第73話 扉

 扉がある。

 その扉を開けてはいけないと言われていた。

 誰に言われたのか覚えていない。どうしていけないのか分からない。

 

 扉の前に立ちドアノブを掴み目を閉じる。

 黒のイメージが広がる。

 それがとても恐ろしくて、ドアノブから手を放す。

 目を開け、扉の前から立ち去る。


 その行為を何回繰り返したか覚えていない。時間がどれくらい経ったか分からない。


 扉の前に立ちドアノブを掴み目を閉じる。

 黒のイメージが広がる。

 それはとても恐ろしいが、目を閉じたまま扉を開ける。

 恐る恐る目を開けると、扉の内側は黒くなかった。

 扉の内側に入ってみるが、今までいた扉の外と何の変りもない。


 外に出ようとして、いつの間にか閉まっていた扉の前に立つ。

 ドアノブを掴むと、目を閉じていないのに黒が広がった。

 

 

 


 

 

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