日刊幽霊新聞

 充電器いたずらの犯人、逮捕

 2020年4月13日、午後1時ごろ、埼玉県内のマンションの一室で、星田さん(当時21)の側頭部に充電器の差込口が発見される事件が発生した。当該事件は人間社会のオカルト新聞である『日刊怪異新聞』経由で、我々、『日刊幽霊新聞』に情報提供された。


 我々はただちに幽霊警察に通報し、本事件の調査を依頼した。幽霊警察の調べによって、埼玉県内で、同様の事件が4件、4月中に発生していた事実が判明した。犯行は、単純である。


 まず、犯人の何者かは埼玉県内の4人の一部に充電器の差込口をつくるように、4人に霊術をかけた。その影響で充電器の差込口ができた4人の人間は、充電器を差し込むことで、体力や気力の回復がおこなえる身体になった。


 これは霊術使用禁止法違反であり、真人(幽霊ではない人間のこと)に霊術を用いることは固く禁じられている。我々の霊術を用いると、人間の秩序社会が崩れる恐れがあるため、人間社会の長である内閣総理大臣との条約締結によって霊術使用禁止法が制定されていた。


 懸命な警察の調査にもかかわらず、5月を超えてからも、事件に動きはない。


 充電器の差込口を植えつけられた4人の人間については、幽霊国家の特定専門職である霊士ら4人がそれぞれ霊術を解いた。現在のところ、4人の身体には充電器の差込口は存在しない。星田さんも同様である。


 どの事件も埼玉県内で発生している事実から、犯人は埼玉県内に在住である可能性が高いと幽霊警察は睨んでいた。埼玉県の一部地域を中心に犯人を捜索中だった。


 手がかりとしては、ほかにもあった。身体に充電器をつくるように霊術をかけるのは、基礎的なレベルの霊術である。そのため、犯人は基礎的なレベルの霊術しか身に着けていないのでは、との可能性だ。


 幽霊警察の絞り込み作戦によって犯人が特定され、そして今日、10月6日、午後2時ごろ、埼玉県内の幽霊学校で寮生活を送る脇田佳奈美さん(14)を逮捕した。


 脇田さんは、犯行動機について「霊術をかけた相手は、かつての友人たちです。やる気が起こらないって、よく言っていたから、助けてあげようと思ったんです」と話した。どのような理由があれ、真人に霊術をかけることはあってはならない。

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