子は王都内の状況を確認し、急ぎ食糧の増産を行うことにした。
他の城塞都市や領都もだが、魔王軍に包囲された場合、外部から兵糧を運び入れることができなくなる可能性が高かった。
前世の知識を取り戻したリカルドは、限られた面積内に多くの人が住む王都で、少しでも食糧を生産できるようにしたかったのだ。
「城壁の内側ならば、敵の足掛かりにはならない。
城壁に土を入れた鉢や木箱を設けて、そこでカボチャやジャガイモを栽培する。
城内の家々の横や壁に鉢や木箱を設けて、そこでも栽培する」
リカルド王太子は前世の世界にあった立体栽培を取り入れようとしていた。
密集した家々の間は通路となっていて、下は石畳になっている事が多いから、そこに土を入れる事は難しいが、二階三階にアーケードのようなモノを作り、そこに土を入れる事は可能だ。
簡易的にやるのなら、窓の部分から吊り下げる事も可能だ。
「問題は吊り下げた鉢や箱が落ちて人を傷つけないかだ、それだけは十分気をつけてくれ、それとそのための資材の収集だが、騎士団が王都の民を近隣の森まで護衛しておこなう」
騎士団に護衛された王都の民は、普段は入る事が許されない、王家の森で採集を許された事で、本当に厳しい状態なのだと思い知った。
「城門の前に、近隣の村人を収容し護るための馬出曲輪を設ける。
馬出曲輪とはこういうもので、敵が攻め込んできた時に、真直ぐに王都城門に攻め込めないようにしたモノだが、一番の目的は、今の王都では収容できなかった民を、この馬出曲輪に住めるようにして護る」
リカルド王太子は、国王以下重臣達を前に、絵図を広げて王都改造計画を提案していたが、全員が喰い入りように見ていた。
最初はリカルドの改革を不安視していた者達も、立体栽培のカボチャやジャガイモが芽を出し、茎葉がすくすくと育っているのを見て、裏切りと失恋のショックで狂ったのではないと安心していた。
「この馬出曲輪の一番いい所は、国民に王国が決して見捨てないと伝わる事です。
国民からの信頼が確保できれば、一致団結して戦う事ができます。
二番目にいい所は、無理矢理王都に難民を収容して、元々王都に住んでいた民と難民が争わずにすむ事です。
国民同士が争うことになれば、そこを魔王軍に突かれてしまいます。
三番目にいい所は、敵の攻撃を馬出曲輪に誘い、王都の防御力が各段に上昇させることができます。
特にこの部分は、敵の攻撃を王都の城壁と馬出曲輪の両方から迎撃できます」
この場にいる全員が真剣に聞いていた。
そして絵図と分かり易い説明の陰で。馬出曲輪の効果を実感していた。
騎士団と傭兵団と王都の民を総動員して、東西南北四つの城門前に、大型の馬出曲輪を築城することになった。
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