第8話『病室の外が騒がしくなった』
まりあ戦記(神々の妄想)・008
『病室の外が騒がしくなった』
オーイ、起きろよ! 起きろったらマリア!
……あれ?
死んだら聞こえるはずなのに……マリアはコクピットの中で息絶えている。
だのに、ホトケさんである俺の声が聞こえていない。てか、なんで俺が息苦しいんだ?
変だなあ……不思議に思っていると、ゴトンと音がしてレスキューハッチが開かれた。
「まりあ!」
みなみ大尉が首を突っ込んでまりあの状況を確認する。
「仮死状態……男は来ないで! 良美、こっちへ!」
良美と呼ばれた二曹が女性の衛生兵二人を引き連れて駆けつける。
「あ、これは……」
コクピットのマリアは裸だった。
「コネクターでない衣服は衝撃に耐えられないんだ……ハッチの周りを毛布で囲んで……ヨッコラセっと!」
大尉が腋を抱えてコクピットから引き出し、良美曹長が両足を引き出す。部下の衛生兵が毛布でくるんで自走タンカに載せていく。
「あれ、なにか握ってる」
大尉がそっとまりあの手をほどくが、少し開いただけで、マリアの手はすぐに閉じてしまう。
「……これって過去帳じゃない?」
まりあは制服がビリビリに破れていく中、過去帳だけはしっかり握っているのだ。息苦しい原因がやっと分かった。
そうか、兄である俺との絆を大切にしたんだなあ……ホトケさんでありながら、俺はウルっとしてしまった。
「これ握っていたんですか? ぜんぜん覚えてません……というか、あたしヨミと戦ったんですか?」
病院のベッドで意識が戻ると、ベッド脇のみなみ大尉にトボケたことを言う。
「どこまで覚えてる?」
「ヨミの同期体が間もなく動き出す……お父さんが、そう言ったあたりまで……かな?」
「じゃ、無意識で戦っていたのね……」
「えと……あたし勝ったんですか?」
「みたいね、ヨミに体当たりかけたときはダメかと思った」
「体当たりかけたんですか?」
「たいへんな爆発がおこって……あれでヨミを倒すだけじゃなくて生還してくるんだもんね、まりあの潜在能力って想像以上なのかもしれないわ」
まりあは、安心したのか残念なのか分からない顔をした。
その時、病室の外が騒がしくなった。
「司令、困ります司令……」
看護婦の制止を振り切るというか、ものともせずに親父が入って来た。
「意識が戻ったようだな」
「はい、たった今」
「お父さん」
「司令、これからいろいろ検査がありますから!」
看護婦の額に青筋がたった。
「まりあは患者である前に特務師団の装備品なんだ。検査は軍がやる」
そういうと親父はまりあの掛け布団を捲り上げた。
キャ!
まりあは裸の胸を隠した。
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